278列車 白と黒
それは小学校4年生の時の話しだった。学習活動で、学校の外に調べものをするっていう話になっていた。クラスの中で5人一組ぐらいの班を作って、調べ学習を行った。学校ならそれの発表会っていうものがあって、それのまとめをしなければならない。ナガシィはその中でリーダーをやっていた。本人としては自分からやりたいって言ったわけじゃなくて、押し付けにあったからっていうのが正しい。やりたくないからね。
「はぁ、ちゃっちゃと仕上げないとな。」
っていうのは同じ班の霧島君。今は放課後。数は少ないけど、発表の資料作りが少しだけ遅れてしまっているはんがある。私たちがいるはんもそれと同じだった。
「よし、じゃあさぁミカン農家に行った時に気をつけてることとかあるって聞いたの。」
そうナガシィに聞いた。
「うん。こんな感じ。」
ナガシィはあんまり乗り気じゃないみたい。答え方はかなりぶっきらぼうだ。
霧島君はナガシィから受け取った紙に目を通す。
「チッ・・・。何これ。」
霧島君は舌打ちしてからそう言った。
「何って。調べたことだけど。」
「はっ・・・。これで調べたって言えるわけ。」
霧島君は班の他の人にもその紙をまわした。私のところにも回って来たけど、書いてあることは質問二つに対して、「特になし」の一言で終わっていた。この学活で言ったミカン畑っていうのはナガシィのお母さんの実家のところだ。お母さんの実家は学校から少し離れているけど、自転車でいける範囲にあるから、それで調べたのだ。私はナガシィがおばあちゃんに聞いているのを近くで見ていたから、その質問に特に出たようなことを言っていないのは知っていた。他の人は特にそういうものには興味がないって感じで、人ひとりにまかせっきりってさまだった。それなのにそういうこと・・・。
「おいおい。これだけってことはないでしょ。」
私はそういうこと言わないよ。それこそ言ったら、どうしようもなくなっちゃうから。それを言ったのは同じ班の扶桑さんだった。
「もうちょっとないわけ。」
とさらに続けた。
「おい。一人だけに押し付けすぎじゃないの。」
扶桑さんや霧島君に反論があった。それを言うのは私じゃない。金剛さんだ。
「永島君だって調べてくれたじゃん。それで調べ終わったらこれなわけ。だったらなんで自分で調べないのさ。」
「ミカン畑に行こうって言ったのはこいつが言い始めたことじゃん。」
金剛さんの反論に霧島君が言い返す。
「言いだしたのは永島君かもしれないけど、全員でミカン畑に入ったんだよ。何とかしてやらないとって思わないわけ。」
「何とかしてやらないのって・・・。これをどう何とかしろっていうのよ。言ってみなさいよ。智香。」
それに扶桑さんも加わる。
「金剛には何かあるの。」
霧島君が智香ちゃんに聞く。
「無いけど・・・。それを・・・。」
「無いんだったらいいじゃん。」
扶桑さんが口をはさんだ。
「こいつのことかまって言ってるんだか知らないけどさぁ、そういうやつにも何の考えもないんでしょ。だったらいいじゃん別に。発表しなきゃいいだけでしょ。」
「はっ。」
「俺も扶桑の言うとおりだと思うなぁ。」
霧島君も加わる。
「お前らなぁ・・・。」
「もういいから、智香ちゃん。それに、霧島君も扶桑さんももうやめてよ。」
そういうのが私には精いっぱい。
「分かったよ。返して。」
「えっ。」
私と智香はそう言ったナガシィにあっけにとられた。
「帰るね。」
「えっ。ちょ・・・ちょっと帰るって。」
「要らないんでしょ。だったら、居ても意味ないじゃん。」
「待って。」
智香ちゃんは帰ろうとするナガシィを止めようとする。
「ほっとけ。」
霧島君は別に止めようとしない。
「帰りたいって言ってるんだから、帰らせればいいじゃん。」
「元はと言えば、あんたらのせいでしょ。」
「どうでもいいんなら、もういいじゃん。発表までどうせまとまりそうにないし、ほっとこ。」
「ねぇ、金剛。あいつのことはもういいから、こっちのこと手伝って。」
扶桑さんのそれに智香ちゃんももう我慢ができなくなったみたいだった。
「分かったわ。私も帰る。行こう。萌ちゃん。」
「えっ。」
私は智香ちゃんに手を引っ張られて、少々強引に椅子から立たされた。
「おい。金剛。」
「そっちが勝手にするんでしょ。こっちだって勝手にするから。」
智香ちゃんに引っ張られたので、手っ取り早く荷物をまとめて、教室を出た。
教室を出てから、智香ちゃんは、
「さっきから萌ちゃん何も言わないけどさぁ、萌ちゃんはどうにかしたいって思わないわけ。」
「思ってないわけじゃないよ。」
「霧島と扶桑は発表させないつもりだろうけど、私たちだけでも、ミカン畑はやっちゃおう。」
「うん。あっ。それと、ありがとね。」
「気にするな。」
教室から出てきてから、階段の近くまで歩いてくる。ここから一番下まで降りると昇降口がある。
「あっ。永島君って本当に帰ったの。」
と聞いてきた。
「うーん。一回保健室に寄ってみるね。」
「保健室・・・。」
その頃、
「もう。ケガしてないんなら、保健室こないでくれるかなぁ。」
雪姉ちゃんはすごく迷惑そうな言い方をした。
「じゃ、帰る。」
「いいよ。帰らなくても。私もちょっと暇してた・・・ウソ。ちょっと寂しかったから。ちょっとだけならいていいよ。」
そう言ってから、南向きに置かれているソファーの前に来た。ソファーの位置から外を見ると前には屋外プールがある。夏になったらそこで水泳部が練習している。
「で、今日はどうしたの。」
「・・・。」
僕は雪姉ちゃんに今まであったことを話した。
「うーん。そっか。それでいろいろ言われちゃったんだね。」
「うん。」
「・・・どうしようか・・・。せっかく聞いてきたのに、そういうこと言われちゃうとね。」
「・・・。」
「私はおばさんの実家に行ったことないからミカンのこととかよく分かんないけど、ミカンの作り方とかていう感じにしてみたらどうかなぁ。」
「作り方。」
「作り方だったらおばさんがよく知らないかなぁ。」
「・・・。」
私たちはその頃保健室の前に来ていた。
「ミカンってどういうふうに作るんだろう。」
保健室の中からそういう声が聞こえた。私たちは覗き込むようにして、保健室の中を見た。それに雪お姉さんが気付く。
「あら。萌ちゃんに金剛ちゃん。どうしたの。」
「えっ。」
「ナガシィ。」
「永島君。」
「何。」
ナガシィは迷惑そうに答えた。
「僕のは・・・。」
「いるのよ。二人とも、智ちゃんに発表してほしいからここに来たんじゃないの。」
私たちが言おうとしていることを雪お姉ちゃんがかわりに言う。
「ねっ。永島君、私たちも協力するから。なんか調べよう。」
「・・・。」
「あの。さっきはなんて言ってたんですか。」
智香ちゃんはそのことを雪お姉ちゃんに聞いた。
「ああ。作り方のこと。」
「作り方。」
「うん。」
「えっ。永島先生はそのこと知ってるんですか。ミカンの作り方とか。」
「知ってるって言いたいけど、私は知らないなぁ。智ちゃんのお母さんならそういうこと詳しいと思うよ。」
「へぇ・・・。和お母さんそういうこと知ってるんだ。ねっ、聞きに行こうナガシィ。まだ発表は先なんだし。その間に私たちだけで発表できるやつ作っちゃおう。」
「ねぇ、永島君。永島君が調べてきたあの紙どこに。」
「ああ・・・。あれ・・・捨てちゃったけど。」
「す・・・捨てた。」
私と智香ちゃんの声が揃う。
「だって、もういらないと思ったんだもん。」
それからはいろいろと大変だった。どこで捨てたのかっていう話になったけど、結局、もう違うこと発表するっていうことになったから、その紙はいらないでしょってなって。その結論に達するのが遅かったから、その時は全員苦笑いするしかなかったし・・・。
学校からナガシィの家に行って、和お母さんにミカンの作り方を聞いた。そこからは自分たちが知らないことをいろいろ知ることができたから、それがこの学活で知ったことになった。発表はそのことをやったおかげで、何とか乗り切ることができた。
「どうだった。」
「うん。出来たよ。」
「そう。よかったね。」
雪お姉ちゃんはそう言いながら、ナガシィの頭をなでた。
「ねぇ、頑張ったら全部うまくできたよ。」
「うん。よかった、よかった。」
それから数日後。先生から前の学活の時のレポートが返却された。それをもらった帰り道、
「扶桑さんがさぁ、学活の調べ学習たのしかったって。」
ナガシィはふとそう言った。
「よく、言うよね。そう思ってないだろうに・・・。それに、霧島もいろいろとウザかった。文句言うために班員になったのかなぁ・・・。」
「・・・。」
それがナガシィのリーダー嫌いの一番の理由になった。
登場人物
霧島遼平 誕生日1993年4月19日 血液型B型 身長138cm(当時)
扶桑未子 誕生日1993年11月8日 血液型O型 身長140cm(当時)
霧島遼平
由来は帝国海軍の金剛型高速戦艦4番艦霧島。
扶桑未子
由来は帝国海軍の扶桑型戦艦1番艦扶桑。
今回はどちらも軍艦から取っちゃいました。大和以外の戦艦を知る機会です。




