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MAIN TRAFFIC2  作者: 浜北の「ひかり」
Distress Episode
93/108

277列車 までと先

 (もえ)は出席率の訂正をしないっていうことを聞いたら、すぐに就職指導室から出て行こうとした。

「あっ。ナガシィ。ちょっとパソコン貸して。」

何か気付いたことがあったようで、(もえ)はそう言って、僕の左側からキーボードに手を置いた。ちょうど(もえ)の胸が肩のあたりにきた。

「ここ。どうかなぁ。」

と行って、(もえ)は一つの会社を検索した。会社名はジェイアール千葉鉄道サービスとあった。

「どういう会社。」

「東日本の千葉県のあたりを走ってる車両の整備とかやってるんだって。今回は構内運転士を募集してるから、やりたいことできるかなぁって。いいでしょ。」

「・・・。」

「私は受ける気でいるけどなぁ・・・。ただ、西日本の時みたいに適性検査を受けないといけないから、それに受かってから説明会とか、試験とかがあるんだって。」

「ふぅん・・・。」

「どう。」

「まぁ、考えとくよ。」

「受けろよ。」

(もえ)はそう言ってから「パソコン、ありがとう」と言ってから、部屋を後にした。

「しかし・・・。どうするかなぁ・・・。」

鉄道会社はどうするかっていうのは決まったとしても他はどうする。一般企業っていうのを今まで考えたことがないのは何回も言っていること。何に適性があるっていうのは分からない。だから、探すのに困るんだよなぁ・・・。

 月曜日の中で、自分に適性があるかもしれないっていうあくまでその傾向の人がつく人の比率で高いもの「その他サービス」っていう中にある飲食店の従業員募集、東京で鉄道の建設事業を見張っている警備員募集。他にもそういう関連で5つは見つけた。でも、それだけでは少ない気がした。

(これじゃあ、もってけないかなぁ・・・。)

と心の中でつぶやく。

 結局月曜日に持っていくことはなかった。そのまま家に帰るようにしかならかった。どこかで怖がっていることは明らかなのは自分でもはっきりしていた。

 その後、何日か就職指導室のパソコンを開いては、適性があるかもしれない企業を探し続けたが、進展はほとんどなかった。そのまま金曜日が過ぎて、翌週の月曜日となった。なお、出席訂正に掛けられるのは出席率の書いてある紙をもらってから一週間。つまり、期限は先週の金曜日まで。これで本当に皆勤賞が僕の中ではなくなったことになる。まぁ、なんかのハンデって思っているからいいか。鉄道会社に受かるとそれはそれで、悔しい気があるけどね。

 月曜日の3限目と4限目は1回で先生の授業だ。と言っても、授業らしい授業じゃない。内定者からしてみれば、ただの暇な時間が流れるだけである。しかし、内定が出ていないからと言っても特別なことはしなかった。その代わりに就職活動の進捗状況を一人一人聞いていった。

今治(いまばり)君。」

今治(いまばり)もまだまだ就活中かぁ。今就活をしているのは(もえ)今治(いまばり)、木ノ(きのもと)犀潟(さいがた)千葉(ちば)平百合(ひらゆり)、僕の7人。これ全員が終わればコンプリートになる。

「そう。」

今まで今治(いまばり)の就職活動の状況は聞かないようにしていたけど、先生のその一言で、全身が凍りつく気がした。吐き捨てるかに言われたその一言は怒りが蓄積しているっていうことが明らかだった。

「次、犀潟(さいがた)君。」

「・・・。」

犀潟(さいがた)のこともあんまり聞かないでおこう。そうだ。そもそも他人の就活は関係なかったんじゃないか。人の就活の進捗状況を自分が知ったところで、自分の利益にも損失にもならない。それでいいじゃないか。

「次、永島(ながしま)君。」

(えっ・・・。そこ飛ぶ・・・。)

僕の間にまだ何人もいるけど・・・。いや、呼ばれたんだ。覚悟決めていこう。怒られることは百も承知で・・・。体中が恐怖に包まれた。

 先生の隣に行くと、立っているのがつらいほど足がガクガクふるえた。

永島(ながしま)君、今現在の就活の状況は。」

怒りが蓄積している声だ。今ここで「やってません」とか言ったら、爆発どころじゃ収まりきらないくらいまずい状況になってる・・・。でも、先週の月曜日よりはましなはずだ。「少ない」と言われても仕方のない状況だけど・・・。僕は今までしてきたことを先生に話した。その間もガクガクと足はふるえたままである。小刻みの震えが止まらない、止まらない、止まらない・・・。

「へぇ、よく見つけたねぇ。」

先生が一言そう言った。

(へっ・・・。)

一瞬心の重みが取れた気がした。でも、足はふるえている。小刻みに震えている。

「あっ、マイナビに登録するときに、適性検査をやったじゃないですか。」

「ああ。やったねぇ。」

先生はそんなこともあったなぁって言う感じに言う。

「それで、どういう業種に適性あるかっていうパーセンテージの高いところから、自分の興味あるところを選んできただけで・・・。」

この言葉を言うだけでもかなり必死である。

「ふぅん。なるほど。てことはいま抱えているのは5社ですか。」

「はい・・・。」

「頑張ってください。もういいです。」

ほっ・・・。肩の重荷が取れた。そういうことがあったのが3限目。4限目は出席扱いになるような手続きだけして終了。それ以降はお昼休みになった。

「はぁ・・・。」

「お疲れ。」

(もえ)が声を掛けてきた。

「必死だったね。」

「そりゃぁ・・・。」

声だけはかなり疲れ切った。

「でも、お前すごいなぁ。」

草津(くさつ)が話しかけてきた。

「えっ。」

「だって、怒りたまりまくってる難波(なんば)先生にかなりいうことで来てたじゃん。怖くて無理だって。」

「怖いどころじゃなかったよ。」

と言った時、突然ドアが開いた。ドキッとした。入って来たのは難波(なんば)さんだった。

高槻(たかつき)君。」

「はい。」

先生に呼ばれて、高槻(たかつき)が返事をする。

「日綜警から内定通知が来ました。」

(えっ・・・。)

「あっ。そうですか。」

「もっともっと、喜びなさいよ。」

「えっ。でも、どうやって喜んでいいか。」

そのやり取りを一番理解できないのは僕だった。羽犬塚が空港の警備会社に就職したことは知っていた。そして、それがもともと航空関連の仕事に行きたかったからっていうことも聞いていた。でも、高槻(たかつき)がそう言う警備会社・・・なのかな。そういうところに就職したっていうことは聞いていない。

「日綜警っていう警備会社。」

(もえ)が言う。

「夏休み中にそこの会社の試験があってね。聞いてると思うけど、高槻(たかつき)君はそこを推薦で受けたんだって。」

「ふぅん。」

(まぁ、関係ないか・・・。)

夏休みの間にいろいろあったんだ・・・。まぁ、知らなくても損はないし、過ぎたことだから、利益もないか。でも、推薦っていうことは高槻(たかつき)は鉄道会社をあきらめたってことか・・・。本当にそういうことができるんだなぁ・・・。そこはある意味感心する。

 翌週。就活を再開して、いろいろと先生に報告しなきゃいけないこととかが増えてきて、教務室に行くことが多くなった。でも、どこかで先生のことを恐れているのは変わらずで、恐る恐る教務室の中を覗き込むように見るのが習慣になってしまっている。今日もそういうことのために教務室にきた。本当にしたいのはJR西日本の契約社員の履歴書を見せること。あの志望動機が例の中で2行しかないっていうある意味伝説のところだ。覗き込むように中を確認すると、中でパソコンをしているのが見えた。僕は一度カバンに戻って、それを出そうとした。

「覗いたんだったら、挨拶したらどう。」

と声がした。そうだろうな。こっちが気付いたんだから、あっちも気付くか。出すのをやめて教務室の前に立つ。まずは挨拶をした。

「そういうところやめたら。永島(ながしま)君ってそういうところがダメだから。その悪いところっていうのは面接で見られるよ。」

先生はキツイ調子で続けた。でも、それは正しいことだ。今までの面接もそれで落ちているものもあるかもしれない。こっちは注意しているつもりだけど・・・。

「はい。」

「ところで、どうしたの。」

先生はそう言って、その話題を変えた。そこから、こっちがしたいと思う本題に入った。

 それを見せてから、OKをもらった。

「あっ。永島(ながしま)君。ちょっと待って。」

「はい。」

「あの、日綜警って永島(ながしま)君受ける。」

「ああ。日綜警って高槻(たかつき)君が内定もらったところですか。」

「うん。今まで鉄道会社一筋でやって来たから、どういうことやってるとかは知らないと思うんだけど、日綜警って警備の仕事で、その中で新幹線の沿線警備っていうのがあるんだよ。高槻(たかつき)君はその沿線警備で働きたいってことで、今回の推薦を取ったんだけどね。で、今回も募集をかけていてね。でも、今回は新幹線の沿線警備の仕事では募集してないんだよ。でも、推薦で受けた高槻(たかつき)君もその可能性があるってだけだから、本当に沿線警備の部署に配属になるとは限らないんだけど。」

さらに続ける。

「でも、今回は推薦ってことじゃないからもし、鉄道会社とか今受けてるジェイアール千葉鉄道サービスとかに受かったら、日綜警を断って、そっちに行くってこともできるよ。それに内定通知をもらってから、本当にそっちで働きますっていうのを12月の20日ぐらいまで待ってくれるんだよ。だから、どうかなぁとおもって。」

僕は日綜警を受けることにした。先生はこの後に「保険があると無いとじゃ違う」って言った。確かにそうだろう。それにあくまで日綜系は「保険」。本気で行くっていう気はしていない。

 そういうことが住んだら、普段授業前にみんなで集合するところに行った。そこにいるのは今は千葉(ちば)だけである。(もえ)もいたけど、帰・・・いや、カバンだけ置いてあった。

 腰かけて、しばらくすると目に涙があふれてきた。

「どうした。永島(ながしま)。」

(えっ・・・。)

「涙出てるけど、どうかしたの。先生に何か言われた。」

「・・・ううん。別に。」

「そう。ならいいけどさぁ。」

千葉(ちば)はそう言って、今やっている履歴書を続けた。

「あのさぁ、永島(ながしま)。お前夏休みの間学校こなかったじゃん。心配だったからさぁ、お前のところに行こうって考えてたんだよ。」

「・・・。まぁ、来たとしても心配させまいと明るくふるまったかもね。」

とそうなるかもしれないっていうことを言った。

「こっちも心配してたからさぁ。」

そのあとのことはよく覚えていない。ただ、声を絞り出すようにして千葉(ちば)に話した。夏休みのこととかそういうことを・・・。

 それを聞いていたのは千葉(ちば)以外にもう一人。

(頑張れば全部うまくいくかぁ・・・。久しぶりに聞いたなぁ・・・。)


ようやく回想の話になるか。

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