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MAIN TRAFFIC2  作者: 浜北の「ひかり」
Distress Episode
81/108

265列車 期待と嘲笑

 僕は部屋の中でゆっくりしていた。最近は学校に早くいくってことが今はほとんどない状態になっていった。

「・・・。」

なんか・・・。時間をふと見るとあと5分で9時をまわろうとしている。学校が始まるのは9時20分。

(ハァ・・・。そろそろ行くかぁ・・・。)

体を起こして、起き上がり、スーツを身にまとった。

(まだこれに腕通さなきゃいけないのかぁ・・・。)

まだっていうのがなぁ・・・。5月だからまだ決まらない人が世間には多いわけだけど・・・。なんかなぁ・・・。

「おはよう。」

部屋から出ると、(もえ)がすぐに話しかけてきた。(もえ)ももちろんスーツ姿なのだが。今日からスーツじゃない人間が一人だけいる・・・。

「おはよう。」

とだけ答えた。

「目据わってる。」

「えっ。」

「うん。」

「そうかなぁ・・・。」

「まぁ、いろいろあるんだねぇ。行こうか。」

(もう、本当にいつなってもおかしくないかぁ・・・。)

 学校に着いたらすでに羽犬塚(はいぬづか)百済(くだら)千葉(ちば)がいた。

「あっ。永島(ながしま)君、坂口(さかぐち)さんおはよう。」

まず、千葉(ちば)がそう言った。その千葉(ちば)に続いて、百済(くだら)がおはようと続けた。

「ああ。」

「おはよう。」

僕は冷たく答えて、(もえ)がそのあとに続けた。

「ねぇ。二人ともどうだった。西日本の試験。」

羽犬塚(はいぬづか)が聞いた。そう言えば、昨日は授業が始まるギリギリに来て、すぐに帰ったから、そういうことを他人と話す余裕なんてなかったからだ。

「ああ。落ちた。」

「ダメだった。」

「そうかぁ。あれって受かったやついるのかなぁ。」

羽犬塚(はいぬづか)はそう言った。ああ。受かっているやつがいないほうがこっちとしても・・・。

 ふとナガシィのことを見ると、据わった目が今度は恐怖を感じるような目になっている。これもう再発どころじゃない。それ以上に進行してるかも・・・。

「おい。」

わき腹がくすぐったくて、ちょっと抑えた。

「ちょっ・・・。何。」

「なんでもない。」

「なんでもないんなら、やめてよ。」

何なんだよ。いきなり。そういうことしてくるっていうのは何か意味がある。それは僕でもわかる。でも、その意味は・・・何・・・。

 そのあとは実習室の中に入って、みんなが集まるのを待った。あと10分ぐらいで授業が始まるというのにまだ、ほとんど集まってきていない。

草津(くさつ)おはよう。」

千葉(ちば)のその声が響いた。その声で僕も草津(くさつ)のほうを見た。今までスーツで来ていた曜日に私服で現れた。もちろん、それの理由は分かる。だが・・・。

「ナガシィ・・・。」

(もえ)は目の前に割り込んできた。

「うわっ。」

「どうしたの。」

「どうもしないよ。」

「・・・そう。」

「ラブラブだねぇ・・・。」

留萌(るもい)の声が聞こえた。

「あっ、さくらちゃんおはよう。」

「朝からそんなにイチャイチャするなって。もう。うらやましい限りだぞ。」

「別に、イチャイチャしてるわけじゃないって。」

(もえ)がそうやって反論した。その反論は今までとちょっとだけ違って、少しだけ強い調子だった。留萌(るもい)がカバンを置いて、また教室から出ようとした。(もえ)はそれについて、部屋から出ていった。

(どういうつもりなんだろうなぁ・・・。)

「まぁ、女子とあんなに近いところで会話してたらね。イチャイチャしてるようにしか見えないってな。」

羽犬塚(はいぬづか)がそう言った。

「そうかなぁ。」

「あの距離に疑問を持たない永島(ながしま)のほうがすごいよ。」

草津(くさつ)が続ける。

「普段からあれだったから、なんか感じたことなんてあんまりないけどねぇ。」

とは言った。

「えっ・・・。イチャイチャじゃない。」

トイレで用を足してから、私はさっきのことを留萌(るもい)に切り出した。

「うん。」

「イチャイチャじゃなきゃなんなの。あんなに永島(ながしま)の顔に密着しそうな位顔近づけて。彼氏いない私たちに喧嘩でも売ってるとしか思えないって。」

「あれは、ナガシィの視界に草津(くさつ)を入れないようにしていたというか。」

「なんで(もえ)がそんなことすんの。あからさまに草津(くさつ)君を避けさせようとして。」

「ダメなの。今、草津(くさつ)と合わせたら。ナガシィは東海落ちたこと今でも引きずってるから。それで草津(くさつ)君が内定取ったから、余計にそれが拍車掛けてるの。」

「ああ。言われてみれば、このごろ永島(ながしま)の顔、目が据わっててすごいことになってるなぁ・・・。」

「でしょ。あれ、まただよ。」

「またって・・・。あっ。あの時。」

「えっ。それだけで通じる。」

「まぁ、詳しいことは知らないけど、大筋は榛名(はるな)から聞いてたからなぁ。(もえ)ちゃんが心配してるのって、あれでしょ。人が変わるようになる。」

「うん。でも、今回は分かんないんだよね。みんなの前じゃあ、普段みたいに振舞おうとしてるけどさぁ、私と一緒の時とか、一人の時とかに露骨に出てるんだよ。」

「なんで(もえ)ちゃんと一緒の時にそれが。」

「私なら、どういう顔してても、かまってやれるし、どうすればいいか知ってるからじゃないかなぁ。」

「・・・。で、それの対策っていうのが草津(くさつ)を視界にいれないってことなのか。」

「う・・・うん。」

草津(くさつ)が内定取ったのはいいことでしょ。」

「自分にいいことしか、今受け入れるつもりないの。」

と言ってから、

「大体、ここまで就活が長引いてるのが自分の中で予想外っていうか。」

「おいおい。あいつにはどういう自信があるんだ。」

「自信なんてないのにね。」

「おかしくないか。それ。」

「おかしいけどさぁ・・・。」

「自分にいいことだけかぁ・・・。まぁ、私も北大阪急行(きたきゅう)受かってくれなかったら、どうしたらいいのか分かんないけどさぁ・・・。でも、みんなに内定取るなっていうのは、それこそ無理な話だよね。だったら、永島(ながしま)が早く内定を取っちゃえばいいだけの話じゃない。」

「それができたら、誰も苦労しないって。」

「アハハ。それもそうか。」

私は留萌(るもい)に顔を近づけ、

「なっ。何。私の顔に何かついてる。」

「あんまり笑い話でとらないほうがいいよ。そうならない可能性っていうのは少なくともあるんだから。なったら、今度はどうなるか分かんない。私にもどうしたらいいか分かんなくなるかもしれないんだから。」

「じゃあ今、(もえ)にできることって少なくない。」

「うん。」

「あのさぁ、永島(ながしま)に言ってやれば。決まった人のことどうこう言ったってしょうがないでしょってさぁ。」

「それは分かってると思う。」

「分かってる。」

「分かってるけど、どうしていいのか自分でも分かってないんだよ。」

「じゃあ、どうすんのさ。」

「今は本当にしてやれることができないなんてね・・・。」

その時学校内のチャイムが鳴った。時計を見てみると9時20分になっている。いまから始まる授業は社会。先生が時間通りに来るってことはないから、急いで実習室に戻った。

 今日は7限まで授業がある。4限には7月7日に開催するっていうキッズスクールみたいなのもやるという。今日は近くの小学校にアンケート調査に行くっていうので、それに子供が食いつきやすいような説明をやるっていうのだがやる理由があるんだか・・・。まぁ、もちろん、そういうふうな感じで作れば問題はない。

 それが終わったらお昼と食べて、お昼の次はコミュニケーションの授業と面接対策の授業となる。そのコミュニケーションの授業が始まる直前、難波(なんば)さんが部屋に入って来た。

北大阪急行(きたきゅう)受けた人聞いてください。」

の声でメモできるようにした。

「えー、1次試験の結果が来ました。いまから名前呼ぶ人。5月20日に面接があります。今治(いまばり)君、犀潟(さいがた)君、坂口(さかぐち)さん、高槻(たかつき)君、平百合(ひらゆり)君、永島(ながしま)君、栗東(りっとう)君、留萌(るもい)さんです。時間は今治(いまばり)君、犀潟(さいがた)君、永島(ながしま)君、平百合(ひらゆり)君が9時30分から。坂口(さかぐち)さん、高槻(たかつき)君、栗東(りっとう)君、留萌(るもい)さんが10時30分からです。はい、以上です。試験受かった人頑張ってきてください。」

と言って部屋から出ていった。

北大阪急行(きたきゅう)かぁ・・・。)

と考えていると、難波(なんば)さんをほぼ入れ替わりで担当の先生が入って来た。1時間その授業を受けてから、残りの1時間は面接の練習となる。

(いつまでこっちでいなきゃいけないんだか・・・。)

と練習が始まるとその眼で見ていた。

(いつまで・・・。いつまでだよ。いい加減にしろよな。自分・・・。)

 翌日。この日は11時20分からの授業となる。日により始まる時間がまちまちなのだ。始まる時間まで家で待っていると電話があった。080から始まる見たことのない番号だった。

「はい。もしもし、永島(ながしま)です。」

「あっ。永島(ながしま)智暉(ともき)さんですか。私、東海交通事業(とうかいこうつうじぎょう)人事課の中村(なかむら)と申します。」

という声が聞こえた。東海交通事業(とうかいこうつうじぎょう)からは試験に受かった人だけに、電話がかかってくる。電話がかかってきたということは天地がひっくり返らない限り、自分は次の試験に進むことができるわけだが、もしかしたら、自分の中で都合がいいところだけ聞いているかもしれない。すぐにメモも取れるようにした。

永島(ながしま)さんから、とても熱心さが伝わってきたのでね。それで、次の試験の日程なんですけれども、5月の28日。5時からです。」

「5月28日の17時からですか。」

「はい。そうです。詳しいことはまたマイナビのほうにメールでお知らせしますので。」

という声が聞こえた。

(聞き間違いじゃないよね。)

高ぶる気持ちの中そういうことを考えた。

 そのあと人事の人からは、具体的に将来入社したときのこととかを聞かれた。それ以外に動いたことは今週にはなかった。

(よし・・・。ここだ。ここで決める。)


 萌ちゃんの心配は大丈夫でしょうかねぇ?

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