2 治療
この世界の医師になるには医師の元で一年間修行した成人した者がなるものだ。10歳のマリエールにはまだ医師になる資格がない。
2 治療
マリエールは治療はしない。たとえ治療魔法が使えても資格のないマリエールが医療行為をする事は許されていない。一応この世界にもルールがあり医師になれるのは医師の元で修行を積んだ成人だ。ちなみに薬師にはルールはない。だからマリエールが薬局をやっても問題ない。まして料金を取らない薬局だ。税金を支配う義務がない。
治療の機会が突然やっきた。かなり深い傷だ。親はマリエールに治療魔法の才がある事を知っているようでここに駆け込んできたらしい。追い返す事も出来るかも知れないが来られてしまったものは見放せない。
「判りました。治療します。」
先ずは傷口を洗い、アルコール消毒をした。消毒薬と治療薬で処置をして傷口を縫った。5針だ。その後治療魔法をかけて治療が終わった。マリエールは、
「一週間経ったら抜糸しますので、また来て下さい。それから私は医者ではないので治療はしませんので今後は治療で訪ねて来ないでください。」
多分言っても無駄なのだろう。お礼を言われ、後で魚の干物がどっさり届いた。
夕食の時両親に怪我の治療の事を話した。前回のように怒られる事はなかった。ただ、
「目の前に怪我人がいて助けられるのに助けるなと言う事は出来ないだろう。お前が治療魔法の持ち主なのは知っている者がいるからな。料金を取らず、積極的に治療行為をしないなら、偶々見かけた人の怪我を治療する分には医師でないから出来ませんと言い張る事もあるまい。ただやるにしても医師でない事ははっきりと言っておく必要があるだろう。」
父に消極的な合意を得た。
その日からしばしば怪我人が治療に訪れるようになった。マリエールは医師ではないですと断ってから治療するようになった。
マリエールは転生者である。女医をしていた。内科医師だ。治療薬もワクチンもない原因不明の新型ウイルスに感染して30年余で人生を閉じた。思ったのがもっと沢山の人を救いたかったという事だ。転生したのが9歳の女子だったが医療に関わる家庭で医療に関わるのに有利な魔法があって幸運な事に医学薬学書が読める環境にあった事だ。早速複製魔法で大きな薬局と父の病院で薬を複製して薬局を開いた。今迄知らなかった薬草や魔獣からどんな薬が出来るか知った。意外と様々な治療に有効だ。しかし、まだまだ医療面での遅れはある。先ず抗生物質だ。青カビから作ればいいのだろうか。この世界は異世界だ。魔法と剣の世界だ。前世の常識は通用しない。何が何に有効か判然としない。薬として有効な魔獣が前世にはいなかった。マリエールは魔法が得意らしい。攻撃魔法も防御魔法もある程度出来るようだ。この世界では10歳から冒険者になれる。近々冒険者ギルドに行ってみよう。前世の記憶を辿ってこの世界にない薬も作ってみよう。この世界の全ての人を癒す魔術師になりたい。
この世界の冒険者ギルドは一年中午前8時から午後6時まで開いている。薬局は特に営業日とか営業時間を決めているわけではない。勝手に平日の午後1時から4時まで玄関の近くの部屋で一般的な薬を並べ医学薬学書を読んでいるだけだ。
いきなり大怪我をした子どもがやって来た。医師でないマリエールには断る事も出来たかも知れない。しかし怪我人を放り出す事も出来ず治療した。




