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夕飯を食べた後に、マシュマロを焼いている間にクラビスが私のリボンをしげしげと眺める。
「へー、これは良いものだ。火の力を増幅するだけじゃなくて、自分の魔力を使わずに他の属性の魔法を使う事ができる」
私は目をぱちくりさせた。
「それって、私でも雷や風の魔法が使えるって事ですか?」
「そういう事だね。他の人間にとってみれば、無用なものだけど、スカーレットちゃんには何より必要な装飾品だ。全く、よく考えてるな」
「クラビスさん。実は遺跡で神様を見ました」
「神様か! すごいね」
「ググって名乗ってるリザーマンの女の子で、どうやらこの装飾品を用意させた子みたいです」
「本当に!?」
クラビスさんが身を乗り出して来る。
「は、はい!」
「わぁ、是非会って話がしたいなぁ! 僕の前にも出て来てくれないかな」
「ど、どうでしょうか」
意外と呼んだら来てくれそうな気もする。
「ググさーん、少しお話しできませんか?」
私は大きな声を出してみる。呼んだ後に部屋はシーンと静まっている。
『なんだ』
突然火の向こうに、ググさんが立っていた。
「あぁ、君がググ君なんだね! 是非、話をしてくれないか!」
『話だと。妾は忙しいんだ、そんな暇は無い』
「まぁまぁそう言わずに、焼きマシュマロでもどうぞ」
こんがり焼けてトロケたマリュマロをクラビスが差し出す。
『む』
彼女は警戒しながら串をじっと眺めて、息を吸う。
『うむ……甘やかで……美味なり……』
マシュマロは無くなってはいない。神仏は『気』を食べると聞いた事がある。
『少しなら話を聞いてやらん事も無いぞ』
彼女が座る。
「ありがとう。それじゃあ、質問です。僕の見立てでは、君達は五千年前には滅んでいたと思うのだけど、間違いないかい」
『いかにも、我らの一族は約五千年前に滅んだ。まぁ細々と生きているもの達もいたがな、国としては完全に無くなった』
それだけの天災の中を生き残った人達がいたのか。
「君はどうしてこの遺跡に残っているんだい」
『こやつのような奴の、案内人をする為だ』
「僕の時は出て来てくれなかったように思うけど?」
『そなたは全てをそつ無くこなしておったではないか。まさか、六の試練を一日で踏破して行く者がいるとは思わなかったぞ』
「なかなか楽しかったよ」
一日かかって、ようやく一つ目が終わった私は小さくなった。
「この遺跡を見る限り、君達の文明はとても高度なものだったんだね」
『それはそうであろう。妾達はとても優秀であったからな。争いも全くおきなかった。なにしろ全ての富を分け合って生きる事を妾達は最上だと思っておった』
「やっぱり。君らの一族には貴族や王族がいなかったんだね」
『うむ。国を動かして行く人間はいたが、そのもの達も含めて平等に富が分けられていた。それこそもっとも、幸を得られる道だと妾達は信じていた』
とても平和な国だったようだ。
「一つ聞きたいんだけど。君ら、飛行船の開発に成功していたね?」
彼女が目線をあげて、にやりと笑う。
『もちろんだ。お主らは難儀しているようだが、妾達には簡単なものだったぞ』
「そのようだね。遺跡だけでなく、コノートの大陸全体から飛行船とおぼしきものが出土している。しかし、どの船も僕らには分析が出来なかった。何故、君達が飛ばせられたかわからなかったんだ」
『ふふ。まだお主達には早すぎるのであろう』
彼女は機嫌が良さそうだ。
『それにな。おそらく、もうこの世では我らの船を飛ばす事は不可能だ』
「魔力濃度の違いかい」
『そうだ。むせかえるように魔力の濃い土地で出来た魔石を使い、更に魔力の濃い土地で搬出の土台を作って飛ばしていた。今はそのどちらも失われておる。あれ程、巨大な船を飛ばす原動力になる魔石を自然の中から発掘する事は不可能だろう』
「やはり燃料か。それから、飛ばす場所……ありがとう、今後の研究に使わせて貰うよ」
『では、妾は帰るぞ』
そう言って、彼女は立ち上がる。
『また呼ぶ時はマシュマロを用意しておけ』
そう言って彼女は消えた。
「マシュマロって良いものだね」
「そうですね」
けれど、いくら神様だと言っても、遺跡に何千年も一人でいるのは寂しく無いのだろうか。
つづく




