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学校帰りに私は例の喫茶店に再び来ていた。
「よう嬢ちゃん。今日は一人か?」
すっかり常連客と化した私は、眼帯を付けたマスターにホットココアを一つ頼んだ。
「うん、一人」
みんなを心配させるので、寮にいると落ち込んだ顔がしづらいのだ。
「まぁ、生きてりゃいろいろあるからな。たまには一人になって息抜きも必要だ」
マスターがココアとクッキーを私の前に置く。
「クッキーはおまけだ」
「ありがとうマスター」
「最近、お客さんは増えた?」
「学生の客は増えないが、夜の客が増えたな」
「へー、良かったじゃん」
「学校でビラでも配ろうか?」
「なぁ、それなら学校でバイトを一人募集してくれないか」
「バイト?」
「夜に二、三時間入れる奴が欲しい。報酬は他の相場より良いぞ」
マスターが指を五本あげる。確かに報酬は良い。
「うーん。誰かに声かけてみるよ」
「おう、頼んだ」
休みに来たはずなのだが、頼まれ事されてしまった。まぁ、しかし落ち込んでばかりもいられない。身体を動かしながら、日々生きていこう。
寮に帰ってから、ギネに声をかけた。彼女は夜に実入りの良いアルバイトを探していた。
「まぁ、そんなに出してくれるの?」
ギネはすぐに飛びついた。
「是非行くわ!」
私はお店の場所の地図を書いてギネに渡した。
「夜はお酒も出るそうだから、危ないようなら断って良いからね」
「大丈夫よ。私は、お酒の入った大人の扱いがうまいの」
ギネは笑顔でそう言った。故郷でもいろんな仕事していたらしいけど、彼女の仕事の経験値はすごそうだ。
一週間後、紹介した責任の元に、私は店を訪ねた。予想外にも、昼に来た時とさほど雰囲気は変わらなかった。テーブルは殆ど埋まっていたが、さほど騒がしくない。いかつい顔のおじさん達が酒を飲んで話しをしたり、カードゲームをしていた。しかし酒を飲まずにコーヒーを飲みながら本を読んでいる人もいるので、喫茶店と酒場が微妙なラインで混ざり合っている場所だった。
「いらっしゃいませ!」
ギネが大きく声をかけて来る。私は彼女の格好を見てぎょっとした。
「あぁ、スカーレット! いらっしゃい」
カウンター席に案内されて座る。
「ギネその格好……」
「ん? コレはここの制服らしいよ」
彼女が着ているのは丈がギリギリのかわいい、ウエイター服だった。ごめんギネ変なとこ紹介して。
「マスターさんとはうまくやれてる?」
尋ねると白い肌のギネの頬が少し赤くなった。
「うん、大丈夫だよ」
注文に呼ばれて、ギネはお客さんの方に歩いて行く。
「おう、スカーレット」
入れ替わるようにマスターさんがこっちにやって来る。頼む前からホットココアとクッキーが置かれる。
「早速、紹介してくれてありがとな! 働き者のかわいい子で最高だよ!」
ごめんギネ、変なとこ紹介して。
「ギネちゃん、いい子ですから変な目で見ないでくださいね」
「お、おう。俺も大人だからな」
不安だ。
ココアとクッキーをおごって貰って、私はギネと一緒に寮に帰った。綺麗な星を眺めながら、ギネに尋ねる。
「お仕事大変じゃない?」
「確かに忙しいけど、相応以上のお給金貰ってるし大丈夫だよ」
ギネは笑顔だ。
「夜って変なお客さん来ない?」
「んーーこの間、ちょっと怖いお客さんが来たんだけど別のお客さんが外に放り出しちゃった。マスターも、二度と来るなって言ってたよ」
荒々しい。
「あのお店凄く常連さんが多いみたい。常連さんはルールを守ってくれるから、私は凄く楽かな。マスターも優しいし」
「優しいの?」
まぁ、あそこのマスター凄く気を使ってくれる人だよね。
「あがった後に、時々パフェ食べさせてくれるの」
「そうなんだ」
あそこのパフェって確か、全部魔法加工がされてなかったかな。店長、ギネちゃんに鼻の下伸ばしてたけど、アプローチ全開じゃないか。
「あぶなくなったら逃げてね……」
「? うん、でもお客さんみんな優しいし店長も守ってくれるから大丈夫だよ!」
その店長が一番、狼かもしれないんだよなぁ。
不安なスカーレットは定期的に二人の様子を確かめに行く事を心に誓うのだった。
つづく




