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いろいろあったけど、冬休み明けの進級テストはどうにか合格でした。リヴィアもギリギリ合格していて胸を撫で下ろす。男の子二人も合格したので、私達は晴れて二年生に進級です。
私は二年生のカリキュラムを持って、ライアン先生の研究室に来ていた。これで大丈夫か相談したかったのだ。
「うん、おおむねこれで良いけど、せっかくなら錬金術も学んでおくと良い」
「錬金術」
「依頼すれば作っても貰えるけど、自分で作れた方が楽だからね。君には必要なものだと思うよ」
「わかりました」
私はメモをとる。錬金術は、材料を用意してそれを元に目的の物体を生み出す技術である。しかしこの世界の法則と、私の知っている生前の知識はだいぶ相反し合う部分がある。この世界では材料さえ用意すればホムンクルスの生成すら、可能らしい。驚きではあるが、おそらく『魔力』が存在しているせいだと思う。
書き直したカリキュラムを鞄に仕舞う。
「ところで、特級魔法使いになるらしいね」
「クラビスさんから、聞きましたか……?」
「うん。あいつが突然、貸していたお金を全部持って訪ねて来たから何かと思ったよ」
私はその様子を想像して、苦笑した。
「まぁあいつが僕に出資をねだるのは学生の頃からだから、別に構わないんだけど、まさか君の事を頼むと言われるとは思わなかったな」
「意外ですか?」
「知り合いだったのには驚いたよ。……けど、あいつは昔から困っている人が放っておけないんだ……」
私は頷く。
「どうも、俺がイサック教授に紹介してしまったせいで君が目を付けられてしまったらしいね」
「あ、いえ、それは偶然です」
「俺はちゃんと責任をとる男だよ。困った事があったら、俺を頼りに来ると良い。クラスが代わっても君は俺の生徒だからね」
「ありがとうございます!」
ライアン先生が担任で本当に良かった。
私は二年生のカリキュラムを提出した。テスト後は、春休みがやって来る。二年生への期待と興奮を抱きながら私はゆったりと過ごしていた。そんなある日、ダーマに貰った手帳の宝石が光る。ダーマからの連絡だ。
『裏路地にあるニューワールドに来い』
私は連絡を受けてお店に向かい、個室で待つ。しばらくすると、ダーマが入ってくる。彼はいつも、上から下まで黒ずくめだ。黒髪短髪に、黒い目と浅黒い肌、そして黒いズボンに黒いタートルネック、更に黒の指抜きグローブをしている。
「待たせたか」
「いえ、そんなには」
先に来て、イチゴパフェを食べてました。ダーマが目の前の席に座る。
「単刀直入に言うが、君の魔力はまだ先代の足元にも及んでいない。これが先代だとするなら」
彼が水の入ったコップを見る。
「君はこの水滴一つ程度の存在だ」
「ものすごい差がありますね……」
「まぁな。先代は、特別優れた人だった」
ダーマさんはめちゃくちゃ先代の事が好きらしい。
「先代の後を継いだからには、君に優秀な魔法使いになってもらはなくては困る」
これは、ダーマさん欲を出して来たな。
「言っておくが、そうする事は君の為にもなるぞ。なにしろ実力の世界だからな。それに、実力が無いまま精霊解放を行って大精霊の魔力に飲みこまれる可能性だってあるんだ」
「う……そうですよね。頑張ります」
「魔法使いは、基礎値をあげる為に、その体をいじる事がある。おまえも、少しいじった方が良いぞ」
なにか恐ろしい事を、さらっと言われた気がする。
「それ、副作用は無いんですか?」
「あるさ」
あたりまえだろという顔をしている。
「私、命大事に生きたいんですけど」
やむなく特級魔法使いを受け入れたが、別に自分の命を粗末にしたいわけじゃない。私の目標は、幸せになる事なのだから。
「ふう」
あ、あからさまにため息付いた。どうにも、極まった魔法使いさん達の思考って難しい。彼らの常識が私にはよくわからない。
「わかった、じゃあまずコレを飲め」
彼がテーブルに置いたのは小瓶だった。中に小さく丸い丸薬が入っている。
「なんですかコレ」
ビンの中を振ると赤い丸薬が揺れる。
「一粒、一万ギルだ。無くすなよ」
私はビンをテーブルに置いた。
「別に危ない商品じゃない。魔力の向上の為に一般的に使われる丸薬だ。まぁ普通は、これを一生の内に十粒以上口にするものはいないだろうがな」
「副作用ですか?」
「いや、ただ単に貴重過ぎて手に入らないんだ」
「ダーマさん、これどうやって手に入れて来たんですか……」
「それ程、苦労はしないさ」
私は小瓶をそっと押し返す。
「こ、こんな高価なものいただけません」
「……俺は君をこちらに引き込んでしまった責任があるし、君に命を助けれられもした。遠慮せず受け取れ」
更に押し返された。
「ぐぬー」
「なによりおまえは弱い。飲め」
全くも持ってその通りではある。
「これ、本当に副作用は無いんですよね……」
「……たぶんな」
「副作用出たら飲みませんので」
私は試しに一粒、飲んでみた。水での見下した後におなかの中がごろごろ言っている。
「……うーん」
「どうだ」
「今のとこ、大丈夫そうです」
薬瓶をテーブルに置いてから、ダーマを見る。
「もしかして、今後もこういう事をしますか?」
「あぁ、君の為になる事を手配しよう」
「……ダーマさんって、先代にも同じような感じだったんですか?」
「いや、先代は俺が世話をする必要が無いぐらい優秀だったぞ」
「そうじゃなくて、仕事一筋な接し方をしてたんですか?」
ダーマさんは腕を組んで上を向く。
「まぁ、そうだな。俺はあの人の役にたちたかったし。あの人も忙しい人だった」
そうか。それは正しいあり方なのかもしれない。
「じゃあ、先代の弟子であり、部下だったんですね」
しかし彼はそれに眉を寄せた。
「いや……彼は俺の事を部下と思っていなかった」
どういう事だろう。
「むしろ……息子や孫だと言っていた……血の繋がりは無いがな」
意外な返答だった。
「え、じゃあ。親子みたいな関係だったんですか……?」
「俺は親子と言うものをよく知らないのだが……そうだな、よく茶を飲んだりはしていた。俺はあまり話がうまくないから、いつもあの人ばかり喋っていた」
「先代もその時間が好きだったんでしょうね」
「……そうなのか?」
「そうじゃなきゃ、誘わないですよ」
「……そうだな」
彼が少し笑みを浮かべた。ダーマさんが笑ったとこ初めて見た。
「えっと。私も、ダーマさんとお友達になりたいんです。仕事だけの関係じゃなくてですね」
「ふむ」
彼は顎に手をあてて考えている。
「わかった、努力しよう」
「ありがとうございます!」
喫茶店を出た。結構良い話ができたと思う。
つづく




