表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/72

38

 寮に帰り着いてみたものの、寮には数人しか人間がいなかった。みんな机にへばりついて必死に課題をこなしている。そうだ、私も課題があったんだった。思い出して顔が青くなる。課題は全部、別荘に置いたままである。荷物を寮に置いて、ローガンの家を訪ねて見る。さすがにもう家に帰って来ているだろう。ノックから数秒して扉が開く。メイドさんが出て来て、私の顔を見た後に固まる。そして、叫びながら中に戻って行った。

「奥様!!! お坊ちゃん!!!」

 二人ともご在宅らしい。一分もしない内に、二人がやって来る。

「あぁ!! スカーレット!!! 無事で良かったわ!!」

 婦人が豊満な胸で私を抱きとめる。彼女には悪いことをしてしまった。招いた客人がいなくなっては、体裁が悪かっただろう。

「スカーレット!! 本当に君なのかい!!」

 少しやつれた様子のローガンが私の腕を掴む。

「ただいま」

「君が無事で良かった!!」  

 ローガンは私を抱きしめて泣き始める。私は自分の顔が赤くなるのを感じた。心配してくれたのが、嬉しかったのだ。そのあとリヴィアの家にも向かった。

「スカーレット!!!」 

 彼女は私を抱きしめたまま、わんわん泣いた。すると私も涙が出て来た。

「あなたがぶじでよかったわ、わたしほんとうにしんぱいして、よかった……」

「うん、しんぱいかけてごめんね」

 私は彼女の背を撫でた。私達は長い間そうやって泣いた。

 少し落ち着いてからリヴィアの屋敷で私は紅茶を飲みながら、詳しい話しをする事になった。

「いったい、あなたはどこに行っていたの? 手紙が届いたけど、あれは誰からだったの?」

 リヴィアが不安そうな顔をしている。ローガンも真剣な顔で見ている。これからする話しは二人を驚かせる事になるかもしれないが、それでも話さなければ。私は声をひそめる。

「あのね、これから話す事は他の人には秘密にしていて欲しいの」

 二人が頷く。

 私は小声で、私が失踪してから受けた事を話した。見知らぬ男に攫われて、大精霊契約を結ばされた事を話した。それを聞いた時、ローガンは息をのんだ。リヴィアはキョトンとした目をしていた。

「くそっ、まさかそこまでして君を狙ってくるなんて!」

「え、大精霊契約ってあれですの? 特級魔法使いが契約しているあの特別な精霊?」

 特級魔法使いの話しが来ている事を私はリヴィアに伏せていた。なので彼女はこの話しに混乱している。

「うん、その特級魔法使いになる事になっちゃった」

「まぁ……」 

 リヴィアは目を見開いて驚いた。

「契約破棄は出来ないんだろう」

「どうかな。でも破棄はしないつもり。だって、他に適正者がいないんならやるしかないでしょ」

 その覚悟は決めた。

「それでね。特級魔法使いになると、国に仕える事になるの。貴族との関わりも出て来る。それで、二人には私に力を貸して欲しいの。私、貴族間の事って全然わからないから、教えて欲しいの」

 リヴィアが私の手をとる。

「えぇ、もちろんですわ!!」

 ローガンも私の手を握る。

「大丈夫任せて」

 快く二人は引き受けてくれた。

「ありがとう」

 良かった、持つべきものって信頼出来る友人だね。


 屋敷を出て寮に帰って、私は真っ白な課題にとりかかった。冬休みは後、三日。ずっと手を動かしてやり続けるしかない。ダーマさんに課題一緒にやって貰おうかな。あまりの課題の多さにそんな不穏な事まで考えてしまった。

 時間を見つけて、クロエ先生にも移植の件を話しに行った。

「……あなたの話しが本当なら、少し胸元を見ても良いかしら」

 きっと胸の痣を確かめたいのだと思い、私はシャツを少しだけ開いて見せた。そこには火の刻印のような痣があった。見た後に彼女はすぐにシャツを閉じて、私を抱きしめた。

「お疲れ様、よく生き残ったわね」

 彼女は、この移植の生存率の低さを知っていたのだろう。身体を離して、私の瞳を真っ直ぐ見る。

「あなたにこの移植を行ったのは誰」

「……」

「これは違法な移植だわ。あなたが罰される事はないけど、移植を行った犯人にはしかるべき処罰を受けさせなきゃいけない」

 私は生唾を飲んだ。

「すいません。私ずっと視界を奪われていたので、移植した人が誰かはわからないんです。何人か知らない男の声を聞いた気がするんですが……」

 あの場所にはダーマ以外にも誰かいた。貴族や魔術師の中で、この違法な移植に賛同するものが他にもいたのだ。そして、ダーマを誘い彼はそれを利用した。それが誰かは気になるが、私にはダーマを犯人として差し出す事はできなかった。彼にはまだ聞きたい事もある。でも、なにより完全に彼を悪人だと思えないのだ。



つづく



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ