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冬がやって来る。四度目の試験も終わり、冬休みに入った。冬休み明けのテストに合格すれば、私は晴れて二年生である。漠然とではあるが、私は『魔法』系の仕事に進むと決めたので二年からのカリキュラムはそちらの方面で組む事にした。
そして冬の間、私はローガン・リヴィアと別荘に行く事になった。二人が幼い頃から一緒に行っていた場所らしい。別荘が隣合っているので、よく遊んだのだとか。
ちなみに、ローガンとリヴィアの『婚約』の件は二人の意思を尊重して、解消となった。
馬車に揺られながら私は若干緊張していた。
「スカーレットちゃんも、キャンディ食べる?」
「はい、いただきます」
私はローガン・リヴィア・そしてローガンママと同じ馬車に乗っていた。ローガンパパは仕事で来られないそうだ。リヴィアちゃん家族は遅れて来るらしい。なのでこのメンバーで馬車に乗っている。しかし、平民の私は若干恐縮するのだった。貰ったキャンディをもぐもぐ食べる。いちご味で美味しい。
「スカーレットちゃんはルルス村の出身なのよね。すごいわね、飛び級なんて」
「恐縮です」
あぁ、こういう時どう受け答えすれば良いのだろうか。
「学園でもローガンと仲良くしてくれて嬉しいわ」
「私こそ、凄く嬉しいです」
「スカーレットは魔法が凄いんだよ」
「火の魔法が得意なのよね」
「うん、今度一緒に上級試験を受けるんだ」
「頑張りなさい。学生の内は沢山勉強しないとね」
私はこくこく何度も相槌をうった。
オリバーの家の避暑地は馬車で三日程かかる場所にあった。大きなお屋敷にひるみつつも、これからしばらくココで過ごすのかと思うと少しワクワクした。
「三時におやつを用意してますから、食べに戻っていらっしゃい」
馬車の中で話していてわかったが、ローガンのお母さんは良い人だった。平民だからと言って私を差別する様子も無い。三台続く馬車には、執事やメイド達も乗っていた。彼らが忙しそうに荷物を下ろしている。
「スカーレット、屋敷の中を案内するよ。結構広いから迷うかもしれない」
「お願い」
「私も一緒に行きますわ」
三人連れ立って屋敷の中を歩いた。本当に広くて、エレベーターも無いから凄く足腰が鍛えられた。与えられた部屋に入ると、自分の荷物を広げて服をハンガーにかけたり私物を棚に置いた。その時、窓の外から視線を感じた。
「……?」
私は不審に思って外を見たけれど、三階の窓の下には誰もいなかった。草原と、遠くに森が広がっているだけだ。
その日は夕飯を食べてすぐにベッドに入った。馬車での旅に疲れた身体はすぐに睡魔に落ちた。
起きると見知らぬ天井にぼーっとなった。そして、別荘に来ているのだと思いだした。大きなベッドから下りて服を着替えて、下におりる。途中でリヴィアに会う。
「おはようリヴィア」
「おはようスカーレット」
二人で食堂に行った。席に座って、食事をする。食事の前の祈りみたいなのが入って少し戸惑った。貴族の子達は学校でもたまにやっているのを見た。この国の宗教について私はまだよく知らないので、調べておきたい。
食事が終わった後に、ローガンが釣り竿を持ってやって来た。
「湖に釣りに行こう」
「いいですわよ」
三人でボートに乗って、釣り糸を垂らした。意外にもリヴィアは餌を自分で付けていた。どうもローガンと付き合う内に、こういうのに慣れてしまったらしい。彼女のおおらかな性格形成の一旦にローガン家が大きく関わっている気がした。釣り糸を垂らして待つ。
「来た!」
ローガンが大きな魚を釣る。
「私も来ましたわ!」
リヴィアも一匹魚を釣り上げた。そして私の竿には全くなにも来なかった。あくびまじりに竿を引き上げると、餌だけ食べられている事が多数あった。私はどうも釣りに向いていないらしい。結局、私は最後まで一匹も釣れなかった。ローガンは五匹、リヴィアは四匹となかなか好調に釣っていた。二人が楽しかったのなら、それで良い。
「気を落とさないでスカーレット。こういうのは慣れだから」
「そうだよ、俺達だって最初は全然釣れなかったんだから」
「あはは、そうだね」
私は釣り上げてしまった長靴を適当に捨てて、二人と屋敷に帰った。
次の日は馬で遠乗りに出かけた。家に農耕馬がいたのでスカーレットも馬に乗る事が出来た。生前の私は馬に乗った事がなかったのだが、スカーレットには経験があるので少し頭の中を混乱させながら馬にまたがった。身体がかってに動いて馬を操っている。気性の優しい良い馬だったので、難なく乗りこせた。乗りこなしながらも私の頭の中は若干混乱していた。こういう時がたまにあった。経験が、自分の中で上手く嚙み合わないのだ。
三人で草原を思う存分に走って、三時の時間になると屋敷に戻った。今日、初めてリヴィアのズボン姿を見たのだが品良く似合っていた。
おやつの時間に、ローガンママもやって来る。四人楽しくお茶を飲んだ。その日の夕方にリヴィア家が到着したらしい。リヴィアは一旦、自分の家の別荘に行ってしまった。お隣と行っても、馬車を走らせて三〇分程の距離がある。
次の日はリヴィアもいないので、自由行動となった。私は読書する事にした。沢山本の並べられた書斎の本を眺める。好きなだけ読んで良いと言われているので、気になる本を片端から取り出して目を通す。物語もあれば、専門書も多い。良い暇つぶしになりそうだ。その時、視線を感じた。私はあたりを見渡す。屋敷はとても広いのだが、人間が数人しかいないのでとても静かだ。それが、少し怖い気もした。部屋の外や、窓の外を見たが不審な点は見られなかった。外はまだ明るいし、気にしすぎだろう。三冊、本を手に持って私室で読み始めた。
夕飯は美味しくて大変幸せな気持になった。お風呂に入り、その日は早めに眠った。
部屋で眠っていると、深夜に目が覚める。知らない部屋で寝るせいか、よく眠れなかった。二、三日もすれば慣れるだろう。私は伸びをして、水差しの水をコップに注いで飲む。その時、何か物音を聞いた気がした。コップをそっと棚に戻して、ベッドからゆっくりと下りる。暗い部屋の中に目を凝らすが物音の正体はわからない。すると、今後ははっきりと足音が聞こえた。誰かが私の部屋の前に立っている。ドアノブを回して、中に入って来る。私はパニックになりながらベッドの下に潜り込んだ。足音が近づいて来る。私は息を殺して気配を消した。
誰かは布団をめくって戸惑っているようだった。慌てたように部屋の中を探し回って、再びベッドの前に戻って来る。そいつは窓際の方に移動して、窓を触っている。そしてしばらくして、私の両足は引っ張られた。
「…!!」
私が悲鳴をあげる前に口が塞がれて、両腕を拘束される。あまりにも素早く、手慣れた動きだった。魔法を使おうとしたが、出ない。腕の拘束具は魔封じの効果もあるらしい。そして男は私に魔術をかけた。これは眠りの魔術だ。こんな時なのに眠くて眠くて仕方ない。誰かは、私をかつぎあげ毛布でくるんだ後に、窓の外に飛び降りた。ここは三階だ、信じられない。しかし、男は難なく着地する。きっと魔術で、衝撃を緩和したのだ。暴れても男が私を離してくれる様子は無い。男はどんどん屋敷から遠ざかる。明日の朝、ローガン家の人々はどんな顔をするだろうか。そして私は気を失った。
つづく




