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「というわけで、魔法関係の仕事に進もうと思ってるんです」

 森で採取作業をしながら、私はザウルさんとラスカーさんに自分の将来について話していた。

「それなら、俺が仕事紹介してやろうか?」

 ラスカーさんがスカーレットの側にやって来る。

「え、でも仕事は上級ライセンスが無いと受けれないんじゃないんですか?」

「上級ライセンスがあれば、実力は示せるな。だが、知り合いのツテなら中級程度でもかまわない。そら、試しに一発腕を見せてみろ。全力のでかい奴を出せ」

 ラスカーさんが、森の拓けた場所を指さす。スカーレットは、籠を下ろしてその場所へ行った。両手を突きだして集中する。この世界の魔法に呪文というのは無い。魔力を自分の中に招き入れて、外へ出力するイメージだけで魔法は成った。私の体に渦となってひき上げられた魔力が、私の両手から吹き出して大きな火の柱を作る。私はユーリス先生の指導プラス、学園に来てからライアン先生の指導のおかげで以前より更に大きな火柱を作れるようになっていた。周りに燃え移らないように、縦長い火柱である。

「……すげぇな」

「これは驚いた」

 天高く燃え上がる巨大な火柱を見て、二人がぽろりと感想をもらした。

 火柱を止めた後にラスカーがうなる。

「こりゃ、上級の中でも上の方に位置する実力があるな。いくら火魔法に特化しているとは言え、十分仕事先はあるぞ」

「本当ですか!?」

 それは、とてもうれしい事だった。

「街に帰ったら早速、声をかけてみるな」

「よろしくお願いします!」

 少しだけ道が見えた気がして嬉しかった。


 次の日仕事が休みだったので、寮のラウンジで課題を予定より早く片づけていた。これから魔法の仕事も増えて忙しくなる気がしたからだ。

「やぁ、がんばってるね」

 声をかけて来たのはライアン先生だった。

「以前言っていた、魔法使いの顧問だけど、受けてくれるらしい」

「本当ですか!」

「あぁ、ただ彼女は夏の間は自分の研究で国を離れている。授業は夏休みが終わってからになる。それで、構わないね?」

 私は頷く。ついでに、魔法関係の仕事紹介をして貰う話も伝えた。

「あぁ、それは良いね。何事も実践は大事だ。俺も学生の頃から小遣い稼ぎにいろんな仕事をやったものさ」

 先生はにっこりと笑った。


 次の日、仕事に行くとラスカーから魔法の仕事の依頼を貰った。

「最近山で落石があったらしい。道に落ちた石を壊すのを手伝って欲しいという依頼だ。出来そうか?」

「やってみます!」

「良い返事だ。俺も護衛で一緒に着いて行くから、安心して欲しい」

「ありがとうございます!」

 ラスカーさんが一緒なら安心だ。

「嬢ちゃんがんばれよ」 

「頑張ります! ザウルさん」

 

 次の日、落石どかしの為の仕事に行く事になった。朝に、寮の前でラスカーさんが待っていた。

「おはよう」

「おはようございますラスカーさん」

 ラスカーさんは門には向かわずに街の中央へと歩いて行く。

「俺たち傭兵に仕事を下ろしてくれる場所がある。今回は嬢ちゃんを登録しに行く。長く世話になるところだから、しっかり挨拶しておけよ」

「はい!」

 連れて来られたのは少し古い建物だった。中に入ると、傭兵や魔法使いらしき人達が受付で話しをしていたり書類を書いている。

「こっちだ」

 連れて来られた受付では女性が一人座っていた。女性の事務員は、地元の村でも見た事が無かった。珍しい。

「こんにちはラスカーさん」

「おう、こいつの登録を頼む」 

 私を見下ろした女性は目を丸くする。

「あの、もしかして以前に話していた協力者の方ですか? 火の魔法を使う」

「そうだ」

 女性は困った顔をする。

「失礼ですが、斡旋所のライセンスを発行しかねます」

「どうしてだ?」

「……ラスカーさんこそ、こんな小さい子をどうするつもりですか」

 あまり第一印象はよくないようだ。

「あの、私中級認定魔法使いの資格を持ってるんです。それでもダメでしょうか?」

「中級? あなたが?」

 女性は驚いている。

「……わかりました。では、こうしましょう。今回の任務で、私の方から一人、監視員を付けます。彼の目から見て、スカーレットさんが十分に実力のある方だと判断できたらライセンスを渡します」

 ラスカーは頭を掻いている。

「だってよ。良いか?」

「はい!」

 仕事を発注する側としては、実力の不確かな人間を雇えないのは仕方ない。

「シュロ」

 女性が名前を呼ぶと青年がカウンターの向こうからこちらにやって来る。

「シュロと言います。邪魔にならないように付いて行きますね」

 彼はそう言って、ほほえんだ。

「よろしくお願いします」

 仕事の出来そうな彼にこわごわとお辞儀した。


 森に出て目的の場所に歩く。

「確かこのあたりの道なんだがな」

 ラスカーさんが目印の付いた地図を片手に歩く。シュロさんは少し離れて付いて来て、こちらに手をかす事も口出しする事も無かった。

「お、あったあった」

 近づくと確かに道の真ん中に大きな石があった。迂回すれば通れるのだが、不便ではある。

「それじゃいっちょ破壊してくれるか」

「はい」

 二十m以上離れたところから両手を付きだして、岩に炎をぶつけた。

 ドゴッ

 凄い音を出して岩が爆発した。ダイナマイトで岩を爆破したりする映像が思いだされた。

「よし、なかなかのもんだ」 

 後ろを向くとシュロさんが何かをメモしていた。目が合うと、彼はにこっと笑った。私も一応、笑みを返しておいた。

 その後の道にも、転々と落石が落ちていた。それを一つ一つ壊しながら進み、最後に道全てを塞ぐ大岩に突き当たった。

「でけーな。やれそうか?」

 さすがにこんなに大きいと自信持っては答えられない。

「とにかくやってみます」

 爆発に巻き込まれないように、離れた場所から力を込めて岩に炎を叩きつける。少し遅れて辺りに響く轟音。岩は崩れ、私達の周りに爆風が散った。少しやり過ぎた気がする。塵が収まった後に岩の跡を見ると、粉々に砕けてしまっていた。

「これで仕事は終わりかな」

 ラスカーさんが地図を見る。

「一応、このまま麓まで下りて他に岩が落ちてないか見てみませんか?」

「それもそうだな」

 山を下りて、落ちていた岩をいくつか壊してから街に戻った。結局、シュシュさんとは一度も話をしなかった。斡旋所に戻って来ると、シュロさんが上司に報告をしている。少しした後に、私達が呼ばれる。

「シュロの報告を聞いたところ、あなたは十分な実力を持っているみたいね。わかりました。ライセンスを発行しましょう」

 彼女が書類を一枚テーブルに置く。

「ここにサインを書いて」

 書類には、斡旋上に登録するむねが書いてあった。罰則なども書いてあるから、サインの前によく読む。

「……契約書をちゃんと読むのは大事なことよ」

 彼女は感心したように呟いた。

「これからも、何かにサインする時は書類をよく読んだ方が良いわ」

 やっぱり、詐欺みたいなのもあるのか。この書類には問題が無いようなのでサインする。

「それじゃ、これからはあなたにもお仕事を紹介するわね」

「ありがとうございます。よろしくお願いします」

「こちらも、よろしくね。はい、今日の礼金よ」

 渡された袋は重かった。でも、これは二人分だから後でラスカーさんと分けなければ。

 斡旋上を出てから、ラスカーさんを見上げる。

「今日はありがとうございました!」

「いやいや、嬢ちゃんの実力があっての事だ」

 スカーレットはお金の入った袋を持ち上げる。

「これ、半分に分けましょう」

「いやいや。今日の仕事は嬢ちゃんの頑張りだろ。半分はおかしい」

「でも……」

「なら、俺は三割で良い」

 ラスカーには道案内をして貰い、護衛までして貰ったのだから半分で良い気がするのだが。しかし、彼の方もこれ以上折れる気は無いらしい。

「わかりました」

 私は報酬を数えて、三割をラスカーさんに渡した。

「あの、これからも仕事を私が受ける時は着いて来てくれませんか。まだ外の魔物に一人で対応できないので」

「おうさ。もちろん、そのつもりだ」

「ありがとうございます」

 その返事に安心して胸をなで下ろした。   

 寮に帰ると夕飯を食べてシャワーを浴びた後に、すぐベッドに入った。思ったより今日は疲れた。もっと体力をつけなければ。

 


つづく


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