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曖昧な記憶の、その隣で  作者: はる乃


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第八十一話 策士な私

翌朝。


真二は。


何事もなかったかのように身支度を整えると。


「じゃあ。」


それだけ言って。


部屋を出ていった。


扉が閉まる。


その音を聞いた美香は。


しばらくベッドの上で動かなかった。


やがて。


ゆっくりとスマートフォンを手に取る。


画面に表示されたのは。


昨夜。


眠っている真二と自分を撮った写真。


美香は。


その写真を眺めながら。


小さく笑った。


「……色々、脇が甘いんだよ。」


写真の中の真二は。


何も知らず。


無防備な寝顔をしている。


美香は。


写真を一枚ずつ確認するように眺めた。


そして。


スマートフォンを胸元に抱く。


「……そんなところも。」


「たまらなく大好き。」


その笑顔には。


もう一つの理由があった。


(これでいい。)


(これで、準備はできた。)


美香は。


以前から通っていた病院のことを思い出す。


真二には。


「避妊のために必要なピルを処方してもらっている」


そう話していた。


けれど。


本当の目的は。


もっと先にあった。


真二が。


自分との関係を終わらせて。


未来のもとへ戻ろうとしていることも。


全部、分かっている。


だからこそ。


美香は。


偶然に賭けるつもりなどなかった。


真二が自分から離れようとするなら。


離れられない理由を作ればいい。


そう。


ずっと考えていた。


「……真二。」


美香は。


写真の中の真二に向かって。


静かに呟く。


「私ね。」


「あなたを諦めるつもりなんて、最初からなかったの。」


そして。


スマートフォンを伏せる。


その表情には。


もう迷いなどなかった。


「今月、生理が来ないといいな。」


美香は。


ふっと笑う。


そして。


誰にも聞こえない声で呟いた。


「……妊活の薬も飲んでる。」


「先生に言われたタイミングも……ちゃんと合わせた。」


少しだけ間を置いて。


美香は、自分のお腹にそっと手を添える。


「……私って、策士かも。」


その笑顔は。


恋する女のものなのか。


それとも。


自分の計画を成功させようとする女のものなのか。


――もう。


自分でも分からなかった。

真二は別れたつもりでも、

「美香は終わったと思っていない」という

二人の認識のズレがかなり明確に出ていますが。

今後どうなっていくのでしょうか?

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