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曖昧な記憶の、その隣で  作者: はる乃


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第五十三話 記憶の中の違和感

スーパーへ入ると、未来は楽しそうに店内を見回した。


「広いですね。」


彬は買い物かごを手に取り、小さく笑う。


「そんなに珍しいか?」


「久しぶりだから。」


未来は照れくさそうに笑いながら、売り場を歩いていく。


その時だった。


未来は迷うことなく、むきエビをかごへ入れた。


続いてブロッコリー。


マヨネーズも手に取る。


彬はその手元を見て、小さく目を見開いた。


「未来。」


「悪い。」


「俺、エビだけは駄目なんだ。」


未来は驚いて振り返る。


「えっ?」


彬は少し困ったように笑う。


「昔からエビを食べると蕁麻疹が出る。」


「だから、なるべく食べないようにしてる。」


未来は慌ててかごの中を見つめた。


「ご、ごめんね。」


「私……なんでエビを選んだんだろう。」


エビ。


ブロッコリー。


マヨネーズ。


まるで何度も作り慣れた料理のように、自然と手が動いていた。


胸がどくりと鳴る。


(エビマヨ……。)


(どうして作ろうと思ったんだろう。)


(誰かが、美味しそうに食べてくれてた気がする……。)


頭では思い出せない。


それなのに、身体だけが覚えている。


未来は小さく首を振り、そっとエビを売り場へ戻した。


「ごめんね、彬。」


「無意識に入れちゃったみたい。」


彬は何も言わず、その様子を見つめていた。


(やっぱり……。)


(身体は覚えてるんだな。)


胸の奥が静かに痛む。


それでも彬は、その想いを表情には出さず、小さく笑った。


「気にするな。」


「じゃあ今日は、別のものを作るか。」


二人は再び、ゆっくりと売り場を歩き始めた。

未来の身体が「彬との記憶」ではなく、

真二との生活で身についた習慣を無意識に選んでしまっています。


この積み重ねで記憶を取り戻すのも近いのでしょうか?

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