第三話 小さな違和感
『未来! 今、先方から連絡が来た!』
「え? こんなに早く? ……どうだったの?」
『契約、決まった!』
未来はその場にしゃがみ込んだ。
「……よかった」
半年間。
睡眠時間も、
休日も削って走り続けた日々が、
その一言で報われた気がした。
『お前のおかげだ』
「違うよ。真二が頑張ったから。」
『いや。今回はお前がいなかったら絶対無理だった。ありがとう。』
未来は思わず笑みをこぼす。
その笑顔を見つめた彬は、
何も言わず視線を逸らし、その場を後にした。
電話の向こうでは、
真二の弾んだ声が続く。
『それでな、この契約、かなり大きなプロジェクトになる。来週、提携先との合同親睦会を開くことになった。』
「親睦会?」
『うん。取引先の社長や役員も来るから、失敗は許されない。』
未来は自然と口元を緩めた。
(もしかして……)
契約が決まったら結婚しよう。
半年前に交わした約束が頭をよぎる。
親睦会では、
みんなの前で婚約者として紹介してくれるのかもしれない。
そんな期待が、
胸いっぱいに広がった。
しかし、真二の口から出たのは別の言葉だった。
『未来、悪いんだけどさ。』
「うん?」
『提携先から追加で資料を頼まれてるんだ。親睦会までに仕上げたい。お前しか任せられない。』
一瞬だけ、
未来の胸が小さく痛んだ。
それでも笑って答える。
「もちろん。任せて。」
『助かる。やっぱり未来がいてくれると安心する。』
その一言で、
さっきの寂しさは消えてしまう。
「頑張るね。」
『じゃあ、親睦会で。』
通話が切れる。
未来はスマートフォンを胸に抱きしめた。
やっと。
真二の恋人として、
隠れることなく隣に立てる。
もう社内で、
二人の関係を隠さなくていい。
そう信じていた。
親睦会で、真二は未来をどの様に紹介するのでしょうか?
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