5、なんでお前は泣いてるんだ?
「別に新入生代表の挨拶なんて誰がやっても同じだろう、内容は学院側が用意したものを音読するだけだし、新入生に王族がいる場合は代表の挨拶をするなんて面倒な慣習だ」
「ご立派でしたロイフォード様」
「………ファスティー、お前何でそんな泣いているんだ?」
「新入生代表としてご挨拶するロイフォード様の姿に感動してしまって涙が止まりません」
「………俺とお前はつい先日知り合ったのに何でそこまで感情移入できるんだ?」
「つい先日、暗殺者に命を狙われて死ぬかもしれなかったロイフォード様が無事に入学式で新入生代表の挨拶をしているんですよ、これで感動しない人間がいるのですか?、少なくとも私は感動の涙が止まりません」
「成程、なぜお前が泣いてるのか理解できた」
「理解していただき感謝します」
学院の慣習に愚痴をこぼすロイフォード様、私はその横でせっせと涙をハンカチで拭いている、ロイフォード様は私に何故そんなに号泣するほど泣いているのかと問われる、婚約者に変装され、婚約破棄という卑劣な手段で命を狙われていたロイフォード様が無事に入学式に参加、その上新入生代表の挨拶までしているなんて感動の嵐に他ならないと私の心情を説明する、ロイフォード様は納得してくれた。
「でもな、ファスティーは目立たない為に俺と同じ新入生として入学したんだよな?」
「はい」
「滅茶苦茶目立っているぞ」
「そうでしょうか?」
「ああ、普通入学式ってのはこれから始まる学院生活にワクワクする所なんだよ、側から見たら号泣しているお前は慣れ親しんだ学院生活と仲間に別れを告げて巣立つ為の卒業式に参加している卒業生なんだよ、しかも無表情でやたらキリッとしているのも混乱を誘う」
「そうなんですか?」
「ちょっとは周りを見てみろ、みんなお前のことを見てるぞ」
「いえ、それは違います」
「?」
「私如きがロイフォード様を差し置いて注目を集めるなどあり得ません、ですからロイフォード様が感じている視線はきっとさっきの新入生代表の挨拶に感銘を受けた学生の尊敬と賞賛に満ちた視線に決まっています」
(………どう見てもファスティーに視線が向けられてるんだが………)
その後、私が目立っていると指摘を受けるが、そんなわけがない、わざわざ新入生として入学してきたのだ、ロイフォード様が感じている視線はきっと先程の新入生代表の挨拶に感銘を受けた生徒達の尊敬と期待の視線をロイフォード様逃げているのだと愚考する私、ロイフォード様は周りを少し見渡した後に嘆息するのみ、どうらやら納得していただけた様だ。




