第10話 Outro
毎日17時投稿じゃ。
弟子の成長を見届けるのじゃぞ。 byラリス
リストの左右後方にある魔法陣は、さらに赤く輝く。
クレナイ「次は炎か、武器ごとに属性が決まっている?」
リスト「御名答。でも一つ間違っている。これは、武器じゃ無い、私が愛する楽器たちだ!」
さらに魔法陣は赤くなり、フィールドが熱される。
リスト「燃やし尽くせ!」
魔法陣が、俺を囲むように周りを回転する。
クレナイ「相手は、発動まで待たない。」
実況「クレナイがリストの魔法を逆手に取ったァ!」
俺は一気に相手に近づき、急停止する。一瞬でリストも、魔法陣の内側に入る。
ラリス「早く魔法を解かなければ、リストも被弾する。耐久戦になったらクレナイの方が有利じゃな。そんなことはリストも分かっておるが...どう出る?」
一瞬の猶予もなくーー
リスト「やるね。」
リストの魔法が解ける。と同時に、リストの足を蹴りで薙ぎ払う。
クレナイ「まじか...」
蹴りの速度は、秒速50mを超えていた。
はずなのに一ー
実況「渾身の蹴りは空を切ったァ!」
リストはかなり高く飛び上がり、蹴りを軽々と避ける。
飛び上がったリストに、俺は、蹴りの後隙を狙われる。
♪~♪~
ボオオン!
フィールドの床が少し抉れる。
実況「決まった!あれこそリストの真骨頂!転調だァ!」
俺を襲ったのは、小さな火の玉。
さっきの技よりも威力が低い代わりに、発動が速かった。
その後、リストが俺の背後に着地するがーー
???「やっぱ頑丈だな!」
声が荒い。さっきまでとは全く違う、雰囲気。
そして俺は気づく。
クレナイ「二重人格...」
???「俺は、ボーカ!リストの兄だ!」
ラリス「...人格が変わった。」
観客席は、戸惑いで止まる。
実況「なんと!リストは二重人格だったァ!自称兄のボーカ、どんな戦いを見せてくれるんだァ?!」
ボーカ「おいコジマ!自称とはなんだ!」
実況席を睨みつける。
実況「おぉ、」
観客席は笑うし、実況は引いているし、どんな試合だよこれ。
ボーカは気を取り直し、
ボーカ「クレナイ!勝負だ!」
クレナイ「何言ってるんだ。もう勝負は始まってんだろ!」
ボーカ「ボリューム上げてけ!」
なんだ、この心が踊るような感覚。
俺が奴の、ボーカのペースに飲まれているのか?
実況「なんだなんだァ?!さっきまでの試合はどこいったァ!超ハイテンポ、そしてリズミカル!」
フィールドには、聞こえないはずのリズムを感じる。
観客席の盛り上がり方も異常だ。
観客席までもが、ボーカのペースに飲まれているようだ。
これが、“貴公子”
試合展開は互角。
俺が攻撃すれば、ボーカは避ける。
ボーカは攻撃すれば、俺は受け止める。
♪~♪~
♪~~
♪~~♪~
ボーカは楽器を状況に応じて使い分ける。
二つの火の玉、高速で飛び交う泥団子に、手足を痺れさせる電撃。様々な属性の魔法が、フィールドを色付ける。
いくら俺が受け止められる範囲とはいえ、こんな一方的に攻撃されるのは、たまったもんじゃないな。
ボーカは相変わらず、俺の攻撃を避け続け、時々空中に飛び上がる。そういうスキルでもないのに、鳥のように機敏に動く。
ボーカ「おいおい、テンポが落ちてるぜ!もっと楽しませろ!!」
実況「クレナイなす術なしか?!ボーカの一方的な試合展開だァ!!」
俺は動かない。ボーカのリズムに乗ったら負けだ。
攻撃を受け止め続け、時を待つ。
♪~♪~~
フィールドに強風が吹く。俺はそれでも一歩も動かない。
ボーカ「面白くねぇ!もっとだ....」
ボーカのテンポが、半拍ズレる。
実況「どうした!ボーカの様子がおかしいぞ?!」
空中に佇みながら、急にボーカは目を閉じる。
一応、すぐに目を開いたがーー
リスト「ボーカァァ!!!」
実況「なんだ?気でも狂ったのか、急にキレ出したァ!」
リストが頭を抱えながら叫ぶ。そしてゆっくりと、空中から落ちてくる。
俺は落下に合わせ移動を始める。
ラリス「魔力切れじゃな。」
実況「なんだってェ!リスト、大ピンチか?!」
リストの眼中には、クレナイどころか、勝負すらも見えていない。
俺は拳に魔力を込める。
落下に合わせて、リストの胴に一撃を決める。
その瞬間、観客席だけでなく、実況席にも驚きがあらわれた。
俺が放ったのは、ただのパンチじゃない。
熊の姿が俺と重なる。
ズドオオン!!
クレナイ「思ったより、タフだな。」
リストは場外に飛ばされるが、命に指輪は発動しない。
しかしーー
実況「10秒経過!クレナイの勝利だァ!!」
リストはフィールド内に帰ってこなかった。
それもそのはずーー
ラリス「クレナイは、ベアの【重撃】を、魔力のコントロールだけで再現しおった。あのベアには匹敵しないが、この試合では十分有効打になるじゃろう。」
俺は、場外に倒れているリストに近づく。
リストの体は傷だらけで、痛々しい。
すぐに、リストは緑色の光に包まれる。
命の指輪が強制発動したらしい。
クレナイ「いい“勝負”だった。」
リストは立ち上がり、俺の目を見て話す。
その目は、謝罪を感じさせるような、弱き瞳だった。
リスト「俺は、何もしていない。」
それだけ言い残し、控え室に向かってしまう。
とはいえ、これで次は準決勝。ついにアルトとの試合だ。
ふと、顔を観客席に向けると、
クレナイ「アルト...」
俺を、酷く見下すようなその目は、アルトだった。
アルト「勝つのは俺だ...」
アルトの呟きは、俺には聞こえなかった。
でも、竜の鱗のような、アルトの”濃い緑色”の魔力。
視線が重い。
そして、来たる準決勝は、波乱の展開だったーー




