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3S探索者の代理人  作者: かんだ
第十七章 代理人、大阪遠征に行く

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4. 大所帯

 新幹線が新横浜に到着すると、がらんとしていた車両に少しばかりの人数が入ってきた。大柄な男と、細身で高身長な男、それから小学生だ。

「お待たせ!」

 と笑顔の当夜と

「ご無沙汰してます」

 とにこやかな聖夜。それから

「こんにちわ!秋人さん!!」

 と大きな笑顔を浮かべたのは

「やあ、遊馬くん」

 秋人の最年少の友人である遊馬だった。

 

 当夜は盆が大阪遠征で潰れるので、一足先に実家に帰省していた。そこで兄と合流して今回の作戦に参加するためにやってきたのだ。

 当夜は朽木の家とは縁を切ったことになっており、それは本人も覚悟の上だったが、薫はそんな時代錯誤な風習を雇い主としても、パーティーリーダーとしても受け入れるつもりはなかった。

 なので、今回の遠征に対して朽木家に助力を乞うという形で、当夜に里帰りさせたのである。もちろん、そんなのが口実なのは現当主、朽木一馬も分かっているのでそこは2人のバーターだ。というわけで、当夜は実家でしっかり休暇を過ごし、Sランク昇進について自分の口で家族に報告できたのだった。

 

「遊びに行くわけじゃないんだぞ」

 と当夜が遊馬の頭をぐりぐりと撫でた。遊馬は一応朽木家当主の名代だ。巌がいるので問題ないだろうとも言えるのだが、そこは一馬としても経験値を息子に積ませようと言う親心である。

 ダンジョンを無くした一族を本格的に引っ張っていくのは、おそらく遊馬の代からだ。そのことへの備えは早い方がいいだろうと当主としての判断である。

 

「わかってるよ!ちゃんと大人しくしてる!!」

 あの時と違って素直に言うことを聞くことを約束する遊馬に、薫は苦笑を浮かべた。

 

「神崎さん、これ父から預かってきました」

 遊馬が神妙な顔で薫に白い封筒を手渡す。頑張って大人らしく振る舞う子供というのは、微笑ましいものだ。

「ん、ありがとう」

 にこりと薫が微笑むと、思わず遊馬は赤面して一歩下がった。

 

「?」

「いえ、なんでも…ないです」

 しどろもどろで慌てて聖夜の隣に腰をかける。薫は不思議そうに首を傾げた。

「神崎先生、今日はちょっと出力コントロール甘くないか?」

「貸切車両で知らない人いないからな。リラックスしてんだよ」

 とぼそぼそと朽木兄弟が会話している。

「なんだよ、言いたいことがあれば大きな声で言えよ」

 と薫が眉を寄せる。

「相手は先生に免疫のない小学生なんっすから、無闇矢鱈と無防備に笑いかけないでやってください。変な方に進んだらどう責任とるんっす?」

 という当夜の理不尽な抗議に薫は唇を尖らせた。

「失礼な」

「当夜、もうちょっとオブラートに包みなさい」

 聖夜が弟を嗜めるが、薫的には聖夜の発言自体あまり包まれてる気がしない。

「お前たち兄弟の俺への評価はよーくわかった」

 薫がむくれている間に兄弟はせっせとスーツケースを片付け、椅子を回転させて秋人たちと向かい合わせにした。

 

「秋人くん、最近ババ抜き練習してるって聞きましたよ。クリスマスのリベンジですね」

 聖夜がにこりと微笑む。秋人は

「受けて立ちます!」

 と自信満々に胸を叩いた。

 秋人、薫、聖夜、当夜、遊馬、巌のババ抜きが始まった。

 

 結果…

「秋人さん、いくらなんでもババ抜き弱すぎだよ」

 と遊馬にまで言われる始末である。

「ま、まあ。うん、前よりはマシになったよ、秋人」

 と薫がフォローを入れるも、秋人は俯いて悔しさにぷるぷる震えるしかできなかった。

 

 

「久宝寺ダンジョンへのアプローチは、俺たち『神崎家』の3人の他に臨時で巌さんと聖夜の5人チームで臨むってことでいいのかな」

 ババ抜きが終わった後、駅弁を食べながら例のダイジョン閉鎖についての作戦会議である。

 

「あ、うちの兄と久宝家のエース1人も参加するって言ってたで」

 と横から音々が手を挙げる。

「じゃあ、7人かな?いつもよりかなり大所帯だな」

 薫の言葉に巌はため息を吐く。

「神崎先生、普通のパーティーならあれだけのダンジョンを閉鎖しようというのだから、そのくらいの人数でも少ない方ですよ。あなた方が異常なんです」

 

 神崎家のコアメンバーは、秋人、当夜、薫の3人。この前の会見の時にわかりやすいようにと金子も入ったので、現在は4人だが、基本金子と潜ったのは新潟の一回だけだ。さらに、今回金子は事務所で待機してくれている。

 もしも、今回の依頼が去年の夏休みのように長引いた時に、臨時所長を引き受ける為だ。

「神崎家」は圧倒的に構成員が少ないので、何かあった時に替えがきかない。

 

「まあ、そうなんですが。流石に、小早川さんと幸田さんを一緒に連れていく訳に行きませんしね」

 薫はビルの警備に当たっている2人の名前を出す。薫が知ってる探索者(シーカー)で薫たちのやり方に付いていけそうなのはこの2人か、あとはレオネアとマヌエルだけだ。あの2人は流石に数に入れるのは論外だ。

 

 

「先生、その、例の救世来神教(エルミネイト)の化ける奴が来たら、あの2人で守り切れるっすか?」

 当夜が不安そうに尋ねた。小早川と幸田の腕前はそれなりだが、あのアズという男はとにかく圧倒的だった。化ける奴の魔力は大したことなかったが、アズを抑えるのはあの2人には荷が重いだろう。

 そして、化ける方の奴にしてもかなりの精度の変身能力だった。化ける相手のパーツを食べて取り込むと聞いた時には流石にあまりのグロテスクさにドン引きしたが、そこまでしての変身だ。ぱっと見では分からず侵入を許してしまうのではないかという懸念があった。

 

 しかし、薫は「何を言ってんだ、コイツ」という顔で当夜を見てため息を吐いた。

「たぶんあいつは俺が帰ってくるまではビル周辺にはこないよ」

「何で?」

 当夜は不思議そうに尋ねるが、薫からしたら当たり前だ。

「俺が確実に留守なのに、ウロウロしてたら偽物ってバレるからな。せっかく化けてる意味がないだろ」

「あ、そっか」

 当夜が頭をかく。当夜と事情を知らない遊馬以外は全員心得ていたことだったので、当夜はがっくりと肩を落とした。

 

「お前…」

 弟の失態に兄が眉を寄せる。

「ちょっと見ない間に結構頭バカになってないか?使わないと緩むぞ」

 兄が半ば本気で心配していることに気がついて、当夜は撃沈した。

「まあまあ」

 と薫が取りなす。

「とにかく、大阪に着いたらさくっと作戦終わらせて、観光でもしよう。せっかく夏休みなんだし」

 と薫が言うと、秋人と当夜は嬉しそうに頷いた。

 

 巌と聖夜は少し難しい顔をしている。彼らは今から向かう久宝家の当主やその周辺を知っている。

「巌さん?」

 秋人が不思議そうに首を傾げた。巌はその顔をじっと見つめる。

「秋人くん、少しお父さんに似てきたな」

「え?そうですか?」

 秋人が大きな目をさらに大きく見開く。

 

「ああ、前まではお母さんによく似てるなと思っていたんだが。やはり男の子は成長すると父親にも似てくるもんだなあ」

 しみじみと巌が呟く。

「秋人の親父さんってどんな人だったんっすか?」

 と当夜が尋ねると、巌はうーんと少し唸ってから言った。


「そうだな、最強の剣士だったよ。恐ろしいほどに強かった」

 と。

巌「秋人くんのお父さんは春彦と言って、剣の使い手だったんだが、どこで習ったんだってくらい素晴らしい腕前だった」

当夜「ふむふむ」

巌「好きな食べ物はオムライスとハンバーグとエビフライで、プリンとショートケーキは奥さんといつも取り合いしてた」

薫「そこそんなに大事なの?」


次回更新は6/14(日)です。←曜日間違ってましたー

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― 新着の感想 ―
神崎家は神算鬼謀もするけど割とノリな時もあるから脳筋度合い上がってもしゃーなしw
たいへん楽しく拝読させていただいてます 本ストーリーも面白いのですが欄外の小話?も何気に面白くて毎回楽しみにしています 300話を越え物語も佳境に入り、目が離せません お身体に気をつけて完走まで頑張っ…
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