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3S探索者の代理人  作者: かんだ
第十五章 代理人、高校生と二度目の春を過ごす

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4. 賭け試合

 秋人が教室に入ると、一種異様な空気が流れていた。

 皆の視線をたどるとサッカー部在籍のクラスメイトである織田光男のすぐ隣に、先日美香にこっぴどく振られたサッカー部キャプテンの元宮が仁王立ちで立っていた。

「俺の言うことが聞けないっていうのか」

 と凄む相手に、織田は眉をハの字に下げて抗議している。

 

「だーかーらー、如月はサッカーはできないんですって!ドクターストップかかってるんですよ!」

 織田の言葉に秋人が首を傾げて、すぐ隣にいた智輝に目で尋ねた。

「いやな、5月末に球技大会あるじゃん。あれにお前をサッカーで出せって言ってきたんだよ、あの人」

「へえ」

 秋人が入ってきたことに気がついたのか、元宮は織田のそばを離れて秋人の方へ向かった。

 

「おい、お前、球技大会出ないっていうのは本当か?」

「…織田の言う通り医者から禁止されているんで」

 元宮の言葉を秋人は素直に肯定した。

 側から聞いているクラスメイトは、全員秋人の返事を聞いて「嘘じゃ無いけど詐欺じゃん」とは思っていたが。

 

「体育もろくに参加できないような軟弱者が、美香の彼氏ヅラするんじゃねーよ」

 と元宮が吐き捨てると、秋人の雰囲気が変わった。

 クラスメイトはその顔を知ってる。デステニーワールドで見た時と同じ顔だ。

 

「彼氏でもなんでもないのに『美香』って呼ばないでください」

 特段乱暴な言い草でもないのだが、元宮は再度ひやりとした空気を味わった。同じくその空気を感じたクラスでもスポーツ特待生の連中は、釘を飲んだような硬い顔をしている。

 秋人から出ている威圧が本能的に恐怖感を煽るのだ。

 

「2年生が生意気だな。こんな軟弱ヤローが彼氏とかありえないね」

「学年は関係ないでしょう。彼女が誰と付き合おうと彼女の自由だし、いちいち気持ち悪い」

 やりとりから察するに、工藤美香に粉かけている元宮が秋人を牽制しにきたのだな…とクラス全員が理解した。そして、元宮の運の悪さに同情した。よりによって因縁つける相手が悪すぎる。

 お前が相手にしているその男は3S探索者(シーカー)だぞと、わざわざ教えてやる親切な人間はいないが。

 

 

「お前、俺とサッカーで勝負しろ。勝った方が美香を手にいれられるってことにすればすっきりするだろう」

 元宮の言葉に秋人は不快そうに顔を顰めた。

「なんで、あんたが勝手にそんなこと決められるんだよ。そもそも、誰を恋人にするか決めるのは美香で、僕とあんたがいくら勝負したって関係ないだろ。勝った方が彼女を手にれるとか、ありえないこと言うなよ。彼女はトロフィーとか賞品じゃないんだから」

 秋人のしごく真っ当な答えに、しかし予想通りだったのか元宮は鼻で笑った。

 

「だったら負けた方が、二度と美香にまとまわりつかないってことにしたらいいじゃねーか」

 

 元宮は秋人が勝つとはこれっぽっちも考えていなかったし、秋人が負けて美香の前から消えれば、自分が選ばれると自負していた。彼女もちょっとこの軟弱男の顔に誤魔化されているだけだと内心思っていた。

 自分が美香を手に入れれば、あの生意気な女を好きに扱って、飽きたらお気に入りの連中皆で愉しんでやってもいいか…などと心の中で下衆な未来予想図を描いていた。


 しかし、彼の妄想は野球部のエースの言葉で遮られた。

「ええ、それってダサくないっすか。自分の得意フィールドで素人を打ち負かそうとか、なんつーか大人気ないっていうか、スポーツマンの風上にもおけないっていうかー」

 やたらと体格のいい男が小馬鹿にしたようにそんなことを言い出す。さらに追い討ちをかけるように、すらっとした体格のぼんやりした男も

「それなー。かっこ悪い提案だよね。元宮さんサッカー部のエースでしょ。そういうのありなん?俺陸上部だけど、素人とトラックで勝負しようとか恥ずかしくて言い出せないっすよ」

 と眠たそうに言う。さらに

「ああ、元宮さんってJリーグの2部の湘南ヘルスコープから声かかってるんですよねぇ。そんな勝負、プロのスカウトが聞いたらなんて言うかなぁ。ああ、大学の推薦の話もきてますよね?筑波東でしたっけ?有名なところですよね?」

 メガネのいかにもガリ勉っぽい生徒に自分の詳細な情報を抑えられていることに、元宮はヒヤリとした。

 

「確かに、俺の得意種目で勝負をするのは同義的に問題があるというのは理解できるが、うちのクラスで俺がサッカーに出ない選択肢はねえんだよ」

 と元宮は自分勝手な理屈をこねた。

「だが、そうだな。ハンデをやろう。お前がうちのチームから1ゴールでも取れたら、お前の勝ちにしてやる。どうだ?」

 彼らの言い分にいかにも配慮した形をとったが、それでもサッカー勝負は頑なに外さない。同部員の織田は呆れ顔だ。

 

「委員長、試合ってこの人のとこと当たるの?」

「ああ、なんか第一試合でばっちり」

 智輝の問いかけに、委員長の作原は肩をすくめた。この賭けを仕込むために、球技大会の運営委員の誰かを抱き込んだのだろう。

 

「織田、この人強いの?」

 不意に秋人が織田に向かって尋ねた。

「まあ、それなりに」

「僕とどっちが強い?」

「いや、それは比較しちゃならんだろ」

 もちろん織田は秋人が強いという意味で言ったが、元宮はそうは取らなかったので、ニヤニヤしていた。

 

「そっか…」

 秋人は少し考えた。勝負に勝ったら…と言われたなら、力を隠して行うのは難しいところだったが、1ゴールでいいのであればなんとかなりそうだ。そして、秋人がそう考えていることをクラス全員が理解した。


 

「いいでしょう。その勝負を受けましょう」

 秋人の言葉に元宮はニヤリと笑った。

「勝負の内容は、5月末の球技大会でうちのクラスとそちらのクラスの試合で、僕が1ゴールでもそちらに入れたら僕の勝ち、入れられなかったら元宮さんの勝ち。負けた方は、二度と美香に自分から関わらないという条件ですよね?」

「ああ、そうとも」

 元宮はもう勝ったつもりで、鷹揚な返事をした。

 しかし、秋人はチラリと委員長を見てそれから智輝を見る。

 

 二人はこくんと大きく頷いた。秋人は二人の了承を得て、さらに元宮に提案を加えた。

 

「あとで言った言わなかったという話になると厄介ですので、僕の保護者に契約魔法をかけてもらいますね」

「は?」

「ちなみに、僕の保護者はSランクの探索者(シーカー)で神崎薫といいます」

「はあ?」

 元宮の目が極限まで開かれた。

 

 

 元宮はそれでも自信があるのか、本日の放課後秋人と一緒に薫の事務所に向かう約束をして教室を後にした。

 

 彼が出て行った後、織田を中心にクラスメイトがぞろぞろと集まる。

「何よあれ? 今時ありえない!!」

 という女子の抗議に織田はタジタジである。

「俺だってあの人のことは好きじゃないよ!性格悪いし、自分勝手だし!ただ実力だけはあるんだよ。スポーツの世界ではたまにいるんだよ、そういう人」

 織田の抗議に女子の視線は冷たい。

 

「元々は別の人がキャプテンに指名されてたんだけど、アイツとそのシンパが嫌がらせして追い出したんだよ。うちの部は今それで最悪の雰囲気なんだ」

 織田がため息をつく。キャプテンに指名されていた先輩は怪我をさせられて、現在部活から外れた状態だ。顧問も怖がって当てにならない。

 

「なあ、如月。お前サッカー経験あったっけ?」

「ないよ」

「デスヨネー」

 織田ががっくりと肩を落とした。ちょっとくらい元宮がギャフンと言えばいいのにとさえ思っている。その空気を察したのか秋人はふむ…と顎に手を当ててしばし考える。

 

「でも、ボールをまっすぐ蹴ってゴールに入れればいいんでしょ?的が大きいからできると思うよ。それに、甲子園とか全国大会じゃないから探索者(シーカー)が出ても怒られないし」

 秋人は保護者ばりの悪い笑顔でにこりと微笑んだ。

 

「織田の迷惑にならないんなら、別に1ゴールとは言わないよ」

「あ、うん。そうだな10ゴールくらいしちゃってもいいかも」

「わかった。じゃあ、そうする」

 秋人が大きく頷いた。

 

「終わったな…」

 織田は密かに先輩の末路を悟った。

元宮「なあに、俺の美貌と実力があれば落とせない女なんていないさ」

織田「いや、悪いこと言わないから実力の方だけ自慢しておいた方がいいっすよ」

元宮「はあ?」

織田「秋人よりすっげーのがアイツの身内に一人いるんで」


今日の22時くらいに活動報告にブクマ500ありがとうございます記念でSSアップしまーすヽ(;▽;)ノ

ここんとこのPVにビビってます

ありがたやーありがたやー


って書いたんですが、R15にひっかかったと思って短編集としてあげなおしたら、別にひっかかったわけじゃなくて単なる注意書きだった模様。

まじですいません

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― 新着の感想 ―
私も一気読みしましたー\(^o^)/ お話の面白さもだけど、文章もきちんとしていて読みやすくストレス無しなのがとても良かったです。 ちょっとだけ気になった点があります。 未成年者との契約、親の同意は…
ランキングから見かけて一気読みです! おもしろかったです! 日常部分が丁寧に描写されている作品が好みなので、出会えてよかったです。 だいぶお話も進みこれから収束していくのでしょうが、楽しみにしておりま…
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