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3S探索者の代理人  作者: かんだ
第十章 代理人、師走を走る

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9. 名前

 三者面談を終えるといよいよ冬休みだった。秋人の高校最初の冬休みは新潟から始まった。


「いや、寒い、寒い、さむいーーーーーー」

 当夜が絶叫しているのも無理はない。既にかなりの積雪量を誇っている新潟で、むりやりダンジョンまでやってきたのだ。こんな雪の中運転したことなかった当夜はもうかなり疲れていた。スタッドレスタイヤでもかなり滑る。ぶっちゃけ身体強化をかけて走った方が楽なくらいである。


「すいません。もう少し温かい時期にしてもらえばよかった」

 金子が恐縮しているが秋人は大きく首を振った。

「早く弟さんを治してあげた方がいいよ」

「秋人君、ありがとう」

 金子は秋人の言葉に深く感謝した。

 最近、彼の弟の瘴気中毒症状がが進んでしまったのだ。このままだと命に係わるレベルである。なので、このイベントを一番冬休みの冒頭に突っ込んだ。


 ちなみにクラス全員と遊園地へ行く話は、彼女のクリスマスプレゼントを贈るためにバイトをしなくてはならない数人のメンバーの為に年内ではなく、年明けにスケジュールされた。

 轟学園は割とお金持ちの学生が多いのだが、クリスマスプレゼントに親の金を使うのは微妙という空気が流れており、彼女のいる男子生徒は毎年この時期はバイトに明け暮れるのである。むしろ、この時期バイトがない男子は肩身が狭いのである。


 ダンジョン入り口前には大型のバンが何台か止められている。秋人は深くフードを被りなおした。とうとう身長が170センチを超えてきたので、顔さえ見られなければ少年だと思われない。なので、あえてここは他の探索者(シーカー)を止めずに入ることにしたのだ。


 今回の目的は万能薬の獲得と、金子を探索者(シーカー)にしてできればレベルを10まで上げることである。

 いきなり金子も一緒に行くにはまあまあ難易度の高いダンジョンなのだが、3人いれば何とかなるだろうという目論見だった。最悪、無理そうなら最終的には秋人が一人で万能薬を取りに行くと言った。当初その作戦は薫はあまりいい顔はしなかったが、一番最難関の部分はおそらく一人しか入れないので、どのみち秋人一人でしかいけないと彼が言うので渋々頷いたのだ。



 入り口にはギルドの受付機械が設置されている。ここにギルドカードを通せば、このダンジョンに入った事が証明されるので、ダンジョンから帰ってこなかったりした時の手掛かりになるのだ。今回のように探索者(シーカー)ではないメンバーがいる場合は、それも申請する。


「せんせー、そういえば俺たちのパーティー名って何?」

 当夜が薫に尋ねる。彼は正式に秋人と薫のパーティーメンバーになったのだが、名前をまだ聞いていない。一応、パーティーを組む場合ギルドに登録するならば名前がいるのだ。今回確かマスコミにも薫が『如月秋人』のパーティーメンバーであることがばれたので、正式登録するのに問題がなくなったと聞いていた。


「ああ、名前な…」

 薫が遠い目をする。

「いや、なんかほら厨二っぽい名前が多いからさ、探索者(シーカー)のパーティー名って。ちょっと恥ずかしいというか、照れくさいというか…」

 薫の歯切れが悪い。再度当夜が尋ねようとすると、

「神崎家だよ」

 いい名前でしょと秋人が堂々と宣言した。

「え?」

 金子と当夜が思わず薫を見る。

「いや、秋人がそれがいいって言うから」

「本当に、先生は秋人に甘すぎません?」

「いや、別にいいじゃないか。分かりやすくて」

「いやいや、お前『神崎家』の神崎ですって名乗るのかよ」

 上機嫌の秋人の背後でコソコソと金子と当夜に突っ込まれて大ピンチの薫であった。


「だって、あんないい顔の秋人の意見をお前ら否定できる?できるの?」

「いや、でもそこは保護者が頑張ってくださいよ」

「そうだよ。大人が頑張れよ」

 逆切れする薫をさらに二人が詰め寄っていたが、前を歩いている秋人が止まった。

「気に入らない?」

 秋人が首を傾げる。その圧に当夜は折れた。あっさりと。

「いや、いい名前だなって思う」

 当夜は3S探索者(シーカー)への忖度を忘れない男だった。



 新潟第三ダンジョンはランクEと言われているが、それは秋人が見つけたルートを除けばの話である。その再調査も兼ねている。

「実質はたぶんBくらいだと思う」

 秋人が言うには、脇道のルートの方がかなり難易度が高く、モンスターも強いらしい。だが、現状発見されているルートとの間に結界が張られており、その所為で今のところ問題なく討伐できているということだ。

「その結界が壊れたらダンジョンブレイクが起きる可能性が高いってことか」

 薫が難しい顔をする。

「じゃあ、ここ1年くらいはチェックしてないんだな」

「うん、でも大丈夫だと思う。結界張ったの僕だから」

「え?」

「最初に行った時に結界がもうやばいことになってたから、僕が張りなおしたの。だから、危なかったら分かるよ」

「因みにいくつの時の話だ?」

 当夜が恐る恐る尋ねると、秋人は「うーん」と小さく唸ってから

「12歳かな」

 と答えた。薫の中で、赤城の罪状がまた一つ追加された。



 とりあえず脇道の前に金子の探索者(シーカー)になる依頼を果たすことにした。Eランクのダンジョンらしく階層は16で、オアシスは3階層にある。そこまで、金子を中心にしてテクテク進むのだ。

「ダンジョンの中は温かいんだな」

 外で着ていた厚めのダウンは脱いでいいよと言われた。それを薫が収納魔法にしまう。その様子も物珍しい。金子はきょろきょろ辺りを見渡した。ほの明るい洞窟の中は、ところどころキラキラと輝いていた。まるで雲母のようだった。

「綺麗だな」

「そうだね」

 金子は一瞬ため息をついた。この美しいダンジョンが弟を地獄に叩き落としたのだ。ぎゅっと拳を握る。


「兄ちゃんが必ず助けてやるからな」

 と狭い瘴気を満たした部屋にいる弟に告げてきた。一般人である金子は瘴気の中に入れないので、もう何年も弟に触れることができない。モニター越しの会話のみが兄弟に残された手段だった。

 弟は「危ないことはしないでほしい」と言っていた。その時の辛そうな顔を思い出すと胸が苦しくなる。


「大丈夫だよ」

 ぽんと薫が金子の肩を叩いた。金子はここへ来る前に薫に自分の事情をきちんと話をした。秋人が万能薬の事を知っていることから、おそらく自分の目的を薫が知っているだろうということは察していたのだが、そこは現在の雇用主であり今回のパーティーリーダーでもある薫に話さないという選択肢がなかった。

 薫は

「俺はともかく、秋人は3S探索者(シーカー)だ。大船にのった気持ちでいろ」

 とよくわからない論法で胸を叩いていた。

薫「パーティー名かぁ、難しいなぁ」

秋人「ギルドの一覧に載ってる名前、なんか長いね」

薫「●●の星とか、××の道とか、◇◇の光とか多いな…。俺には無理ー」

秋人「桜子さんとこはどうやって決めたんだろ?」

薫「…その時康子さんが住んでたマンションの名前だって」

秋人「あー…マンションの名前もなんかキラキラしたの多いもんね」

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