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3S探索者の代理人  作者: かんだ
第九章 代理人、パパラッチされる

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14. 会見

 17時から始まった会見には、薫が想定していたより多めの記者がやってきた。

 できればいなければいいなと思っていたテレビクルーや動画撮影班もいる。中継はしないらしいが、後でおもしろおかしく編集されるのだろう。


 金子からの連絡はない。何かトラブルでもあったのだろうか…心配だが本来一人で会見するつもりだったし、内容も打ち合わせは終わっているので、始めることにした。


 堂々と入り口から背筋を伸ばして歩いていく。

「それでは、よろしくお願いいたします。加藤法律事務所所長の神崎薫です」

 にこやかに笑顔で挨拶し、着席した。記者席から低いうめき声がもれた。あまりにも、薫の容姿が整っていることに対する驚きである。


「この度は、わざわざお越しくださってありがとうございます。今回、私の事実無根な記事が掲載されましたことについて、説明の場を設けさせていただきました」

 淡々と説明する薫に、記者の一人が早々に食って掛かった。

「事実無根とおしゃいますが、火のないところに煙は立たないといいますよね?」

「さあ、火のないところに煙を立てるのが好きな方々もいらっしゃるので、その辺に」

 天使のように麗しい笑顔で毒を吐く。神崎薫という男は法曹界ではそう言われている。それを今、記者たちも味わっていた。


「少年Aに対する性的な虐待の疑惑がありますが、弁護士としてそのような疑惑を持たれる時点で問題とは思いませんか?」

「思いません。そもそも前提が間違っているので」

「あなたの事務所は急に収支がよくなってますが、少年の財産を横領したのではないかという噂があるのですが」

「正当な報酬での会計です。そういった事象はありません。探索者(シーカー)ギルド日本支部へ問い合わせていただいても結構です」

「あなたは、以前からたびたび異性、同性を問わずトラブルを起こしてますね?」

「私が起こしているわけではありません。あちらから向かってくるのです。なんでしたら警察へ問い合わせてください。資料が山のようにございますよ」

「あなたの元婚約者があなたの殺害を計画したことになっておりますが、ずいぶんあなたの事でいやがらせを受けていたことはご存知ですか?」

 薫の瞳が一瞬だけ揺れた。そこを記者は見逃さない。

「それに関しては、私の不徳のいたすところです。彼女がそのような境遇にいたことに気が付かなかったのは、婚約者である私の落ち度でした」

「かなりの女性から誹謗中傷をうけていたようですが」

「そう…ですね。そのことについては事件の調査で把握しております」

「あなた、誰かを幸せにできる人間なんですか?」

「っ!」

「そんな人間が十代の少年を預かって育ててるっておかしいでしょう」

 女性記者のヒステリックな声が響く。薫が一瞬言葉に詰まったところを畳みかける。


「関係が本当はどうかなんて問題じゃないのでは?あなたという人格、人間性そのものが誰かと関係性を持つこと自体に問題があるんじゃないですか?」

「元所長である加藤哲也氏の死についても、当時は関連がなかったとされてますが、あなたのその綺麗な顔に検察も騙されたのでは?」

 薫が、反撃をしようと息を整えたその時、入り口から三人の人物がやってきた。



「え?」

 思わず声が漏れる。一人は金子達也。薫の弁護士。そしてもう一人は

「後藤さん」

 薫が驚いて目を見開いている姿を見て、探索者(シーカー)ギルドマスター後藤剛は初めて心の底からしてやったりと笑った。

 さらに、彼の背後から現れたのが

「栗原総理大臣」

 会場中が絶句している。もちろん薫も。



「遅くなりまして、申し訳ございません。少々調整に時間がかかったものですから」

 そりゃそうだろうと皆が思った。総理大臣の椅子とギルドマスターの椅子が用意される。大臣の背後には当然SPがついた。


「まずは、遅刻をお詫びいたします。わたくしが神崎薫の今回の件で弁護士を務めさせていただきます金子達也です」

 金子は今日はもう超ド級に金のかかった格好をしていた。

 イギリス製の生地でフルオーダーのピンストライプの高級スーツ、ネクタイはハイブランドのロゴがシグネチャーで入った最上級品、腕には金のロラックス、革靴はぴっかぴかで1足20万を超えるイギリスの老舗メーカージョングリーンの最高級品だった。


 半ば呆れて薫が金子を見ていると、記者の中の何人かはその出で立ちでそこに座っているのが誰か気が付いたらしい。

「うげ、負け知らずの金子じゃねえか」

「あの成金弁護士か」

 顔色が悪くなる人間が数人いた。

 彼らはこれでもかと金子にボコられた経験を持つ。金子の手腕で何人の編集者の首が名誉棄損の賠償金で飛んだかしれないのだ。

 金子はそんな彼らの様子を無視して自分の横へ目を向けた。


「一応紹介させていただきますね。今回の証人としておこしいただいた探索者(シーカー)ギルド日本支部ギルドマスターの後藤剛氏、そして皆さまよくご存知の日本国内閣総理大臣栗本博氏です」

 なんで?

 と記者席の全員の頭上に疑問符が浮かんでいる。当然だろう。なんで一介の弁護士のただの会見にこんな大物が証人としてきてるのか…さっぱり意味が分からない。

「…あ、秋人のやつ」

 薫が小さく呻いた。ここにこの二人を引っ張り出せる人物は、この世に一人しかいない。



「お二人がこの場におられることについて、説明させていただきます」

 金子の声は冷静だ。

「こちらの神崎薫弁護士は別の職業にもついておられます。記者さんの中にはご存知の方もおられると思いますが、彼は探索者(シーカー)として登録されています。ジョブは審議官。ランクはSです」

 ざわりと記者席の空気が揺れた。一同顔面蒼白である。薫が探索者(シーカー)であることまでは把握していても、Sランクであることまでは知らなかったのだろう。さきほど薫をつるし上げにかかった連中の顔色は青を通り越して紫だ。


「あの、神崎弁護士のジョブは審議官とのことですが、かなりのふぐうしょ…いえ、後衛職とお聞きしています。その、そのジョブでもSランクなどということはありえるのでしょうか?何か特別な事情でも?」

 中の一人が頑張って挙手しながら質問を投げかけた。ようは後藤が薫をえこひいきしたのではないかと言いたいのだろう。


 その質問を後藤が鼻で笑う。

「何とも勉強不足で嘆かわしいことだ。Aランクまではギルドの判定で決まるがSは別。レベル51に到達しないと与えられないランクです。レベルはギルドの認定ではなく、ダンジョンでいかに戦って敵を倒したかでしか上がらない、いわゆるダンジョンの恩恵です。彼は現在レベル58。日本で4番目に高いレベルの持ち主です」

 質問した記者が真っ赤になって着席した。後藤が心の底から馬鹿にしたのが分かったのだろう。


「まあ、そういう事だから、Sランク探索者(シーカー)である彼の健康と精神の安定を害するということは、国防にも大きく影響することなのでね、私が参ったわけだ。防衛大臣でもよかったんだけどね。彼、今アメリカとの合同演習で空母の上だからね。私が代わりに出てきたんだよ」

 にこりと栗原総理大臣が笑う。Sランクの探索者(シーカー)というのはそのくらい貴重なのだ。



「Sランクの探索者(シーカー)だからって犯罪を見過ごせとおっしゃるのですか?」

 さきほどヒステリックに叫んでいた女性記者が挙手と同時に叫ぶ。

「犯罪とおっしゃるが、何か証拠がありますか?たとえば、少年Aの証言とか?」

 すかさず金子が質問をいれる。

「それはありませんが、そういう犯罪に巻き込まれた…特に少年は口が重いものです」

 いかにも取材したように話す。

「取材されたのですか?」

 抜け目なく金子が尋ねる。

「ええ、まあ」

 記者が言葉を濁すも彼は逃がさない。


「おかしいですね。少年Aと接触した記者は全て男性です。それはどこの監視カメラにも映っていますし、目撃証人も多数おりますが」

「そ、それは…あのネットで…」

「通信履歴もこのように、資料として配布させていただきますね。少年Aはあまり友人がいないので通信記録が寂しいんですよ」

「おい、悪口言うな」

 金子に即座にダメ出しする薫に後藤と栗原が笑いを堪えて肩を揺らした。

ベテラン記者D「だから言わんこっちゃない」

ベテラン記者E「お前、どこまで掴んでた?」

ベテラン記者D「官邸に『あの人』が乗り込んだってとこまでだな」

ベテラン記者E「おー、だったらこの後もう一幕面白いのが見れるぞ」

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