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3S探索者の代理人  作者: かんだ
第八章 代理人、文化祭へ行く

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13. 文化祭 土曜日 18:30

「よお、起きろよ。変態」

 薫が男の顔面を蹴り上げる。

「ふぎゃ」という悲鳴と共に岩井を名乗った男は目を覚まし、自分がどういう状況下を把握して茫然とした。薫の手には杖が握られており、自分は魔法が使えない。絶体絶命のピンチだった。


「あんた本当に岩井教授か?」

「・・・・・・・・・・・」

審判の日(ジャッジメント)

 薫が呪文を唱えると、彼の手の中に緑色の雷が現れた。

「あなたは岩井教授ですか?」

「・・・・・・・・・・そうだ」

ギルティ

 男に向かって稲妻が走る。男はぎゃっと短く悲鳴を上げた。今日は頭が痛いので薫は外す気はない。

「あなたは岩井教授ですか?」

 薫が同じ口調で尋ねると男は悔しそうに

「ちがう」

 と答えた。命は惜しいらしい。

トゥルー


「本物はどこだ?」

「この近くの目黒第一ダンジョンのオアシスに閉じ込めている」

トゥルー


「生きているのか?」

「おそらくまだ生きてる」

トゥルー


「加藤哲也氏を拷問して死なせたか?」

「お、俺じゃない」

トゥルー


「殺した奴を知ってるか?」

「・・・・・・・・・・・・・」

「知ってるかって聞いてんだよ」

「ひっ」

 薫が男を蹴り上げると男は低く呻いた。

「し、知ってる!知ってるが言ったら殺される!!」

トゥルー


「名前は?」

「勘弁してくれ」

ギルティ

 雷が泣き言を言う男の頬を掠めた。

「名前は!?」

「アフターウィンター58号 通称アズ」

トゥルー

「お前らは何者だ?なぜ先生を殺した」

「・・・・・・頼むよ、殺される」

「教団ってのはなんだ?何が目的…」

 薫はハッとして振り返る。男の額に赤い光が灯り、一瞬の隙に氷の矢が男の額を貫いた。

「ちっ」

 薫が杖を構えて防御呪文を唱える。そこに立て続けに氷の矢が当たって跳ね返った。

 薫に対峙しているのは12、3歳くらいの少女だった。



「情けない」

 少女の口調は容赦なかった。

「こんな素人に後れをとるなんて、信徒の恥以外の何物でもない。生きる価値もない」

 少女は無表情に告げる。薫は戦慄した。こんなにも幼い子供が無感情に人間を殺せる教育を施されていることに寒気がする。


 少女はそれで男に興味を無くしたのか、薫に視線を向けた。美しい少女だった。そして、どこかで見たことのある顔だった。どこだ?と薫が考えてまじまじと少女を見ていたらからだろう。


「お前…」

 少女の唇から憎悪にまみれた声が飛び出す。

「お前は楽には殺さない。ゆっくりと甚振って、『殺してくれ』って縋るような目に合わせてやる」

 少女の顔が愉悦に歪んだ。

「まずはその綺麗な顔をぐちゃぐちゃにしてやろう」

 少女は唇の端を上げ、なかなかに凶悪な笑顔を向けた。しかし、薫はなぜかぽかんと口をあけて少女を見ている。


「なんだ?」

 いぶかし気に少女が眉を寄せた。

「いや、ごめん。こんな小さい女の子でも割とステレオタイプの変態セリフでくるんだなと」

 薫の言葉に少女の顔に初めて人間味のある困惑が広がった。

「へ、へんたいせりふ?」

 ショックを隠せない少女に向かって薫はなお告げる。


「いや、俺ねこの顔の所為で割とこういう変態に誘拐されたり、襲われたりしてるわけでね。まあ大概は返り討ちにして警察に届けてるんだけどさ。中には身内を警察に逮捕されて怒り心頭な変態の親玉みたいなのが出てくることもあってね。そういう連中はだいたい、俺を酷い目に合わせてやる、まずは顔からだって言うんだよね」

 心底うんざりした顔で薫が告げる。

「それってさ、俺がこの顔気に入ってるなら脅し文句になるかもだけど、俺この顔嫌いなんだよね」

 はーと薫はため息を付いた。

「こんな小さな女の子にまで言われるなんてショックだよ」

 少女はみるみる赤くなった。どうやら馬鹿にされたと思ったらしい。薫は全然本気なのだが。


「頭にくる男だな。楽には死なさんぞ」

 案外と芝居っけのある口調の相手に薫は首を傾げた。


「まあ、それはよく言われるが…なんか必要以上に俺嫌われてる?」

 薫がかわいらしく首を傾げた。すると、少女は酷く困惑した顔で押し黙る。なぜか頬が熱い。

「あ、結構この顔好き?」

 ふわりと薫が笑顔を作る。少女の顔が赤く染まった。


「理由を教えてくれたら、イイことしてあげてもいいよ」

 ぞっとするほど美しい淫靡な笑顔で薫が告げる。少女は無言で後退った。心の奥底の言い知れない感情を揺り動かされるような美しく恐ろしい笑みだった。感じたことない感情に少女は思わず恐怖した。薫の顔から目が離せない。ぶるぶると震えが走った。


「黙れ、黙れ、黙れ!貴様のような奴、誰がそんな…」

 少女が叫ぶと、薫は肩を竦めた。

「どうして俺が嫌い?」

「うるさい!!」

 少女は爆発するように両手から大量の氷を突出させ、薫にぶつけてきた。薫は全力で防御魔法を展開する。

「お前を殺して内臓を引きずり出して、秋人の前に投げ出してやる!」

 少女が喚きながら攻撃を仕掛ける。その言葉に先程までの妙な空気を纏っていた薫が真顔になった。

「秋人に関係あるのか? 君は何者だ?」


「私は、あの男の妹だ!!!」


 そう少女は叫ぶ。薫はぎょっとして彼女の顔を見た。どこかで見た顔だと何度も思っていたが、秋人に似ているのだ、この少女は。



 ちっと舌打ちをして少女が大きく後退する。

「お前の首、預けておく」

 少女は案外よく聞く捨て台詞を吐いて駆けだした。遠くで薫を呼ぶ声がする。どうやら味方らしい。


「やばい、俺秋人の妹に変な印象持たれたかも」

 薫が青くなって立ち尽くした。

薫「(そっかー、秋人に似てたんだー、俺イメージ的な記憶力ほんと弱いな)」

秋人「あ、薫いた!」

薫「(あー、まずったなー、秋人の自称妹にモロ色仕掛けしちゃったなー、滅多にしないんだけどなー、相手完全に敵だと思って油断してたなー、やばいなー、やばいなー)」

秋人「薫?」

当夜「なんか先生意識飛んでねえ?」

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