天狗と誘拐と女性と 17
柄池視点
それに対して柄池は思考の間を取ってから答えた。
「これでも、俺大学生ですし、何よりあったばかりの間柄です」
「そう……そうよね……ふふっ」
柄池の大学生と言うことを理解してほしいと話す。
氷村の反応は言葉とともに自身の思いを誤魔化すかのような笑いというところ。
諦めの表情が氷村に浮かんでいた。
「ただ、雪紗季さんは化者だったために付き合えなかったと話しましたね」
これで終わりでないと柄池は続けて話す。
氷村の表情はすぐさま疑問に変わる。
「俺、化者だから普通の人を好きになっちゃだめなんて、思ってもいません」
「え?」
氷村の否定したい部分があって、柄池は氷村の話の一部分を否定する。
驚きの声を氷村は出す。
「化者としての自分も含めて愛してくれる人は絶対いるはずですから」
「そう……だと良いのだけど」
柄池は氷村の為と氷村自身の話について語る。
対して氷村はそれであればと言葉を返した。
「だから良いですか? 俺はまだ、雪紗季さんの恋人ではないです。そこは分かってくださいね」
その否定する話を念入りにと柄池は話した。
柄池はまだ好きになれない、だが、氷村が悲しまないようにはするべきだとも考えていた。
「そこは忘れないで、身を任せてください」
「あ……それって……」
氷村の手に向けて柄池の手を伸ばして、身を任せてと話す。
その後の氷村の言葉は疑問であったが、期待の色も染まっていた。
柄池の手に冷たさが氷村の手を通じて伝わる。
それでもと氷村をこちらへ寄せる。
「俺は雪紗季さんのことを好きになることはできます」
言葉とともに柄池は氷村を抱き寄せる。
氷村が他の人を好きになってもいいと鎖を解くために。
「だから、この様に一瞬だけでも恋人の様になることも」
柄池は少しの間だけと断りを入れて恋人になると話した。
同時に氷村の背に手を回して上半身を覆う。
氷村の手以上の冷たさが柄池の体に伝わる。
(雪紗季さん、きっと寂しかったんだ……)
柄池は心の中で呟く。
どことなくこの冷たさが寂しさと関わりがある様な気がしてならなかった。
「一瞬だけ、一瞬だけですからね……」
「はい……」
柄池は再度断りを入れて、氷村は了承の言葉を出す。
氷村の、いや雪紗季の身は氷の塊であった、だがそれでも少しでも離すそぶりは見せてはいけなかった。
そうすれば、雪紗季は愛してくれないと思ってしまう。
それだけは避けたかった。
雪紗季は柄池の方に手を置いて、しばらくは両者無言でいた。
「では、これで雪紗季さんの恋人はここまでです」
「あ、ああ……」
終わりの時間を柄池は告げると、残念に染まった声が氷村から出る。
氷村が恋人であった時間は終わりである。
あくまでその姿でも愛してくれる人間がいると言うことの証明だけの行動だ。
「ここからはもう、ただの知り合いですよ」
「そうだったわね……」
静かに終わりだと言うことを柄池は再度伝え、氷村はそうだったと語った。
柄池は氷村から手を離して、氷村は名残惜しそうに柄池の胸から手を離す。
「男の人の胸ってこんなにもあったかいのね」
「そうですよ、あったかいものです」
胸の暖かさを氷村は語ると、柄池は優しく言葉で肯定した。
柄池が冷えた手を握って少しでも温度を上げようとすると、氷村は柄池の手に向けて手を伸ばして柄池の両手を柄池の背に運ぶ。
「男性に抱かれたのもこれが初めてなのよ」
「……? そうですか……」
初めて抱かれたとも笑顔で氷村は語り、柄池は疑問に染まる声で答える。
先ほどの言葉で初めてだと言う意味は匂わせていて、それは納得はいく。
疑問に思ったのは氷村が柄池の手を握っていることだ。
「それとね、私のやりたいこと、まだあるの」
「あの? これってどう言う……?」
疑問に答えず氷村はやりたいことがあると話し柄池の手を離した。
疑問の声を出す柄池。
いつのまにか柄池の手は両手首を密着させ、氷で固定された状態で後ろに回されていた。
今の柄池は両手が使えなかった。
「ごめんね柄池君。自由にはさせてはいけなくて」
謝りの声とともに氷村は自由にさせないと話す。
やりたいことは分からないが、少なくともここから逃がすつもりはないことは分かる。
「もっともっといいことしてみたいの」
「な、なんで……そこまで……」
近寄りながらの氷村の声に柄池は何故と問いかける。
そう言いつつ柄池が下がると、氷村は柄池の足めがけて飛びかかる。
柄池はバランスを崩した上、足首も手についているものと同じ氷が覆われる。
「あと、さっきのお礼だけどね」
「それよりも、後ろのこれを……」
床に手と膝をつけて這い寄りながら氷村は語り、柄池は後ろの枷のようなものについて提案を出す。
柄池は横になって足も動けずの状態だ。
こっちの話を聞く状態ではなかったが、もしかしたらの気持ちで柄池は話を持ちかけたかった。
「この行為は、柄池君が抱いても抱かなくても、やるつもりだったから」
氷村はこれからやることについて語る。
この氷村の声は妙に熱を帯びていて、漏れた興奮が声に出ているようであった。
「あの時抱いたことを責めないでね」
「待ってください! 早すぎると思うんです、やろうとしていることは」
抱いたことは責めないでほしいも続けて氷村は話す。
柄池の制止の提案は聞かずに氷村は柄池に近づいた。
今では氷村は横になった柄池と向かい合った形で柄池の上に位置している。
「私の愛を受け入れて……お願い……」
柄池の上の服に手をかけて氷村は一方的な願いを語る。
「ダメです! こんな事は!」
動ける部分を最大動かして暴れつつ、柄池はやめてくれと語りかけた。




