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天狗と誘拐と女性と 10.5

柄池視点

「ふーん……」


 後ろに手を回して上半身を少し前のめりにし、白河は呟く。


「話変わるけど、天狗って種族はね。子供が出来ると恩恵を授かることもできるの」


「え? ああ。勢力としても大きいですからね。子供できやすいシステムがあってもおかしくはないか」


 白河は天狗のシステムについて語り始め、柄池は戸惑いに染まった言葉でシステムのことで話した。

 その言葉と共に白河はこちらに詰め寄ってくる。

 この空間は以前にも触れたことがある、遠くないかつての時に。


「それとね、こういう長く研究された種族って女性の方で出来た子供の性別も産み分け出来たりするのよ、すごいでしょ?」


「人間には無理だけど、そんな事も出来るんですか……」


 白河は更にと産み分けについても語り、驚きと戸惑いの言葉を出した。

 おそらく柄池自身の顔も戸惑いは隠せてないだろう。

 戸惑いだけではダメだと気持ちもあった、それでもどう言葉を返せばいいか柄池には思いつかなかった。


「ねえ、柄池君」


 白河の呼ぶ声。

 その後すぐさま、白河は柄池の首の後ろに手を伸ばして自らの方へ柄池を引っ張る。


「え?!」


 突然の行動に対応できず、声と共に柄池は成すがままになる。

 今の状況はお互い向かい合ったまま密着。

 更に白河の両の手は柄池の後ろに絡まっていて、白河の片足も柄池の足に絡まってもいた。


「私で試してみない? 産み分け出来るかを」


 艶のある白河の誘いの言葉。

 ついでと白河は自身の胸を柄池に押し付け、自身の腰も同様に押し付けた。


「そ、それって、どうやって?」


「この状況で、どうやってを聞く?」


 柄池の問いの言葉にこの状況でと白河は返す。

 白河はおまけと言わんばかりに腰を柄池に密着させたまま緩やかに擦り付ける。

 白河の吐息も熱を帯びていた。


「それって、えっと……まさか……」


「そういう事よ。そのため部屋に二人だけだから」


 柄池の再度の問いに部屋に二人という状況を理由として白河は説明する。

 誘いの言葉から予想出来ていたが、どうすればという戸惑いから身動きが出来ないでいた。


「大丈夫、私、あなたの言葉を聞いて、問題なく出来るってわかったし、それに……あなたとのこれからの生活をずっとしたいとも思っているし」


 白河の口から今後の事が呟かれる。

 ここまでの言葉を聞くと、どうも一瞬の気の迷いとは違うようだ。

 そして白河は目を細めて、言葉を紡ごうとする。

 柄池の胸は気持ちに関わらず高鳴らざるを得なかった。


「私とあなたの子供……作りたいから……」


 白河は夫婦としての提案をそっと紡ぐ。

 白河は本気だ。

 このまま何もしなければ、きっとあんな事に。

 白河の唇が距離を詰めていく。

 このまま何もしなければ


「ちょっと待ってください」


 柄池の制止の言葉。

 白河も唇の距離を一旦離す。


「……これでも、まだ仕事とかしてないんで、俺は。この退魔師同盟もサークル活動の一環なんです」


 柄池は今の自らの状況を話す。

 仕事もしてない大学生には家庭を持つのは早すぎるという考えを。

 それでもまだ、柄池の胸は高鳴ってもいた。


「だから、今の状況で子供が出来ても困るし……いきなり迫られても、判断に困るんですよ」


 そして、柄池はこの状況で困っている気持ちを話した。

 正直言えば、気持ちの整理が出来てない。

 状況に流されたほうがよかったのか、それとも今の状況でいいのか。

 高鳴る胸は判断の正否をおかしくしていた。


「……そっか」


 白河の理解の言葉。

 それと共に手足の絡みを解いて、距離を置く。


「いきなりの話でごめんなさい。まだ大学生には早かったかな」


 笑顔に切り替えて、白河は謝りの言葉を出す。

 柄池の意思を汲み取ってくれたと言えよう。


「でも、これでも私、本気で迫ったわけだから。そこは理解してほしいな」


「あ、はい……」


 白河は補足として言葉を出して、柄池は理解したと一言を出す。

 白河の気持ちを伝える言葉に柄池はどう伝えればいいか分からなかった。


「あと、このこと聞かれたら、仕事の話をしてたって言えば女性陣は何も聞かなくなると思うから、それで誤魔化せるはずよ」


 白河は誤魔化し方についても語る。

 他の男性でも仕事のことでと言えば誤魔化せそうではあった。

 この事は口外してもいい影響はないと考えて、誤魔化した方がいいと考える。


「用はこれだけだからから、もう戻っていいわよ」


「分かりました……それでは……」


 白河の戻っていいとの言葉に柄池は了解の言葉と共に部屋を出る。

 途中、移動の最中で思考にふけっていた。


(八雲さんの忠告は本当に刺さったな、今回も)


 柄池は八雲の忠告に心の中で感謝をしていた。

 八雲の忠告あっての抵抗であった可能性もあったので、忠告がなかったら、と考えたくもなる。


「戻ろう……兎に角……」


 柄池は兎に角戻った方がいいと言葉でも行動の後押しをする。

 不用意にあの時のことを考えてもろくなことにはならないと考えて、柄池は部屋への通路を歩いていく。

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