貴族の定義と娯楽について
●焦点:日本が思う「貴族」と、実際の貴族は少し違うのかもしれません。
◆貴族とは何か?
こと日本においては、貴族という言葉は主にファンタジー――フィクションくらいにしか見られない、とても馴染みのないものです。貴族と聞いて漠然に「特定の地域を統べる王様のようなもの?」と考えるのもいいですが(あながち間違いでもないので)、それだとリアリティの演出に難が出る可能性もありますので、軽く現実の貴族を見てみましょう。
『定義』=貴族とは、国王に下賜され所有する領域を経済基盤として、他所からの侵攻から領域を守る軍事的価値を持つと共に、高貴な血統により国家の政治において強い特権を持つ身分を言う。
小難しい言葉を並び立てて混乱させる下手な専門家のようなので、かいつまんでみますと、
->高貴な血を持つことで、国家運営の一端を担うことを義務付けられた、平民と明確に区別された身分を指す。
極論、貴族は平民にとって化け物なわけですね。別の生き物――神の代弁者たる王にも連なる血筋にあるのですから、当然といえば当然でしょう。
◆実際のところ、彼らは普段、どんな生活をしていたのか?
貴族といえば、経済力を示す意味で成金趣味をひけらかす、肥え太った豚みたいなイメージがありそうですが、実際、中世ヨーロッパにおいて初期の貴族が優雅に暮らすことは少なかったといいます。貴族は金持ちである前に城主です。彼らの仕事は領地を守り、ときに敵の領地を侵攻する指揮官としてその手腕を振るうことであり、経済の発展はその結果として後からついてくるものでしかありません。基本的な生活は質素ですが、当然、彼らは贅沢のために仕事を頑張ります。本当に「貴族」然とした生活をしていたのは、ごく一握りの貴族だけでした。
もちろん時代が変わるにつれて、貴族の生活水準は上がっていきます。産業革命前後のヨーロッパ貴族などが、我々の思う貴族に最も近いのではないでしょうか。
経済領地運営、戦争における軍隊指揮が彼らの仕事なのは上記の通りです。ですが、娯楽として、彼らは一体なにをしていたのでしょう。
->狩猟
狩猟に野蛮なイメージがあるのは承知の上ですが、この趣味がメジャーだった理由はいくつかあって、
①乗馬や弓など、武具の訓練になる。
軍隊指揮をする以上、一定の技量は貴族の嗜みとして、なにより貴族の名誉を保つ意味でも必要なことでした。
②ごちそうになる。
貴族が金持ちとは限らない(時代によっても違う)、というのはすでに言いましたが、それはつまり『できるだけ節約したい』とも言えるということです。獲物の皮を剥いで血抜きまでしていた古典的な貴族と違って、特に近世あたりの貴族は家に持ち帰って料理人にやらせていたといいます。
一石で二鳥三鳥にもなるので、彼らは自然と狩猟林を保護するようになります。領民はその領域に出入りできないため、「良い狩猟場は貴族の領域」という認識が広まっていくわけですね。
->野試合
中世後期では騎士道に則った華やかな試合も見られますが、初期に見られる野試合は意外と野蛮で、できるだけ殺さないように戦った上で、勝てば相手の武具をぶんどれる賭け試合のようなものでした。
武具をぶんどれるということは実益もあるということなので、積極的にやっていた者もいたそうです。
ですが、時が経つにつれて武具の略奪をする貴族は少なくなり、かわりに、勝つことで得られる名誉や周囲からの賞賛が戦利品となっていきました。
▲妻や娘は?
特に産業革命前後では華やかにも思える貴族の生活ですが、領主や長男と比べて、妻や娘は毎日変わり映えしない生活を強いられます。チェスなど、最低限の娯楽はあったものの、それだけでした。だからこそ娘が芸術面に強いことが多く、また、吟遊詩人や旅芸人は歓迎されていたのです。
自分でも少々曖昧な気がしたので、家族内の息子や娘の役割、生活など、また詳しく書くかもしれません。