三百十話「VS『無敵』能力2」
「『無敵』能力? そんなのハッタリだろうがよ!」
彰はさらにナイフを生成して投擲。
「分からないのか、無駄だということが」
しかしステニーが能力を発動するとナイフは空中で弾かれて届かない。
「くそっ……チマチマ遠くからやっても埒が明かねえか」
彰はチンピラAを倒したときから生成しっぱなしだった右手の剣とは別に空中に二本の剣を生成。
そのままステニーとの距離を詰めての三本の剣による同時攻撃。これでステニーの防御を突破する算段だったが。
「ふんっ」
「なっ……!」
ステニーが能力を使うと空中の剣は彰の制御を離れあらぬ方向に飛んでいき、手に持っていた剣にも思いもよらぬ抵抗感を感じ、腕力でどうにか抗おうとするも叶わず、剣が弾き飛ばされてしまう。
攻撃が全て防がれた格好だ。
「今度はこちらの番だ!」
至近距離で攻撃が無効化された彰の隙を逃さず、ステニーは持っていた木刀を振り下ろそうとする。
彰は慌ててその軌道上に盾を生成。攻撃をなんとか防ぐが、次の瞬間盾も吹き飛ばされてしまう。
(っ……何なんだ、こいつの能力は……! 分からねえが、この至近距離なら……!)
ステニーは風の錬金術の領域内にいる。一番錬金術の力を発揮できる距離だ。
もう一度木刀を振り下ろそうとするステニーに対し、彰は防御を放棄。代わりにステニーの死角となる頭上にナイフを生成してそのまま落とす!
(これで……、……っ!?)
ステニーがそのナイフに気付いた様子は無かった。なのにナイフはそのままあらぬ方向に飛んでいく。
自動防御かよ……!
「ぐっ……!!」
攻撃で攻撃を潰す算段が崩れたため、そのまま彰は木刀の一撃をもらう。
木刀とはいえ手加減抜きに振り下ろされた一撃を食らい意識が飛びそうになる。しかしここで何も出来なければ続けて何度も振り下ろされて勝負は決着する。散り散りとなった思考をどうにかまとめて能力を発動。
圧縮金属化した金属球を生成、そのまま解除することで彰とステニーは両者ともに吹き飛ばされどうにか距離を取った。
「そういえばあいつら風に吹き飛ばされたとか言ってたか。生成物を消すときに爆風が生まれるようにも出来る……ってところか」
情報を知っていて立った姿勢だったステニーは吹き飛ばされるもきちんと受け身を取って
いる。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
対してうずくまったまま吹き飛ばされた彰は地面を転がったことでさらに追加ダメージを受けている。
無傷のステニーとボロボロの彰。
一度の攻防でつけられた差は――大きくないと彰は判断していた。
(今の攻防で分かった。やっぱりあいつの能力は『無敵』なんかじゃない)
確信を持って彰は思考する。
そもそも最初から自分の能力が『無敵』だと明かすステニーに違和感はあった。わざわざ情報を開示するなんて馬鹿のすることだ。
だから考えられる可能性は二つ。
自分の力に酔った馬鹿か、『無敵』だと誤認させようとしているか。
死角からの攻撃も防がれて本当に概念系能力、相手の攻撃を全て無効化にする『無敵』なのかと思いそうになったが……。
だったら最後、圧縮金属化による爆風、風による攻撃も防げてないとおかしい。
木刀を振り下ろした直後、攻撃した直後なら効くのか。それともナイフや剣による攻撃は効かないが風による攻撃は効くのか。
そういえば防御のために張った盾も弾き飛ばされたな。指定したものを弾き飛ばす能力……? いやだったとしたら攻撃にもそれを使えばいい。木刀を使っているのは違和感だ。
「もう少し考察がいるな……」
少しずつステニーの能力を紐解いていく彰。
「ほう。少しは骨があるじゃねえか」
まだ諦めていない彰の目を見て感心するステニー。
深まっていく二人の戦場に……水を差す者が現れる。
「ステニー様! 見つけました! 広場近くの建物の屋上にあのときの少女がいます!!」




