三百九話「VS『無敵』能力1」
街に来ている『反逆者』の集団を偵察することとなった彰と由菜。
「よし、この建物の上からなら広場を見れるかな。ちょっと捕まっておけよ、由菜」
「え、なに、ちょっと……!?」
彰は由菜をいきなりお姫様だっこすると、そのまま風の錬金術から『風靴』を発動。
空を歩き、二人は建物の屋上に不正侵入する。
「うん、良い眺めだ」
「いきなり過ぎるわよ! もうちょっと了解くらい取りなさい!」
「すまんすまん……っと」
彰がそっと由菜を降ろす。
「あっ……って、いやいや今はそんな場合じゃ無いって……封印するって決めたじゃない……」
「……?」
離れる瞬間由菜が何か残念そうな顔をするが、すぐに首を横に振る。当然彰は一連の流れの意味に気付かない。
そうして二人は広場を見下ろして。
「探すのに手間がかかるかと思ったけど……」
「ああ。こうも目立ってるとすぐだな。あいつらが『反逆者』だろう」
すぐに目的の集団を見つけた。
ガヴァの中央広場、露店なども開かれいつも賑わっているそのスペースの一角に不自然に開いた人流の穴。
それはその中心にいる柄の悪い男たちを避けたことで出来たものだった。
「格好もだし見覚えのある顔ばかりだな。レリィとメオさんを襲っていたやつらだ」
「よく覚えているわね」
「俺のことを探しに来た……いや探して無くても見つかったらまた襲われるだろうな……」
対峙した敵ゆえに覚えていたため、その一致から判断する。
「どうするの?」
「とりあえず接触してみる。由菜はここにいてくれ。気付かれないように登ったし、この屋上も使われてないみたいだから誰も人がいるなんて思わないだろう」
「ここからなら彰のことも見えるだろうし……うん、分かった」
無理を言って彰に付いてきた由菜だが、ここからは足手まといになると考えて了解した。
「よし、行ってくる」
そして彰は付けたままだった『風靴』を操り中央広場に飛び降りるのだった。
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「おうおういいもん売ってんじゃねえか」
「こ、こちらは『発火』で焼いた串焼きでして……」
「ああ、そうだよなあ! 能力が使えればいいもんも作れるだろうがよぉ!」
「そ、それは……」
露店の店員に対して当てつけの怒りをぶつける『反逆者』構成員。
無能力者に生まれたために幼い頃から後塵を拝してきた。
一生負け組のまま過ごすのか、そんな折にあった『反逆者』への誘い。
能力者に虐げられた者同士でつるんで力を持てば、もう理不尽に屈する必要は無い。
「これもらっていくぜ」
「は、はい。でしたら代金は……」
「ああん? 金を取ろうっていうのか」
「しょ、商品ですので」
「分かってねえな、こっちは天下の『反逆者』様だぞ!!」
苛ついた男が店員にこぶしを振るおうとした――そのとき。
「何言ってるんだ、おまえはただのチンピラAだろ」
「痛っ!!」
構成員の拳は空中に出来た緑色の金属の盾に止められる。
「しかし集団に属したことで自分まで強くなったと思うやつ、異世界にもちゃんといるんだな」
騒動に割って入った人物、高野彰は一人感心している。
「くそっ……なんだおまえは!!」
「さて、と」
彰はチンピラAの言動には取り合わず能力を発動。魔力により風を起こし金属化。右手の内に創造した剣をそのまま振りかぶる。
「っ……その能力はこの前の……ぐはっ!!」
そしてチンピラAを一刀の元に伏せたのだった。
「歯ごたえが無かったな……ってそうか。無能力者相手に能力使って戦うなんて機会これまで無かったからな」
これまで彰が能力を使って戦ってきたのはほとんど能力者ばかり。一度だけパワードスーツを着た無能力者、担任の畑谷と戦ったことはあるが、あれは能力者に対抗するためだけあって力があった。
異世界、能力が当たり前である世界だからこそ大っぴらに能力を使うことが出来る。
「まずは一人」
今のやつは集団から離れて一人だったし、見過ごすのも寝覚めが悪いので宣戦布告代わりにぶっ飛ばしたが……。
「っ……あいつはあのときの!」
「Bランク能力者!」
「へっ、馬鹿が。そっちからノコノコ現れやがって!」
仲間がやられたことで少し離れたところにいた『反逆者』の集団が彰に注目する。
「やっぱり俺のこと探してたのか。ならちょうどいい、とりあえず全員ボコすか」
敵の数は8名。この前襲ってきたときと同じ数だ。
レリィがいないため『強化』を受けることは出来ないが、逆に戦域に守らないといけない人がいないということ。
機動力を使って一人ずつ削っていけば良い。
人数は多くとも敵は無能力者、これまで能力者と渡り合ってきた彰にとって敵では無い。
唯一懸念があるとしたら。
「おまえら下がってろ」
「ステニー様……」
先ほどぶっ飛ばした一人と入れ替わり、この前の戦いで見た覚えの無いこの男のみだ。
「こいつは俺がやる。代わりにおまえらには……」
「……分かりました」
ステニーと呼ばれたその男は部下たちに何やら耳打ちした後に、彰の正面に立ち対峙する。
「魔力の気配……おまえ、能力者か」
「ああそうさ。意外か、『反逆者』に能力者がいるのは?」
「いや。その可能性についても聞いているさ」
メオさんに聞いていた通りか……厄介なことになったな。
「話に聞いていた通り緑色の金属で自由に作り操作する能力か。俺様の敵じゃあねえな」
彰の能力が共有されている。そうでなくても先ほど一人ぶっ飛ばした時点でバレていたが。
「へっ、口だったらいくらでもほざけるだろうが……よ!!」
彰は能力を発動。空中に数本のナイフを生成して、ステニーと呼ばれた男に飛ばす。
行儀が良くないがそもそもルールの存在しないストリートファイトだし、彰の根っこはヤンキー寄りだ。
「やんちゃ坊主だな」
いきなりの攻撃に、ステニーは少しも動じないままその身に宿した能力を発動。
すると緑のナイフは彰とステニーの間の空中で、見えない壁にぶち当たったかのように飛散して防がれた。
「ちっ……今のは……」
「はんっ!! おまえの攻撃なんて全然効かねえんだよぉ!! この『無敵』能力にはなぁ!!」
『風の錬金術』VS『無敵』のゴングが鳴る。




