三百八話「反逆者」
「『反逆者』……こんな街中で目立つマネするなんて珍しいですね」
道すがら、老婆からの忠告にメオが反応する。
「『反逆者』っていうのは察するにメオさんたちを襲ったあの荒くれ者たちの母体となる集団……ってことでいいんだよな?」
「そうじゃぞ。全く物騒なやつらじゃわい」
「ええと……暴力団みたいな人たちがいて、あの荒くれ者はその下っ端のチンピラだったってこと?」
「そういう認識で概ね間違ってはいないだろうが……能力階級社会の歪みによって生まれただろうことを考えると少しは同情もするな」
社会に虐げられたことに反抗するという一面もあるはずだ。
「彰さんの推察通りです。当初の『反逆者』は行き過ぎた能力優遇社会に対するカウンターだった面もありました。しかし……」
「暴走したのか」
「ええ。元々統率もあってなかったような組織でしたから。力を付けるにつれただ暴れたい者や集団内で思想が増幅し今の体制を倒すべきだという考えを持つ者もいるそうです」
「これまた厄介だな……ただその実態があの荒くれ者たちなら、対処には困らないか」
そう、能力者に対する反抗組織であるなら、能力者がいないということ。無能力者が集まったところで敵ではない。
「いえ。それがそうでもなく……」
しかしメオが否定する。
「能力者がいるのか?」
「下っ端ならいざ知らず、幹部級ともなると能力者も普通にいます」
「おいおい……能力者に対抗するための組織じゃなかったのかよ。本末転倒じゃねえか」
「歪みも色々な形がありますので。それに理念も形骸化していますし」
「……まあそれもそうか。ってことは今この街に現れたって『反逆者』は……」
「街の警備もしっかりしているここガヴァで大きな顔をしているということは……それだけの力があるということ。おそらく能力者もいるでしょうね」
全く面倒な話だ。だが俺たちとは関係ない。老婆の忠告通り関わらないようにまっすぐ宿に戻って――。
「でもどうしてその『反逆者』ってこの街に現れたんだろうね?」
「そんなの簡単じゃろう。彰を追ってじゃな」
「……俺?」
「そうですね……彰さんは『反逆者』を一度撃退しています。ああいう輩は面子を気にしますし、そうでなくても能力者を恨んでいる組織なので彰さんに報復するため探しに来た……十分考えられる線です」
レリィが適当なことを言っているかと思ったが、メオの説明にも納得できるところがある。
「これが噂のトラブルメーカーっぷりなのね……」
「いやいやいや! 俺は悪くねえだろうよ!」
事あるごとに科学技術研究会との戦いに巻き込まれた話を聞いていた由菜が、実際に目の当たりにして戦慄する。
「それでどうするんじゃ、彰? 戦うのか、戦うのか?」
「何でワクワクしてるんだよ……」
「しかし実際どうしましょうか。追いかけまわされたり、宿の場所を特定されても面倒ですが」
「……はぁ。そうですね」
彰は頭を搔きむしる。
「宿に戻る前にちょっと一人で偵察してみます。その間メオさんの能力で由菜とレリィを守ることは出来ますか?」
「……私の能力、ですか。説明した覚えはありませんが」
「ええ。ですが何となく当たりは付けてます。戦闘用の能力では無いですが、戦闘の回避は出来ますよね?」
「……レリィお嬢様一人が限界です。由菜さんまでは保証できません」
「じゃあ私は彰と一緒に行くよ」
由菜が提案する。
「はぁ!? いや、駄目だ、駄目だ! もしかしたら戦闘になるかもしれないんだぞ。なのに由菜も一緒だなんて」
「そうはいってもレリィさんの能力じゃ私まで守れないんでしょ。一人ぼっちにされた方が危ないじゃん」
「でもな……」
「大丈夫、大丈夫。彰なら私くらい守れるでしょ。それに――」
「それに?」
「……ああいや、やっぱなし」
由菜は何か言いかけて止める。
どうやら由菜の決意は固いようだ。何が由菜をそこまで駆り立てるんだろうか?
「……ああもう分かった、分かった。大体偵察だしな、戦闘になるって決まった話じゃない。大丈夫だろ、たぶん」
「よっしゃ!」
「それじゃ俺と由菜は老婆が警告した街の中央の方に向かいます。レリィとメオさんは宿に帰っておいてください」
「ぶぅ、由菜だけズルいぞ。面白そうじゃし妾も付いていきたかったのに」
「遊びじゃありませんよ。彰さん、レリィお嬢様は引き連れていくのでご心配なく」
こうして四人は二手に分かれるのだった。
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ちょうどそのころ、街の中央部にて。
「見つかったのか、そのBランクの能力の使い手は?」
「い、いえ! ですがあの場所から近くの街はここだけです! きっとやつらもこの街にいるはずです!」
偉そうな態度を取る男にペコペコと頭を下げる男。
『反逆者』の一団である。
「そうか……ならいいけどよぉ。ったく、無駄足だったらどうしてくれようか」
「も、申し訳ありません。やつは奇怪な能力の使い手。ステニー様が近くにて本当に僥倖でした」
「おぉ? そうかそうか。まぁ、この俺の『無敵』の能力に勝てるやつはいないからな……!」
ゴマすりに気を良くした男は、自らの能力を『無敵』と、そのように言うのだった。




