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異能力者がいる世界  作者: 雷田矛平
七章 ハロウィン、明かされる秘密
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百七十七話「ハロウィンパーティー企画」

 どうして親父と母さんが研究会と関わりを……?

 彰の頭を占めていたのはそれだった。

 くそっ、考えても無駄だとは分かっているが気になるな。

 直接聞こうにも着信拒否の方は解いてないみたいだし、公衆電話からかけても無視されたし……あのクソ親父もしかして電話を変えたんじゃねえか?

 こうなると藤一郎さんの調査を待つしかないが……もう本拠地は捜索し終わったって話だし、これ以上の進展を望むのは無理か……。

 俺から打てる手は……何も思いつかないし………………。




「彰さん……彰さん、聞いてますか?」

「ん……ああ、聞いていたぞ。円周率の123桁目は何かって話だったよな。えっと……3.1415」

「全く違います!! 何の話ですかそれ!!」

 さすがに誤魔化し方が雑すぎたか。


 そういえば今は昼休み……気になるとはいえ、あんま考え事に集中していては駄目だな。

「すまん、聞いてなかった。何の話だ?」

「最初からそう言えばいいですのに……ハロウィンの話ですよ、ハロウィン」

「ハロウィン?」

 そういえばもう10月も下旬……31日に行われるハロウィンも近いか。


「それでハロウィンがどうしたんだ?」

「本当に話聞いてないですね……ですから、このみんなでハロウィンパーティーを開きませんか、って話ですよ」

 みんなとはいつも通り昼食の席についている七人のことだろう。


「彰の怪我とか、テストで忙しくて、彩香さんと火野君の歓迎会とかしてないでしょ。それも含めてどうかな、って私が提案したの」

 由菜が説明する。


「歓迎会……」

「まあ、というのは名目でただ騒ぎたいだけでしょう?」

 彩香の鋭い指摘。

「そんなー私は彩香のことをー歓迎したいという気持ちでですねー」

「……ここまで心に響かない言葉は久しぶりよ」

 恵梨の棒読みの言葉に彩香が淡々と返す。


「休日はみんな部活の都合とかで合わないから、平日だけど三十一日の学校が終わってからにしようかなって思っているけど、彰はどう?」

「どうって言われても……」

 彰は自分の予定を思い出す。……といっても、帰宅部の高校生なんて平日に学校以外の予定が入ることはほとんどない。学級委員長関連で時々集合をかけられることもあるが、それもその日は無かったはずだ。


 だから残るは自分自身の問題だ。

 ……修行もある程度形になってきたとはいえ、まだ練度を高めないといけない。能力者ギルドの問題が差し迫っていることを考えれば、一日も無駄にするわけには行かないが……。

 って、本質を見失ってどうする。

 俺の目的はこの日常を守ること。そのために日常を犠牲にして修行など本末転倒だ。



「そうだな、俺も喜んで参加させてもらおう」

 まあ、一日くらいの遅れはどこかで取り戻せばいいだろう。


「良かった」

 ホッと息をつく由菜。元より彰が断るとはあまり考えてなかったが、それでも安心したのだろう。


「それじゃあみんなの参加の意思を確かめたことだし、色々決めていきましょうか」

 美佳が口を開く。

「まず、パーティー会場だけど……そうね、親がいない彰の家か、彩香さんの家が私はいいと思うけど……」

「あ、それだけどお母さんが乗り気でね。手伝ってくれるっていうから、私の家にしない?」

「へえ、優菜さんが?」

 由菜の母、優菜のことを思い浮かべる彰。

 あの完璧主婦が手伝ってくれるというのなら本当にありがたい。


「何だそこまで話しつけてたのね。思い付きで話し出したのだと思ってたけど」

「お母さんったら話聞いたら、テンションが上がっちゃって。当日は腕を振るってもてなすから楽しみにして、だって」

「お、旨い物が食えるんか?」

「大歓迎だぜ」

 食べ物の話ということで火野と仁志、飢えた男子高校生二人が食いつく。


「おまえら飯食ったばかりなのに、よくそこまで反応できるな……。まあ、そういうことなら、優菜さんの好意に甘えて由菜の家が会場ってことでいいだろう」

「そうね」

 美佳もうなずく。



「それじゃあ次はもっと大事な問題よ」

「大事な……?」

 由菜の顔が真剣だ。……そんな大事なことがあったか?


「まさか……」

 思い当たる物があったのかハッとなる美佳。

「ハロウィンパーティーといえば……そうよね」

 悟ったかのような彩香。

「まあ、避けては通れませんよね」

 うんうん、とうなずく恵梨。

「……あ、あれだよな、あれ!」

「そうだぜ、あれだぜ!」

 絶対気づいていないだろう火野と仁志。


 ふむ……何かあっただろうか?

 最後二人は置いておくにしても、他の三人は気づくような問題。……ハロウィンパーティーであることが関わるようだが……。


「何の問題だ?」

 考えても見当が付かなかった彰は素直に聞いた。


「ハロウィンパーティーと言えば……決まっているでしょう?」

「いや、分からないから聞いているんだが……」

「ふふふ……それはずばり――」


 びしっと彰を指さし決めポーズを取りながら由菜は言った。




「誰が何の仮装をするかっていうことよ!!!」











「はあ、疲れた」

 放課後、家に戻った彰は鞄を放り出して自室のベッドに寝転がる。


 あの後「別にそこまで言うことでも無いだろ」と冷めた反応を取る彰に対し、由菜が熱弁して「誰が何の仮装をするか……それは大事なことよ。普段と違ったイメージを纏うことこそがハロウィンパーティーの醍醐味。それゆえに、パーティー当日まで誰が何の仮装をするかは分からない方がいい。……けど、それだと発生する問題が一つ。そう、誰かと仮装が被るということよ。それは悲劇……そう、悲劇よ! それが冒険した仮装でも、無難ものを選んだ場合でも気まずい空気が発生することは必至。それを避けるために誰かがみんなの仮装を把握する必要があるのだけど……そこに問題があるの。その人だけがみんなの仮装の内容を知るということよ。その人だけパーティー当日のドキドキが無くなってしまう。実際に見てないから大丈夫だと思うかもしれないけど、やはり知らないに越したことは無いし、その役目を誰が負うか――――」「なら、誰か外部の人に管理してもらえばいいだろ」それを彰が一言で返して終了した。

 結果、美佳が友人に頼んでおくということだからその人に自分がする仮装を伝えれば良いらしい。被ってたら注意してくれるようだ。


「にしても、由菜らしくない熱弁だったな……」

 それをみんなもうなずきながら聞いていたし……俺がおかしいのか?

「そもそもパーティーの発案も由菜だったし……何か思い入れでもあるんだろうか」

「彰さーん」

 そのとき、階下から恵梨の呼ぶ声がした。


 彰が部屋から出て、リビングまで降りると恵梨が荷物を解いていた。

「……何か届いたのか?」

「はい。藤一郎さんに頼んでいたものが届きました」

「というと……新しい携帯電話か?」

「はい。彰さんのもありますよ」

 荷物から取り出した箱を見せてくる恵梨。


 きっかけはこの前の研究会について話のために、風野藤一郎がこの家にやってきたときだった。

 恵梨が持っている携帯は親名義で契約しているのだが、恵梨の両親はラティスの『記憶メモリー』で世間的にはいないことになっている。そのことに対する不都合のほとんどは同じく『記憶メモリー』で解消されているのだが、携帯電話の契約の更新についてまでは手が回ってなかったようだ。

 そのため、風野藤一郎の社長の座を生かした強権により新しい携帯電話に変えてもらおう、と恵梨は前々から計画していたのだ。


 そしてそれを風野藤一郎は二つ返事で承諾。

 総合企業であるアクイナスは携帯電話も取り扱っていたため、その自社商品からという条件付きだったが恵梨もそのつもりだったようだ。

 その際彰くんも携帯を変えないのかと聞かれ、親と連絡が付かず同じ状況に陥っていた彰も承諾した。

 いつも世話になっているから料金はタダでいいと言われたがそれは辞退した。そもそもこの前の襲撃で負傷した時の入院費用も出してもらったのにそこまで迷惑をかけるわけには行かない。入院している間は彰の生活費もかからなかったため、その分の余裕から今回の料金は支払うことにした。



「どうやら手続きの方は全部しておいてくれたみたいですね。SIMカードを入れ替えるだけで使えるようになっているみたいです」

「……それって、いいのか?」

 何か色々問題がありそうだが……まあ、こうやって手元に携帯電話が届いている時点でクリアされているのだろう。


「それにしても俺までスマートフォンじゃなくても良かったのに……」

「今どき珍しい若者ですね、彰さんは」

「ガラケーの方が頑丈だし……そもそも携帯なんて電話とメールが出来ればいいんだよ」

「何かもう、おじいさんみたいです」

「恵梨が執拗に進めるから仕方なくスマホの中でも頑丈な奴にしてやったが……何かそこまで固執する理由があったのか?」

「……そ、そんな理由ないですよ?」

 目が泳いでいる恵梨。

 そういえば藤一郎さんに携帯決めた後も、いろいろサービスについて聞いていたし……そこあたりと関係がありそうだな。とはいえ、問い詰めてるまでのことでも無いか。


「はあ……まあいい。今日の夕食当番は恵梨だったよな。由菜もやってきたら呼んでくれ」

「わ、分かりました」

 自分の分の携帯の入った箱を取ると、彰は階段を上がる。






 自室に入った彰はもう日課ともなった修行に移る。

「ふっ……ふっ……!」

 手始めに風の錬金術で作った剣で素振りを行う。


 能力のコントロールは前より格段に良くなっているな。

 手ごたえに満足する彰。

 これならパーティーの日、一日くらいは休んでも大丈夫か。だらけるわけではなく、息抜きだと考えれば自分の感情にも納得が付く。



「………………」

 素振りを続ける彰。

 それにしても仮装……か。

 ハロウィンと言えばメジャーなのは、ドラキュラ、オオカミ男、フランケンシュタインとかそういうところか。奇をてらう必要もないし、その中からどれかでいいだろう。

 けど、それだとあいつらとも被りそうなんだよな……。いや、心配ないか。今回被らないように対策は施しているんだから、俺が先に決めればあいつらが被らないように変えるように言われるだろう。それでいいか。


「……っと、今は修行中だな」

 集中しないといけないっていうのに……。


「ま、それでも気になるくらいには、俺もハロウィンパーティーを楽しみにしているってわけか」

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