百五十五話「激闘 能力VS科学2」
更新遅れてすいません。何があってもこの小説エタるつもりはないので、遅い時も気長に待ってもらえると助かります。
逃げる方針を捨て、畑谷に正面からぶつかる彰たち四人。
彰はパワードスーツの機動性を見て、やぶれかぶれになってこの選択をしたのではない。
この戦い俺たちに分がある。
先生が使う兵器は確かに火力は高い。……だが、基本的に遠距離戦用だ。離れるより密着していた方が避けやすい。
パワードスーツの守りを打ち破る方策は思いつかないが、戦っている内に弱点でも見つかるだろう、と彰は考えて。
「……行くぞ」
畑谷がスーツケースからゴテゴテした機械チックな剣を取り出したところで彰の目論見は消え去った。
「剣だと……!?」
ちっ、先生は近距離戦になることもお見通しだったってことか……! ……というか、今回の戦いずっと先生に上を行かれている。このままじゃまずい……!
自分の予想がことごとく外されて、彰は先生の手のひらの上にいることを痛感する。
くそっ、先生はどこまで見通しているんだ……!?
「火野と恵梨はサポートに回れ! 俺と彩香で挟撃する!」
それでも最善を尽くす彰。四人同時にかかってもスペースが無くなるだけ、と指示を出す。
「行くぞ、彩香!」
「分かったわ!」
先を走っていた彰が速度を落としながらルートを少し右に変更。その意図を掴んで取った彩香は進路を左に修正。
そして畑谷に対して二人は左右から斬りかかる。
「愚かな……」
その挟撃を受ける畑谷は足を止めている。逃げるつもりは無いようだ。
避ける構えも無しか……。
「舐めるな!」
彰はパワードスーツの一番装甲の薄い部分、頭部を突きで狙う。殺すつもりの攻撃だ。
やらなきゃやられる……なら、遠慮する必要はねえ!
敵が半年も教えを受けた担任だという事実を、アドレナリンが全開の彰は意識的に見ないようにしていた。……見てしまったら攻撃の手が緩むから。
今はこの四人で日常に戻ることだけを考えろ……!
彰の剣は吸い込まれるように畑谷の顔面に向かい。
その途中で剣先がすっぱりと消えた。
「…………!?」
短くなった自分の武器でそのまま突っ込むか考えて、やりすぎはカウンターの餌食になると彰は断念。
そして今の不思議現象について考える。
今のは……先生が剣を振るった……?
パワードスーツのアシストを受けた畑谷が剣を振るって俺の剣を防御した。……そういう風に見えた。
だが、その結果が俺の剣が途中から斬れるというものだった。……金属製の剣がまるでバターか何かのようにあっさりと斬られた。
これがパワードスーツのアシストを受けた力……? ……いや、そうじゃないな。あの剣に何か仕掛けがあるのか?
まあいい、だとしても俺の勝ちだ。
右の俺を防御したということは。
「はっ……!」
左の彩香に対して無防備をさらすということだから。
パワードスーツのアシストで早く動けるとはいえ、動かしているのは人間。そんなにすぐに頭を切り替えられるわけがない。
風の錬金術によって作られた彩香の剣は、魔力による動きと自分の動きをシンクロさせて、二重の力によって振り抜かれる。
ガキン!
振り抜いて、畑谷の腕で止まった。
「~~~~固っ!?」
全力の攻撃を止められた彩香。岩を打ったような感触に、反動で手が痺れる。
やっぱり腕だとか装甲の厚い部分には剣は通らないか……。
今の攻撃に対して、畑谷は全くガードだとかそういった動きをしていない。棒立ちのまま彩香に斬られていた。
衝撃を受け流す動作無しであれとか……。
カンッ! カンッ!
恵梨と火野が援護としてナイフを投げるが、パワードスーツには全く効いていない。
「生き残るためには考えろ」
「きゃっ……!」
畑谷は彩香を突き飛ばし、彰の方を向く。
「ちっ、来るか!」
振りかぶられた畑谷の剣に対して、彰は錬金術で作った新たな剣で受け止めようとして……。
ゾクッ……!
「……っ!!」
嫌な予感がした彰は剣をそのまま空中で固定。全力でバックステップ。
ザンッ!!
彰がさっきまでいた空間を畑谷の剣が通った。
「またか!?」
防御のために空中に固定していた剣が、二つの金属片になっている。畑谷の剣が断ち切ったのだ。
回避が後少しでも遅れていたら、その下にいた俺の体も真っ二つだったな。……危ねえ。
そして目の前を通った畑谷の剣を見て彰は気づいた。
剣が細かに振動している……高周波ブレードとかいうやつか。切れ味がヤバいのはそれが原因ってわけか。
「分析か。……のんきだな」
空振った剣をそのまま腰だめに構えて、今度は横薙ぎを見舞う畑谷。
「うおっ……!?」
それを彰は間一髪で回避。
「生き!」
袈裟斬り。
「残る!」
再度の横薙ぎ。
「ためには!」
逆袈裟斬り。
「くっ……!!」
その三連撃も何とか避わす彰。
攻撃に回る暇もねえ……!
いつもなら風の錬金術で剣の軌道上にでも盾を出して防いでいる間に逃げるなり反撃だったりに移れるのだが、今は相手の剣が厄介だ。何でも断ち切る剣に防御が効かない。
「考えろ!」
畑谷は唐竹割りの構え。
彰は後ろに下がって避けようとしたところで。
「ちっ……!?」
足を取られた。
こんなところにも罠が……!?
足下に張られた糸により転んで地面に尻餅をつく彰。
……まさか、先生の今までの攻撃はここに誘導するために……!?
畑谷の剣が目の前に迫る。
普通に防御したんじゃ、断ち切られる……! ……だが、どうすれば……!?
「腕!!」
「……っ!?」
直後。
畑谷の剣が降り下ろされる。
全てを断ち切る剣に彰は。
「ふぅ…………」
無事だった。
「危なかったわね」
「ああ、彩香の声が無ければ死んでたな。ありがと」
「ふふ、どういたしまして」
剣が降り下ろされる直前、「腕!!」と声を上げたのは彩香だった。彰はその意図を瞬時に把握。風の錬金術で畑谷の剣ではなく、それを振る腕の軌道上に障害物を作り、剣を途中で止めさせたのだ。
何でも断ち切る剣。……だとしても振らせなければいいんだよな。
その隙に離脱して、畑谷と距離を取った。
そこに彩香と火野と恵梨も集まったところだ。
「それで彰、どうするんや? とりあえずナイフを投げてみたけど、全く効いてなかったで」
「私も全力に能力ブーストをかけて振り抜いたけど、まるで岩を打っているような感覚だったわ」
彩香と火野が彰の頭脳を頼る。
「……たぶん、頭部前方だったら全力で攻撃できれば貫通できるかもしれない。装甲が薄いしな。彩香の攻撃は無視して、俺の攻撃を防いだってことは、そこが弱点であるってことだろう」
今の攻防で彰もパワードスーツの弱点は見抜いていた。
「だけど、問題はどうやってそこを狙うかだ。パワードスーツのアシストを受けた、あの何でも斬れる剣をかいくぐって仕掛けないといけないんだが…………」
目標は分かっているが、そこに到達するまでの計画が思いつかない。
時間があればいろいろ仕掛けでも考えられるのだが。
「時間は大事だぞ、時間は」
畑谷はそれを許すつもりはないようだ。畑谷がこっちに向かってきている。
彰は視界の端で畑谷を逃さず捉えてたが、自分に攻撃を防がれた後はあの兵器のつまったスーツケースをいじってた様子だった。……武装を変えるのかと思ったが、武器は変わらずあの高周波ブレードみたいだ。
「しょうがない! 散開しろ!」
時間を稼いで作戦を考える。
彰はその考えのもと、指示を出したが。
「私が先生を止めます!!」
「っ!? 恵梨!?」
恵梨が畑谷に向かって飛び出した。
何を考えて……というか無茶だ!!
「戻れ、恵梨!! おまえ一人でどうこうできる相手じゃ……」
「私を見くびらないでください! 私だって能力者です!」
恵梨が怒気を込めた声で彰に返す。
確かに恵梨だって能力者だけど……それでも……。
「ああ、もう!! 彩香と火野で遠距離から援護しろ!」
「彰はどうするの!?」
「俺も突っ込む! ……恵梨一人に任せられるか!」
彰は風の錬金術で剣を展開しながら恵梨の後を追う。
すでに恵梨は畑谷を捉えられる位置にいた。
くそ、間に合わない……!
彰は恵梨よりも出遅れているとはいえ、彰の方が恵梨より足は速い。しかし畑谷からも恵梨からも距離を詰めたため会敵が早く、彰が追いつくまでの時間は無かった。
「もう少し利口だと思ったのだが……」
畑谷が剣を降り下ろす体勢に入った。
対する恵梨は水筒のお茶を変換した剣で応戦。
「!? さっきの攻防を見てただろ!? その剣は全てを……」
「だから彰さんはいつまで私の保護者を気取っているんですかっ!!!!!!」
また怒られる彰。
……はあ!?
このタイミングで何キレてるんだよ、恵梨は!?
恵梨は夏休み最終日に自分を対等に見てくださいと言った。だから今、彰が一方的に下に見ていると思って怒っているんだろう。
だけど心配するのは当然だろ!? だってこのままじゃ死ぬんだぞ!?
迫る必断の剣。
恵梨にはさっき彰がしたように、腕を振る軌道上に障害物を置いて畑谷の動きを止めることはできない。
なぜなら恵梨の能力は水の錬金術。媒体となる水を魔力で生み出せないから。
恵梨がこの瞬間に使える能力は手に持つ一本の剣に干渉することのみ。
だが、それだけで十分だった。
「……?」
彰は気づいた。恵梨の動きがただ迎撃するものではないことに。
(恵梨の剣の軌道、微妙にずれて……)
上から降ってくる畑谷の剣に対し、恵梨は下からすくい上げる動き。
だが、その目標位置がどうも畑谷の剣に向かっていない。
(先生の腕を狙っている……?)
だが、それは無駄だと彩香が実証したではないか。全力で攻撃しても貫けない装甲だと。
それを指摘しようと彰が口を開きかけたとき。
飛んだ。
「……は?」
恵梨が振っている途中の剣から手を離した。その結果すっぽ抜けた剣が畑谷の腕に向かって飛ぶ。
投げたことで先生より早く攻撃が届く……けど、威力はその分落ちるぞ……?
さらにパワードスーツの装甲を貫くのが難しくなった。
が、恵梨の狙いはそもそもそんなものではなかった。
「解除!」
恵梨が言葉に従い、剣は途中で液体……お茶に戻る。
攻撃力0。
空中に浮かぶだけになったお茶。
それを畑谷の腕が通った瞬間、再度恵梨は叫んだ。
「水流捕縛!」
お茶を再度金属化させる。畑谷の腕をその中に巻き込みながら。
錬金術で作り出したものは魔力で自在に動かすことができる。それは逆に言うと固定もできるということ。
恵梨は畑谷の腕を取り込んだ金属をそのまま空中で固定した。
するとどうなるか。
「くっ……」
「先生の動きが止まった……!?」
剣を振り下ろす動きが何かに引っかかったように強引に止められる。何かは恵梨が作った青い金属。
つまり畑谷の腕は空中一点で固定されたのだ。
「彰さん、追撃を!!」
畑谷の動きが止まり腕も満足に使えないというまたとないチャンス。
鋭い声で指示を出すのは恵梨。だが、その顔はドヤ顔だ。
私だってこれくらいはできるんですよ……とでも言いたいのか?
反射的に言い返そうかと思ったが、お手柄なのは確かだ。
「……よくやった!」
それだけ言って彰は恵梨を追い越し、畑谷に向かう。
「うおおおおおおおおっっっっ!!!!」
狙うのは容赦なく頭部前面。
殺すつもりで彰は剣を繰り出した。




