第35話 忍の戦い、刹那VS麗奈!!!
せっちゃんとれいちゃんの忍者バトル勃発です!
ぶっちゃけ、忍術・忍法は思いつきが多いです(笑)
里を抜け出し、結婚の約束を忘れてしまった刹那を殺すためにヤンデレと化したくノ一麗奈は忍獣大蝦蟇を召喚して容赦なく襲いかかる。
「覚悟してください、刹那!!」
印を結んだ麗奈は体の中で気力と精神力を練り合わせて大きく息を吸う。
「火遁・竜炎弾の術!!」
そして、息を吐くようにすると、麗奈の口から竜が放つような巨大な火炎弾が放たれる。
これこそが戦国時代より忍者にのみ与えられた“忍力”を使って発動する秘伝の“忍法”である。
「忍法・心身強化の術!」
対する刹那も印を結ぶと、体から気力と精神力を練った忍力が溢れ出して衣のように纏い、素早い動きで火炎弾を回避する。
しかし、回避したその先には大蝦蟇の幸助が刀を持っていた。
『蝦蟇一文字斬り!』
見事な横一文字の凪払いに刹那の胴体が真っ二つになるかと思ったが、
「忍法・変わり身の術!」
刀が体に触れる直前に刹那が丸太となって、身代わりとなって真っ二つになった。そして刹那は幸助の背後にいた。
「とりゃあ!」
『ゲコォ!?』
回し蹴りを喰らわせて幸助を地面にたたき落とす。
「幸助、下がっていなさい!木遁・樹繰縛の術!」
麗奈が地面に手を置くと、地面がひび割れて地中から大きな樹木の根が何本も飛び出てそれが蛇のような動きを見せて一斉に襲い掛かって刹那を縛り上げる。
だが、刹那はとても落ち着いていて既に印を結んでいた。
「忍法・影分身の術!」
もはや忍者の代名詞とも言うべき究極の忍法である術者と同じ実体を持つ生み出す“影分身の術”で、刹那の周囲に四人の分身を生みだし、忍者刀で根を斬った。
「麗奈、今度はこっちのばんでござる!」
「「「「さあ、反撃でござるよ!!」」」」
本人と分身体が喋ると、五人で麗奈を囲むように跳んで手裏剣を構える。
「「「「「喰らうでござる!!」」」」」
五人は手裏剣を同時に投げるが、麗奈は忍者刀と苦無を構える。
「この程度の手裏剣で私に傷一つ付けることは不可能ですよ!」
「「「「「それはどうでござるかな?忍法・手裏剣大百花の術!」」」」」
不敵な笑みを浮かべた刹那は印を結ぶと投げた手裏剣が何十倍にも分身して数が百単位となった。
「なっ!?」
流石にこれでは忍者刀と苦無で防ぐことは出来ない。
「くっ……ならば!」
忍者刀を地面に突き刺し、印を結んで再び地面に触れる。
「土遁・土岩壁の術!!」
今度は地中から土と岩でできた頑丈な堅い壁が現れて飛んできたたくさんの手裏剣が全て壁に突き刺さった。
「おおっ!?麗奈、見事でござる!!」
決闘中にも関わらず見事な防御の忍法を使った麗奈を無邪気に賞賛する刹那。
「いつまでそんな余裕を見せていられますか!?幸助、連携遁術です!!」
『任せてくれ、姐さん!!』
麗奈は忍者刀を地面から抜いて高く跳び、同じく飛んできた幸助の上に乗り、二人は忍者刀と刀を同時に構え、忍力を刃に注いでそのまま空を切り裂く。
「『風遁・風刃剣!二重の舞!!』」
空を切り裂いた部分から鎌鼬となり、幾つもの真空の刃が生まれて、刹那の分身体を切り裂いた。
「ぬぉう!?拙者の分身体が!!やはり、“天才遁術使い”の麗奈は強いでござるな!」
「……あなたがそれを言いますか?」
「おろ?」
麗奈は刹那の言葉に不機嫌な表情を浮かべていた。
「修得が特に難しい影分身を始めとする“遁術以外”の高等忍術を会得しているあなたは里のみんなから“天才忍法使い”と言われていた……私とあなたは二人で揃ってこそ最高の忍だった……」
つまり、自然の力を使う遁術の扱いは麗奈が天才で、逆に遁術以外の忍法は刹那が天才と言う事……確かに二人揃えば互いを補い合えば最高の忍だ。
そして、麗奈は今にも泣きそうな悲しい表情を浮かべた。
「それなのに、どうして里を裏切ったのですか!?あなたは里を引っ張っていく未来の長候補だったのに……」
「だから何度も言っているでござるよ。拙者は自分の命を懸けてでもお仕えしたい“主”を見つけたいと……」
「どうして主を見つけたいのですか!?理由を答えてください!!」
麗奈にそう聞かれた刹那はスッと眼を閉じた。
「……わかったでござる。せっかくだから天音殿達も聞いて欲しいでござる」
傍観者であった俺達に聞いて欲しいと言い、千歳達に視線を向けると全員で頷いた。
「……わかった、刹那話してくれ」
「御意でござる」
刹那は忍者刀を背中の鞘に仕舞い、自分の思いを話す。
「拙者は今の忍の生き方に嫌気がさしたのでござる。現代社会での我ら忍の生き方は裏世界の者から依頼を受けて諜報、破壊活動、暗殺などをしてきたでござる。しかし、拙者はどこの誰かわからない悪人の為に自分の人生をかけて磨き上げたこの力を使いたくないでござる……」
忍者である前に一人の人間として刹那は自分の力を間違った使い方をしたくなかった。
その気持ちは俺達に通じる。少なくとも、俺の力は大切な人を守るための力だから刹那の思いは確かに同意できる。
「だから……正しき心を持ち、正しき道を行き、不屈の信念を持つ……そのようなお方を見つけて、そのお方に己の命を捧げて仕えたいのでござる!!」
刹那の思いに俺は感動を覚えた。己の命を捧げるなんて言い方は並大抵の覚悟では言えないことだ。子供っぽい性格だと思っていたがそれは訂正する。
一方、麗奈は拳を強く握りしめてフルフルと体を震わせていた。
「……それが、里を抜け出した理由ですか……?」
「そうでござる!」
「……わかりました、刹那。あなたの気持ちは私の心に伝わりました。ですが……」
麗奈は眼を細め、忍者刀の刃のように鋭い殺気を放った。
「麗奈は認めましたが、“神影流くノ一麗奈”としてあなたを認めるわけにはいきません。ですから、刹那。あなたが己を道を歩みたければ、私を倒しなさい!!」
自分の心を押し殺し、麗奈は神影流のくノ一の一人として戦う決意を見せるのだった。
「……倒すだけでいいのでござるか?なら、良かったでござる」
「何が良いのですか?」
そう聞かれた刹那は頬を赤く染め、頬を指でかき、照れながら答える。
「……拙者としては、好意を抱いている娘を殺す事なんて出来ないでござるからな〜」
決闘中にまさかの告白に殺気を出していた麗奈は顔を真っ赤にして慌てる。
「は……はぃっ!?な、何を言うのですか!?さっき、私との結婚の約束を忘れたと言っていたくせに……」
「確かに結婚の約束は拙者の記憶にはござらん。だが……拙者は、麗奈の事が大好きでござるよ」
可愛らしい満面の笑みで言うストレートな告白に麗奈の顔はますます真っ赤に染まっていく。
「ば、馬鹿!それを今、言いますか!?」
「可愛いでござるよ、麗奈〜」
「黙ってください!!」
端から見れば決闘ではなくイチャイチャしている不思議な光景に傍観者の俺達は呟いた。
「……何だこれ?」
「私達、来た意味があったのかな?」
「んなこと知らんわ」
「でも、良いものが見れた……」
「そうですね。刹那さんのあのストレートな告白は評価いたしますわ」
「……さっきまで横槍で抹殺しようとした時とは反応が違うな……」
全員が一言ずつ呟いていると刹那と麗奈の方も話が漸く終わり、決闘も決着を付けるようだ。
「刹那、私の最強忍術で決着をつけます。あなたも己の最強忍術で応戦してください」
「望むところでござる。さあ、いつでも来るでござるよ」
刹那は腕を組んで麗奈の発動する忍法を待った。
麗奈は遠慮なく高速で次々と形の異なる印を結んでいく。
「受けてみてください、刹那。これが全ての遁術を極めた技の集大成の奥義です!!」
体から膨大な量の忍力が溢れ出し、それが麗奈の放つ最後の奥義だと物語っていた。
「大いなる自然の力よ、我にその強大なる力を与えたまえ!!」
両手を強く叩くように合わせ、地面に置いて全ての忍力を流し込んだ。
「麗奈流遁術奥義!!夢幻百花・森羅万象陣!!!」
次の瞬間、地面に置いた麗奈の手から漢字や梵字などで描かれた魔法陣に似た巨大な陣が刹那の足元に布かれる。
すると、突然地震が起こり、ひび割れた地面から火や水が吹き上がる。
「なっ!?」
刹那が驚くのもつかの間で、地面から巨大な樹木の根っこが現れ、更に鋭い針の形をした岩が突き出た。
それはまるで神の怒りによって起こされた天変地異のようだった。
「遁術によって少しの間だけ自然の力を借りて対象を一網打尽にします……自然の力の前に平伏してください!!」
一斉に襲いかかる自然の力の猛攻に刹那は忍者刀の柄に手をかける。
「刹那流忍術――奥義」
眼を深く閉じた刹那の体から黒い漆黒の霧が溢れ出して周囲を“闇”に染め上げて全てのモノの姿を消した。
「くっ、これは……周りが見えないです!?」
麗奈の言うように本当に周囲が全く見えなくなり、俺達の視界は何もない暗い闇の中だった。
光を灯す地中から吹き出た火でさえもその闇に包まれて光を発していなかった。
「刹那、どこに消えたのですか!?」
麗奈は刹那の姿だけではなく気配すらも分からず、戸惑っていた。
そして、次の瞬間、光すらも完全に飲み込んでしまう闇の中に一筋の小さな光が輝いた。
「常闇之三日月」
バキィイン!!
金属がぶつかり合うような音が鳴り、全てを飲み込んでいた闇が一瞬で晴れ、月の淡い光が辺りを照らしてくれた。
そして、俺達の目に映ったのは刹那が既に麗奈を通り抜けて忍者刀を振り下ろしていた光景だった。
刹那は無言で忍者刀を鞘に仕舞い、キィンと鍔鳴りを起こすと、麗奈の体の表面から何かが弾け飛んだ。
「私の、鎖帷子が……」
弾け飛んだものの正体は麗奈が忍者装束の下に着込んでいた鎖で作られた帷子の鎖帷子だった。
忍者装束にも切れ込みが幾つもあり、あの一瞬でかなりの斬撃を受けたようだった。
「拙者がもう少し忍者刀に力を加えていたら、麗奈の体は今頃細切れだったでござるよ……」
何とも恐ろしい言葉を放つ刹那に俺は一瞬体が震えた。闇を作り出し、気配を完全に消してからの一瞬の斬撃……麗奈の敗北は既に決まっていた。敗北したとわかった麗奈はその場に座り込んだ。
「……刹那、その闇の力はいつ発現したのですか?その力は神影流の極意で、今のところ長しか使えないはずの“常闇の忍力”を……」
常闇の忍力。
それが刹那が作り出した闇の元の名前だった。
一方、刹那は困ったような表情を浮かべて話した。
「それが……理由が分からないでござる。拙者が十五歳になり、忍獣石を頂いたが忍獣の召喚に失敗してしまったその夜に突然出て来たのでござるよ」
「刹那が忍獣召喚に失敗したその夜に……?」
麗奈は口を顎に添えて何かを考える動作をした。忍獣召喚に失敗したその夜にその常闇の忍力が発現した……。
これは明らかに偶然とは思えない。忍獣召喚と常闇の忍力が何か関係していると思わずにはいられなかった。
「まあ、それは取りあえず置いておくでござる。麗奈、この決闘は拙者の勝ちで良いでござるな?」
「……ああ。それと、約束は約束だ。里はもうお前を追わない……」
「その事でござるが、一つ追加をしても良いでござるか?」
「な、何を追加すると言うのですか!?」
「麗奈……もしお主が良ければ拙者と一緒に――」
刹那が麗奈に向けて手を伸ばして言いかけたその時。
「その手を取ってはならぬ、麗奈よ!!」
厳格なとても低い声が響き、全員の視線がそこに集まる。
「心配になって来てみれば……最悪の状況になっておったわい」
そこにいたのは忍者装束を身に纏った老人だった。
「お、おじいさま!?」
「お、長!?」
麗奈と刹那は老人の忍者――神影流忍者の長の登場に驚愕していた。
「下がれ、麗奈。代わりにわしが、裏切り者の抜け忍に引導をくれてやるわ!」
長は忍者刀を抜き、逆手に構える。
やっと決着したと思った決闘が、そこにいる空気を全く読まない爺さんの登場で何やら危ない方向に傾いているらしい。
俺はすくに顕現陣から蓮煌を抜き、ずっと頭の上で眠っていた白蓮を起こすことにする。
.
まさかの神影流の長登場です。
天音達はせっちゃんを守るために奮闘しますが、長の実力は想像以上に高く……とにかくピンチになります。
せっちゃんの話が終わったら、この作品のキャラクタープロフィールとアーティファクト・ギアの紹介を投稿しようと思います
ちなみに形式は最近ハマったジャンプSQの『貧乏神が!』のプロフィールを元にしています。
この小説の初期に書いたキャラ設定を削除して改めて投稿します。
実はもう既に八割は書き終えました(笑)
天音達のプロフィール、楽しみにしてくださいね。




