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21.ジョブチェンジの勧め


 勇者くんは今日もまだ起きない……。魔力は少し安定してきた……が、まだ数日かかるだろう。


 クラウスくんは勇者くんをしばらく見舞った後、領主邸の庭に移動して再び特訓を始めるとの事だ。今日もお願いされたしちゃんと教えねば。


 今日も俺が氷の的を出して、クラウスくんが風の刃を繰り出している。が、的はびくともしない。


 これはあの策を取るしかないな!


『クラウスくーん、クラウスくんってさー剣も得意なんだよね?』


「そうだが……それがどうしたんだ?」


『じゃあさー……思い切ってジョブチェンジしない?』


「は?……何に?」


『魔法剣士だよー!ふひひ……』


「……何か含みがある気がするんだが……」

 と胡乱な目である。


『てへ……気付いちゃった?……一応あるスキルの習得実用を目的としてるんだけどねー』


「説明してくれ」


『ほいよ!……クラウスくんには敵からの魔力略奪スキルを習得してもらおうと思いますっ!』


「魔力略奪?」


『そうよ!そうすれば詠唱無くたって魔術の発動が可能なのよん……ふひひ良いでしょ?』


「そんな事が可能なのか?」


『イエース、イエース!……だだし……』


「……ただし?」

 とクラウスくんはゴクリと喉を鳴らす。


『ちょっとした暗黒スキルなんだよねー』


「……そんなものを習得しろと?」

 とその眼光は鋭い。ひいぃ。


『でもだって、障壁に護られずに勇者くんと一緒に戦いたいんでしょ?』

 とクラウスくんのツボを突いてみる。


「っ……それは……」

 と迷いが見える。


『暗黒魔法剣士ならー勇者くんとー肩を並べてー戦えるのになぁーん』

 と歌う様に囁く。


 クラウスくんはしばらく黙って考え込んでしまった。


「…………分かった……ジョブチェンジしてやる」

 と腹を据えた様だ。むふふ。







 それから、クラウスくんに色々指示をしてジョブチェンジとスキル習得用の儀式の準備をさせた。


 そしてクラウスくんに誓を立てさせて、儀式を執り行った。


『ふー……これにて暗黒魔法剣士へのジョブチェンジ完了なり!もちろん魔力略奪のスキルも付与されている筈だよー』


「……特に変わった感じはしないな……」


『まあねー……でも戦えば分かるよ。ちょっと街の外へ行ってみる?移動陣で移動させてあげるよー』

 とクラウスくんの足元へ魔法陣を出現させる。


「そうか……分かった」


 そして街の外へ移動しました。ちなみに俺はクラウスくんの手に持たれている。


『さあ、クラウスくん!俺は鞘に収めて、儀式通り剣を抜いてー。それでどんどん切りつけていけは良いからー』


「ああ」

 と俺を懐へしまい、クラウスくんは丁度こちらへ来ているウルフの群れを見る。


 ……ぶっちゃけ群れが居る所へわざと移動したんだけどねー。ふひひ。


 クラウスくんは呪文を唱えて空中から、凛としたオーラを纏う銀と蒼の剣を取り出す。これが儀式によって手に入れた……クラウスくんの魔力で出来た剣である……。クラウスくんらしい剣だわー。


『んじゃあ、切っていけば魔力が剣に溜まる感覚が分かるだろうから、今回は満タンになるまで切ってみー?』


「分かった……」

 とクラウスくんはウルフの群れへ駆けていく。そして華麗に斬り捌いていく。


 ちょっとぉー勇者くんより強いじゃん……。


 剣を手放したのは勇者くんに劣等感を持たせない為だなこりゃ。……んでもって、普通の魔法剣士も詠唱いるから論外だったんだなぁ。やっぱりジョブチェンジさせて良かったわー。


「……これで満タンか?」

 とクラウスくんが持つ魔力の剣はさっきより爛々と輝いている。


『クラウスくんがそう感じたらならそうじゃない?……じゃあ魔術の発動やってみよー。詠唱なんて要らないよ!そのまま溜まった魔力を攻撃として放出するのだよー!さあ!ほらほらとりあえず一閃させて!』


「あ、ああ……」

 とクラウスくんは剣を一閃させた。


 すると、その軌道上へ魔力が溢れ出し、無数の鋭い斬撃攻撃としてウルフの群れを襲った。


 ウルフの群れが一気に瘴気へと還る。もう一体たりとも残っていない。


「は……凄いな……これが略奪の力か……」

 と自らの魔力で出来た剣を見つめる。


『むふふ……でしょー?……ちなみに相手が強い程魔力を多く奪えるから有利だよーん』


「ほお……素晴らしいな……ありがとうアインザー」


『いえいえー、ちなみに今の無属性攻撃だけじゃなくてクラウスくんの意思次第で普通の魔術を使う時と同じように色んな属性を付与できるよー。攻撃の形も変えれるしね!組み合わせは君次第である!むふっ』


「そうか……もう少しここで特訓しても良いか?」


『もちろんさー。頑張ってねー!』


「……その前にアインザー……前の特訓の時の氷の的を出してくれないか?アレを壊せるかやってみたい」


『おっけー!』

 と氷の的を出現させる。


 そこへクラウスくんは斬り込んでいった、剣で氷は少しずつ欠けるがまだなんとも無い。


 だがクラウスくんに魔力を奪われている感覚は俺もする……そろそろ満タンかな?


 そしてクラウスくんは魔力を放出し、鋭い無数の風の刃で的を切り刻んだ。


 見事に氷の的は跡形もない。おぉーやるぅー。


「ふっ……ようやくやれたな……」

 とクラウスくんは笑う。


『うんうん!良かった良かった!おめでとー』


「ああ、ありがとう……」







 それからクラウスくんは日が暮れるまで新しい力に慣れる為に戦い続けた。


 ……しっかし飲み込み早いわー。もうすっかり暗黒魔法剣士のジョブを自分のものにしちゃってますわよ。


 敵から略奪した魔力で自在に攻撃してやんの……。しゅごい……。


 俺はとんでもない才能を目覚めさせてしまったのかもしれない……。

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