19.ロッソ
夜明けと時を同じくして、勇者くん達は目的の街へ着いた。
「……ロッソはまだだよね?」
『うん……強い魔力は感じないね』
「良かった……間に合ったのね……」
とハンナちゃんは肩の力を抜いた。
「とりあえずここの領主に話を通すか……」
「そうだね……また襲撃されるかもしれないから説明しておかないと」
と街の領主の元へ向かう事にした。
早朝だが勇者くんって事もあって領主は快く迎え入れてくれた。
そして勇者くんは領主にまたロッソによって襲撃されるかもしれない事を説明した。
領主は顔を真っ青にして勇者くんに是非とも何とかしてほしいと懇願した。勇者くんはそれを快く引き受けた。
そして、どうロッソに対応しよう作戦を立てている時だった……。
『勇者くん……強い魔力が街に入った……ごめん魔力を隠しているみたいで近づかれるまで気づかなかったよ……』
「っ!ロッソが来た!?」
と勇者くんは立ち上がる。
「えっ……まさか本当に?……勇者様……この街をお助け下さい」
と俺の声が聞こえていない領主は懐疑的だが懇願してきた。
「ええ、もちろん……アインザー……街の建物全体を覆う障壁って出来る?」
と俺に対して小声で無茶振りである。
『……出来るけど……』
「なら、お願い……後は街の人に建物の中に入ってもらわないと……」
『それも領主さんの声を拡声して伝えてあげるよ……あーしんど……』
「ありがとうアインザ!……領主さん今から魔術で貴方の声を街中に拡散しますので、皆さんに建物の中に入る様に指示してください」
は、はいっ!と領主は街へ指示を出した。
ちなみに頑張ってロッソ達には聞こえない様に声にも指向性を持たせている。……しんどっ!そして街の人々が建物に避難し終わった事を感知したので、街の建物全体を護る様に見えない障壁を張る……しんどいーしんどいーよー勇者くんの鬼畜ぅー。
まあ、これでロッソと街の人は隔離は出来た筈だ。
「さあ、ロッソの元へ向かおう!」
と勇者くん達は領主邸を飛び出した。
「アインザー……ロッソはどこだ?」
『……まだ身を隠しているね……えっと……ここから南の広場の辺りだよ……そろそろ街に掛けた障壁や異変に気付かれるかも……』
ロッソの元へ向かっているとドーンと破壊音が聞こえた。
『あー……仕掛けに気付かれたー。相手はお怒りだー』
とロッソと思われる人物が見えてきた。
先程破壊したと思われる噴水の向こうからこちらを見ている。
赤髪に赤眼の青年だ。立派な角がある。……そして格好は実に派手だ……全身赤い……。そして何故胸をはだけさせている?一応のイケメンが台無しである。
ちなみに、魔族は赤眼に美形と決まってるからねー。そして大体角がある。
「勇者か……漸く来たかっ!!フハハハハ!さぁ俺様の前に平伏せっ!まどろっこしい事は無しだ!」
と大剣を出現させて勇者くんに凄い勢いで襲い掛かってきた。
「くっ!そんなわけにはいかないよっ!」
と勇者くんはそれをなんとかいなして、反撃する。
そこへクラウスくんの魔術がロッソの頬を掠めた。
「ちっ……お前達!勇者の仲間を殺せ!」
とロッソが命令すると無数の魔物が出現した。おいおい……強力な魔物じゃないか……。
とりあえず後衛二人に防御障壁を張っておいた……がどこまで保つやら……。
「なんだ?まだ街の障壁以外に余計な事をする奴が居るな……どこだ!!」
とロッソは魔力で威圧する。
ひいぃ……でも色々マズイので勇者くん持つ剣でーすとは言えぬ。
「ちっ……出てこないつもりか……まあいい……全て倒して炙り出してやる……」
とロッソは舌なめずりをする。そして再び勇者くんに大剣で攻撃を繰り出す。
勇者くんは頑張って攻撃を防いで反撃しているが、何せロッソと体格差がある……勇者くんは劣勢だ。
何か策はーと思ったが、クラウスくんとハンナちゃんは障壁に襲い来る魔物で手一杯だ。期待は出来ないなぁ……。
よし、ロッソはまだ隠れた援軍が勇者くんに居ると思ってるんだよな……なら……ロッソの死角から魔術が発動する様に調整しよう。
とりあえずロッソが率いる魔物を減らす事にする。……ミノタウロスとか……勇者くん達にはまだキツイ魔物じゃないですかーやーだー。倒しとこう。
「は?ミノタウロスが一撃だと!?」
とロッソは唖然とする。むふふ……高性能をなめんなよー。
その隙を勇者くんは逃さない。ロッソの肩に俺をくい込ませ割いた。
「ぐっ……」
とロッソは大きく後退する。が、勇者くんは追撃していく。いいぞー。
そして勇者くんはロッソの正面を大きく切り裂いた。あと一歩だ……。
「ぐぁあ……くそっ……下僕共よ!我が元に集まれっ!」
と勇者くんから大きく後退していまい一体のミノタウロスを盾にほかの魔物を集めてしまう。
そしてロッソは自らの魔力の中に魔物達を全て取り込んでしまった……。
ロッソの魔力が急激に上がる。勇者くんが危ないと思って防御障壁を張ったが衝撃は来ず、後ろの後衛二人を護る障壁が打ち破られた。
二人の悲鳴が上がる。ロッソは瞬時に二人の元へ移動していたのだ。
そして地面に倒れる二人に大剣を向け、こちらを見る。
「勇者……こいつらを殺されたくなかったら余計な抵抗はするなよ……隠れている奴もだ!」
「ぐっ……分かったから二人を害さないてくれ……」
と勇者くんは顔を歪める。
「お前次第だ……」
「……レオン!俺に構うな!」
「お荷物が何言ってんだ……」
とロッソはクラウスくんの腹を蹴る。
「ぐっ!」
「クラウスっ!!」
『……勇者くん……あれだけ近いと俺もお手上げ……それに障壁張っても負けるよ……』
「分かってる……アインザー……何もしなくていい……」
「……さあ抵抗するなよ……。勇者よ……サヨナラだ!」
とロッソは魔力の刃を勇者くんへ飛ばす。
勇者くんはモロにそれを受けて吹き飛び、壁へぶち当たる。俺は言われた通り何も出来なかった……。
『勇者くん?……勇者くん?』
と声をかけるが返事が無い……。……息はまだある……が、虫の息だ……。身体の正面に大きく傷がある。見るも無残だ……。
ここままでは勇者くんは死ぬだろう……。俺が出来る事と言えば……でも勇者くんは許してくれるだろうか?
だが背に腹は変えられない……やろう。
勇者くんへと俺の魔力を流し込む。そして勇者くんはのそりと起き上がった……否、俺が勇者くんの身体を乗っ取ったのだ。だから今は俺が勇者くんだ。
俺の魔力で勇者くんの身体は驚異的に回復していく。もう傷跡すら無いだろう。
「なっ!どうなってやがる……!!おいっ!こっちには人質が……」
と言い切る前にロッソは吹き飛んだ。
勇者くんを乗っ取っている俺がやったのだ。剣……俺を使って……身体があるというのは変な感覚である。
壁にめり込んだロッソはノロノロと起き上がろうとするがそれはさせてあげない。勇者くんをこんなにしたのだ……徹底的にやってやる。
ロッソに向けて魔力を纏った足を思いっきり蹴り下ろす。ちなみににさっき切った傷口を狙って。
「ぐ、かはっ!!」
とロッソの身体がミシミシと悲鳴を上げる。そのまま蹴って地面に転がした。
「お、まえ……何者だ……なんだ……この魔力……これはまるで……魔お……」
「うるさいよ……さよなら……」
とロッソの心臓へ剣を突き立てた。
ロッソは最期の悲鳴を上げながら瘴気へと霧散した……終わった。
さて、クラウスくんとハンナちゃんを治療しなければ……。と、二人を治療した。
「……お前は誰だ?」
とクラウスくんは睨んでくる。
「……流石に分かっちゃうよねー……アインザーだよ……」
「え?……何で?」
とハンナちゃんは目を丸くさせる。
「勇者くんが瀕死だったから仕方なく……本当にごめん……俺がもっと上手くやっていれば……」
違うと二人は首を振る。ありがとう。
「んじゃあそろそろ勇者くんに身体を返すねー」
と二人にヒラヒラ手を振る。
そして俺の意識は元の剣へもどった。が勇者くんはそのまま地面へ倒れ込んでしまった……あり?
レオン!と二人の声が響く……。勇者くん?勇者くん?
そのまま勇者くんは領主邸に運ばれた。




