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魔法学園の補欠合格者、不遇職召喚士でも【インスタント魔法】で無双し最強を目指す  作者: 椿紅颯
第三章

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第20話『天才と秀才の力さえも凌駕する力』

「それで、こんな場所まで移動して大丈夫なの?」

「ええ。ちゃんと先生に許可を貰ってきたもの」

「あれを『許可を貰った』と言えるのは、図太い神経のお姫様だからかしら」

「それを言ったらアリシアも同罪でしょ。私は穏便に済ませようと交渉したまでよ」

「あなたがお願いしたら、誰も断れないでしょ」

「いやいや、『わたしたちが全力を出すので、周りの人を巻き込みたくない』って。どう考えても許可を出すしかないでしょ」


 と、言った感じで、移動している最中に同じ口論を3回は行っている。

 当然、当たり前のように僕の意見は何一つ反映されることなく、というよりも口を挟める状況になかった。


 それはそれとして。

 2人が言い合っている通り、クラスメイトだけではなく先生の監視の目が届かないほど遠くまで移動してきてしまった。


「これからやることは決まっているんだから、終了条件を先に決めておきたい」


 広大な森の中での魔法対決とはいえ、まさか戦闘不能ならまだしも、再起不能になるぐらいの攻防を繰り広げるのは、さすがに危険すぎる。

 一帯の草木が塵になって散っていき、土と灰がドロドロになって沼になる、なんてことが起きたら先生どころか学園長にも怒られるし。


「ここまで来た時間と戻る時間を考慮して、渾身の1撃でいいと思うの」

「そうね。それに加えて、わたしたちには先生への報告する義務もあるし」

「2人はその条件として。僕はどうしたらいいの?」

「本音を言うと、わたしはアキトの全力を見たい。主としての力量を把握しておきたいから。でもたぶん、それは叶わないのよね」

「んー……そうだね。申し訳ないけど、僕はこの状況で本気を出すわけにはいかない」

「わかったわ。なら、わたしたちの全力をどの程度の割合でもいいから魔法で対抗してもらえるかしら」


 アリシアは使命を果たすため、業務的な意味で提案をしたのだろう。

 これから先、長い付き合いになるのだから僕にだって理解できる。


 でもごめん僕が全力を出すのは今じゃないんだ。

 それに、いずれは確認できるだろうし。


「アリシアは身の程を弁えているのね」

「どういうことかしら」

「私はついさっきまで口では揉めていたけど、もしかして2人だったらアキトに魔法が届くかもしれない――と信じて疑わなかったもの」

「わたしも、極少量にも可能性があるのなら同じことを思っていたわよ。でもね、わかるの。アキトはもはや、わたしたちと同じ場所には居ない。大袈裟だと言うかもしれないけど、既に七魔聖の領域に達している……いいえ、超えていると言っても過言ではないのよ」


 正直、今の僕がどれだけの実力を有しているのかは正確に判断できない。

 本物の七魔聖という存在を目の当たりにしたことはないし、ましてや魔法を行使しているところを一片たりとも見たことがない。

 叶うなら力比べができたらいいけど、そんな願望を叶えてくれるほど七魔聖も暇じゃないだろうし。


「私は相手を正確に見極めることもできないなんてね。どれだけ世間知らずなのかしら」

「勝手に自虐し始められると困るのだけれど。現に周りを見てみなさい。生徒はまだしも、教師だってアキトの実力を見極められていないのよ。さすがに自分を驕りすぎ」

「でもアリシアだけは――」

「ああ、言い忘れていたけど。わたしは相手の魔力を見通すことができる目を持っているのよ」

「な、何それ」

「お家芸みたいなものね。まあだからこそ、『ひたむきに高みを目指し続けていた時のあなたに憧れを抱いていた』と言ったのよ」

「……耳が痛い話ね。なら、今の私は見るに堪えないでしょう。なるほど、最近のあなたが的確過ぎる言葉を差し続けてくる意味がやっと理解できたわ」


 今のリーゼにとって、アリシアは敬遠の仲というよりは天敵と言った方が合っているのかもしれない、そもそもの得意属性を含み。

 当人同士は複雑な心境を抱いていることに変わりないだろうけど、どちらにしても僕には理解してあげられない話だ。


「じゃあせっかくなら、提案してもいいかな」


 疑問を抱きながら目線を向ける2人に話を続ける。


「僕は魔法を発動させるけど、障壁だけにする。そして、障壁の硬さを授業で使うようなゴーレムと同じ強度で、互いの弱点属性にしようと思う」

「少し残念ではあるけど、それはそれでいいわね」

「……アリシアが驚かないということは、本当にそんなことができてしまうのね」

「というわけだ。左右にわかれて」


 指示通りに右へリーゼ、左へアリシアが僕の視界に収まるぐらいまで移動した。


 正直、2人には公平な条件を出しはしたけどまったくその限りではない。

 そもそもの話、リーゼは弱点属性のゴーレムと対峙したけど、アリシアは属性のないゴーレムと対面していた。

 だけどアリシアはたぶん、全て説明しなくてもある程度は予想できているのだろう。


「じゃあいつでもどうぞ」


 右に全身よりも大きい長方形な水属性の魔力障壁展開し、左に計上は同じ雷属性の魔力障壁を展開する。

 2人はすぐに、使用できる魔法の中で最大であろう【紅蓮の朱剣】と【蒼穹の盾剣(しゅんけん)】を発現させ、構えた。


「……」

「……」


 すぐに攻撃をしたいのだろうけど、どちらも未だ行動に移していない。

 この状況で、まさか怖気づいたということはないだろう、それは集中している目と今すぐにでも飛び出していけそうな構えをしていることからわかる。

 どちらもたぶん、わかっているのだと思う。

 僕が展開してる魔力障壁へ攻撃できる機会に制限は設けていない。

 でも突破できる機会は1度だけだと悟り、自身が発揮できる最大限で挑もうとしている。


 僕は、その誇りを懸けた挑戦に望み通り全力で応えてあげたいところだけど……ごめん、それだけはできないんだ。


「すぅー――ふぅ――」


 どちらの深呼吸が聞こえたのか、いや、2人同時だったか。

 集中力が増していって感覚が研ぎ覚まされていくのが、辺りの状況を見たらすぐにわかる。


 リーゼの周りは炎が次第に燃え広がっていき、所々の草木に引火してしまっている。

 アリシアに関しては、目つきが完全に殺意のソレであり、空中に浮く水は1ヵ所に集まり肥大化していき、剣にまとわせている水は完全に動きを止めて刃として放たれる準備を整えている。


 ああ、凄いよ――わかったんだね。


「機会を設けてくれたアキトに感謝を――はぁっ!」

「これが私の全力――! はぁああああああああああああああああああああっ!」


 仲が良いのか悪いのか。

 奇しくも2人は同時に攻撃を仕掛けた。


「はぁ……はぁ……はぁ、はぁ」

「…………」


 さっき思ったことは現実となった。


「2人とも、お疲れ様」


 結果は、アリシアが魔力障壁を破壊し、リーゼは魔力障壁に攻撃を阻まれてしまった。


「さすがに疲れて動けない」


 アリシアはそう言うと膝から崩れ落ち、地面を腰を下ろしてしまう。


「私は……」


 対するリーゼは、力不足が及ばなかっと悔やんでいるのだろう。


「結果はどうあれ、2人は頑張ったんだ。全員で走れなさそうだし、もう戻ろう」

「まさかわたしを置いていくつもり?」

「そんなことはしないって。もし抵抗がなかったら、背中に乗る?」

「お姫様抱っこを所望したら叶えてくれるのかしら」

「冗談はやめてくれ。ほら」


 僕もできるなら、回避できる手段があるのならそうしたい。

 もしもご令嬢がおんぶされている姿を、周りの人に見られたら……――という心配は、アリシアには無用だったか。

 ここまでになると、もはや無敵の人だよな、本当に。


「人に見られそうになったら、下ろすから」

「え? わたしは全く問題ないのだけれど」

「いいから従ってくれ」


 ほら、完全に無敵の人だ。

 てか人に見られることすらも何かに利用しようとするだろう、このご令嬢は絶対に。


「リーゼは大丈夫? さすがに2人は担げないけど」

「私は大丈夫。歩けるわ」

「無理しないように。時間はまだ余裕があるから、辛かったらいつでも言って」

「ありがとう」

「え? わたしは荷物みたいに扱って、リーゼには優しくするの?」

「そういうんじゃないだろ」

「やっぱりお姫様抱っこがいいわ」

「子供じゃないんだから、駄々をこねないでくれ」

「あら。まだ子供よ?」

「うるさい」


 背中からぶーぶーと文句が投げられるも、僕たちは歩き出す。

 そして、アリシアがうるさかったのもあるだろうけど、終始リーゼは言葉を発しなかった。


 たぶん、アリシアは予想できたであろうけど今回の魔力障壁は、2人の発現させる魔法が最高の状態であれば消滅させることができた。

 要するに自分との勝負をする状況にしたわけで、リーゼは気づけていたかはわからないけど、自分を超えることができなかったということになる。

 どちらにしても結果は奮わなかったわけだし、アリシアに剣でも負けたから敗北続けになってしまった。

 そりゃあ落ち込みもするさ。


 でも大丈夫、きっとリーゼなら大丈夫だと思う。

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