表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/35

【8話】初めての冒険ー2 ※新米冒険者リラ視点

 

 白煙が晴れる。

 

 オーガは今も健在。

 しかも攻撃が直撃した顔面には、かすり傷ひとつなかった。

 

 仕留めたとどころか、まったくもってダメージを入れられていなかった。

 勝利したと思っていたのは、大きな勘違いだった。

 

「ウオオオオオ!!」

 

 止まっていたオーガの足が再び動き出す。

 

 大喜びしていた三人の顔が青ざめる。

 中でも、

 

「嘘! なんでよ!? そんなのありえないわ!」


 特にサナは取り乱していた。


 オークに大ダメージを与えた魔法がまったく効かない。

 突きつけられた事実が受け入れられず、完全にパニック状態となっていた。

 

 甲高い声で叫びながら、やたらめったらに【ファイアボール】を連射していく。

 

 そのうちのいくつかは、オーガに命中した。

 しかし【ジャイアントファイアボール】を無傷でしのいだオーガに、ダメージが入ることはない。


 飛んでくる火の玉を気にすることなく、オーガは向かってくる。


 そしてついには、目の前まで近づかれてしまった。

 

「く……くらえっ!!」


 飛び出したルアンが、オーガに剣を振る。

 

 しかし。

 

「う……嘘だろ」

 

 ルアンの攻撃は、オーガの肉体に傷一つつけられない。

 それどころか強靭な肉体に弾かれたことで、剣が真っ二つに折れてしまった。

 

 オークにとどめを刺したルアンの自慢の剣は、まったく通用しなかった。

 

「なんだよ……これ」

 

 ルアンが絶望している間に、オーガは次の行動へ。

 片腕を伸ばして、サナの顔面を鷲掴みにした。

 

「なにするの!? 放してよ!」


 なんとか引き剥がそうと、サナは必死にもがく。

 

 しかし、オーガの大きな手はびくともしなかった。

 

「いやっ……助けて! 助けてよルアン!!」


 自分ひとりでは無理だと悟ったサナは、涙交じりに最愛の人に助けを求める。

 

 しかしルアンは、

 

「む、無理だ!」


 ガクガクと首を横に振るだけだった。


「な……なに言ってるの? 私たち将来を誓い合った仲でしょ? まさかとは思うけど、見捨てないわよね?」

「ごめん! 俺はまだ死にたくない!!」

「そんなのあんまりよ! 絶対守ってくれるって言ってくれたのに! 嘘つき!!」


 これでもかというくらいに怒りと恨みが詰まった声が上がるも、ルアンはそれを無視。

 一人で逃げ出していく。

 

「この裏切り――ぎやあああああ!!」


 上がったのは断末魔の叫び。

 オーガの指の隙間から、ボタボタと血がこぼれ落ちていく。

 

「クソっ! 早く立たないと!」


 逃げ出したルアンの声が聞こえた。

 少し離れたところで、足を滑らせて転倒してしまったみたいだ。

 

 しかし恐怖のあまり腰が引けているのか、立ち上がれずにいる。

 うつ伏せのままじたばたしていた。

 

 顔面が潰れたサナの死体をぽいっと放り投げたオーガは、ルアンのところへ向かっていく。

 

「やめろ! こっちに来るな! まだリラが残っているだろうが!! 僕はまだ――ゴフッ!」


 片足を上げたオーガが、ルアンの背中を踏みつけた。

 ルアンの口から血が飛び散る。

 

「や……やめて。どうかお願いしますから……」


 弱々しい声で願うルアンだったが、オーガは聞く耳を持たない。

 それはもう楽しそうに、何度も何度も背中を踏みつけていく。

 

 やがてルアンの声は完全に聞こえなくなった。

 

 リラはその様子を黙って見ていた。

 

 ここから逃げ出さないといけないのは分かっている。

 でも、恐怖のあまり足が動かないでいた。体がいうことを聞いてくれない。

 

 オーガが戻ってくる。

 次はリラの番、という意思表示に他ならなかった。

 

「ズオオオオオ!!」

 

 目の前でオーガが、拳を振り上げた。

 

(もしあのとき断っていたなら)


 避けることのできない絶対的な『死』を前にして、リラはそんなことを考えた。

 

 オーガを討とう、と言ったルアンの提案を無理矢理にでも断っていたならこうはならなかったかもしれない。

 浅はかな決断をしてしまった後悔が波のように押し寄せて、そしてリラは、諦めた。

 

(私、ここで死んじゃうんですね。せめて運命の人に出会ってからにしたかったな……)


 フッと微笑んで、死を受け入れる。

 

 そのとき。


 オーガの首から上が吹き飛んだ。

 鋭利な刃物かなにかで、切断されたかのようだ。

 

「やっぱりザコね」


 首を失ったオーガの体が地面に倒れて、視界が広がる。

 そこにいたのは、真っ赤なローブを着て白い仮面をつけている人物だった。

 

 声からして若い女性だろう。

 

 この人がオーガを殺した。

 ただならぬ雰囲気を放っている女性を見て、リラはひとめで分かった。

 

(……なんて力なのでしょう)

 

 リラは震え上る。

 三人がかりでもまったく相手にならなかったモンスターを、この人はたったの一撃で葬ってしまった。

 

 なんという強者。暴力の塊。

 圧倒的な力を前にして、リラは並々ならぬ恐怖を味わっていた。

 

 しかしそれとは、別の感情もあった。

 

 彼女の圧倒的で絶対的な力を目にしたリラは、綺麗、だと思った。

 これまで見てきたどんなものよりも輝いていて、美しい。胸が熱くなる。

 

(ついに出会えました……私の運命の人!)


 そう、きっとこれは、まぎれもなく初恋だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ