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星の海で会いましょう  作者: 慧桜 史一
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新型量産機編5

 フリードリヒ大尉の『マウス』はグングンと加速して行く。小さめの機体なのでバーニアが良ければそれだけ加速するのだろう。大尉に何故『マウス』を使っているのかと聞いたら、宙賊が手に入れるスペース・トルーパーと言えば『マウス』なのだそうだ。但し中身はまったく違うと聞いている。かなりチューンされていて、パーツの評価実験なども行っているそうだ。俺はそんな『マウス』に置いて行かれない様に『ヘーニル』を加速させた。


《見つけた。》

 大尉からの通信後、こちらのレーダーでもキャッチした。

「最大望遠にします。」

 ヴァレリーが対象の船を拡大してくれた。それは小型の輸送船だ。どちらかというと<サークル>間の行き来に使用されるものだが、推進剤と空気さえ保てばラグランジュ・ポイント間も移動できる。

「どうしますか?」

 とりあえず他の宙賊よりは先にアタックできそうだが、本来の作戦内容からは外れてしまっているので、どのようなアプローチでコンテナを回収するかが肝だ。コンテナの投下までもう少し時間がある。

《取り付くぞ。そうすれば他は手が出せなくなる。》

「了解。」

 俺たちは輸送船に追いつくとそれぞれ輸送船を掴んだ。フリードリヒ大尉は出入り口付近にコックピットを近づけると、コックピットから出て輸送船の扉を開けようとし出した。結構なスピードが出ているので、俺は大尉が万が一輸送船から離れることがあった場合に備えて機体の位置を調整した。大尉は度胸があるなというのが俺の感想だ。

 俺は周囲の索的をして輸送船を狙っていたと思われる宙賊の動向にも注意を払うことにした。宙賊はレーダーには映っており、先に獲物を取られたことで困惑しているようだ。トチ狂って襲ってくることもある。ルールを破ったことがバレれば、裏マーケットで取引が難しくなる。それが抑止効果となっているのだが、訴えるものさえ居なければバレないと言うことでルールを破るものは一定居る。そもそも宙賊にモラルを求めることが間違っているのだが。


 大尉はかなりの手際の良さで輸送船の扉を開け、中へ入って行った。このまま無事に終わるかと思っていたが、困惑していた宙賊が動き出した。ルールを破ってでもこちらから輸送船を奪うことにしたようだ。5機の船外作業機を改造した者が出てきた。恐らく全戦力だろう。


 正直俺たちを相手にするには力不足であるが、目撃者を消すことを踏まえるなら、出し惜しみはしていないはずだ。俺は輸送船から離れると、宙賊を迎え撃つため移動を開始した。

 有効射程距離に入った瞬間に銃を1発。これで1機の船外作業機モドキを撃破した。これで相手もこちらがスペース・トルーパーであることを認めただろう。勝ち目が無い戦いであるので引いてくれるといいのだが…。しかし相手はこちらの意図など気にせず意気軒昂で突撃してくる。仕方なしに俺は手近な奴から狙撃していった。次々と弾は命中し最後の1機も片付けた。さてフリードリヒ大尉の方はどうなっているかな。


「大尉。そちらの状況はどうですか。」

《こちらは片付いた。》

「こちらも片付きました。そちらに向かいます。」

 俺は『ヘーニル』に踵を返させて輸送船へ向かった。大尉は時間通りにコンテナを廃棄させた。俺たちはコンテナの護衛をしながら『ロンバルディア』が到着するのを待った。


 『ロンバルディア』が近づいてきたら、コンテナに付いているワイヤーを引きながらスペース・トルーパーを出発させた。『ロンバルディア』にコンテナを積むスペースがないため、このワイヤーを船に引っ掛けてコンテナを引っ張るのだ。先に俺がワイヤーを所定の箇所に引っ掛ける。初めての作業であったが意外とすんなり引っ掛けられた。フリードリヒ大尉は慣れた様子で危なげなくやってみせた。

《作業完了だ。帰投する。》

「了解です。」


俺たちは動いている船の上部ハッチから格納庫に入る。先ほどの停まった状態と違い難易度がハネ上がっているが、俺は無難に格納庫へ着艦した。フリードリヒ大尉も無事着艦した。当たり前なのだがフリードリヒ大尉の操縦技術はかなり高い。タッチも柔らかで優雅さすら感じさせる。そして結構な高難度の作業もさらりとやってのける。

 こうして予定通りとは行かなかったが、俺たちは新型量産機を手に入れることができた。

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