新型量産機編6
『ロンバルディア』は基地の『コンスタンツ』へ帰投した。俺は『へーニル』に乗り新型量産機が入ったコンテナを工場へ搬入した。『へーニル』もそのまま工場へ係留する手はずになっている。ハンガーに『へーニル』を係留し、パイロットが乗降に使うキャットウォークに降り立った。
新型量産機はコンテナから出されたばかりだった。これからハンガーに係留するのだろう。新型量産機はまだ試作機らしくグレーカラーで塗装されており、大きさは『クロウ』や『ヘーニル』より少し小さく見えた。
新型機には4~5人がパワーアシストの外骨格を身につけ、スペース・トルーパーを輸送していた。外骨格には圧縮空気の噴射による無重力状態の移動も可能であるため、無重力下の工場ではよく使用されている。イメージ・フィードバックを使用していないので、誰でも使えるが、使いこなすには技術が必要となる。
ふと工場の隅を見ると黒い機体が目に入った。人民軍から鹵獲した『スルト』だ。『スルト』は分解されており、調査が行われていたようだ。なんでもこの工廠には変わり者で有名なスペース・トルーパー製作の天才が居るらしく、リバースエンジニアリングを目的に『スルト』が持ち込まれたそうだ。しかし新型量産機の調整もあるだろうし、一気に仕事を増やしすぎなのではないだろうか。
「ヴァレリー。部屋に戻ろうか。」
今日の俺の仕事はもうないだろうと新型量産機を見ていたヴァレリーに声を掛けた。ヴァレリーは
「はい。」
とこちらを振り返り応えた。
「新型が気になる?」
ヴァレリーも新型機に興味があるのだろうか。俺たちが乗ることになるので、俺は当然興味がある。
「いえ、知り合いが居たのでそちらが気になっていました。」
ヴァレリーの知り合いと言うことは恐らく前のプロジェクトの関係者だろう。いたるところに居るな。気になって俺も新型機の方を向くとパワーアシスト外骨格を着た一人がこちらに向かってきていた。近づいてきて違和感を感じる。なんか小さくないか?
パワーアシスト外骨格を着た人物は、小学生ぐらいの身長だった。そして俺たちの方ではなく『へーニル』の頭のところに取り付いた。そしておもむろに装甲板を外し始めた。頭の外装が外れたところで、
「やっぱり! 『ヘーニル』じゃん! 戻ってきてるけど、なんでこんな装甲になってるの!」
声も小学生のように高い女の子だ。
「アリサ中尉。お久しぶりです。」
その女の子に向かってヴァレリーが声を掛けた。その女の子はこちらを見るとスラスターを吹かしてキャットウォークに着地した。
「ヴァレリーじゃん! なんでここに居るの?」
「新型量産機のテストが今度の任務なのです。」
「新型? あぁ『アスク』のことね。」
新型量産機のコードネームは『アスク』と言うのか。覚えておこう。
「はい。設計者の名前がアリサ中尉だったのでもしやと思っていましたが、こちらにおいででしたか。」
「辺境で研究してるのがあたしには合っているわ。そう言う意味ではここは天国よ。」
「そうですか。アリサ中尉は以前のプロジェクトでも適応されていたかと思いますが…。」
「ヴァレリーとやってたプロジェクトは、あの変態野郎を除けば快適そのものだったわ。プロジェクト解散後の次の配属先が最低なのよ。最低すぎて変態野郎の方がマシだと思うぐらいにね。」
アリサ中尉は可愛らしい容姿に反して凄い毒舌だな。そもそも見た目が小学生か中学生にしか見えない。中尉ってことは俺よりは確実に年上だな。とてもそんな風には見えない。
「それはご苦労されたんですね。」
「まぁねぇ。でもあたしよりヴァレリーの方が大変だったでしょう。無事帰ってこれてよかったわ。」
「はい。おかげさまで無事に帰ってこれました。」
「『ヘーニル』も無事に帰ってきてよかったんだけど、形はずいぶん変わってしまってたのね。」
「はい。色々紆余曲折ありまして…。」
ヴァレリーは申し訳なさそうに応えた。色々あったよなぁ。本当に色々。
「それについてまた今度聞かせて貰うわ。『スルト』の解析も残っているしね。それじゃあ。」
アリサ中尉はキャットウォークから飛び出すと、そのまま『スルト』の方へ飛んでいった。なんか個性の塊のような人だったな。
「腹が減ったから食堂寄ってから部屋に帰ろう。」
「はい。了解です。」
俺たちは居住棟へ向かって歩き出した。食堂に寄ると特に誰も居なかったので、パワーバーベンダーで適当な味を見繕って部屋で食べることにした。
自室に戻りパイロット・スーツを脱いだらシャワーを浴びてパワーバーを齧る。このフレーバーは当たりだな。お腹が膨れたら眠くなってきた。『アスク』のテストは明日からだろうから今日はもう休むことにした。




