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魔法使いにできないコト  作者: 水無雲夜斗
第四章 どうしようもなく世話焼きで、
63/75

どうしようもなく世話焼きで、 4-23

 「ああ、そうだ」


 それを踏まえたうえで、俺はそう返事をする。

 すると九はと大きく椅子を鳴らして立ち上がり、思い切り俺を睨みつけた。


 「意味がわかりません。あなたは、この選挙に勝つつもりがないんですか?」


 意味がわからない、か。まぁそうなるのも当然かもしれない。

 九は己の信念を絶対正義と定め、それに従って行動している。

 それはある種の信仰であり、それ故に盲目になりがちだ。


 「お前さ、ちょっと頭を冷やしたらどうだ」


 少し尖った言葉だったが、極めて優しく、波風を立てないように気を遣ったつもりだ。

 その甲斐あってか、九は怪訝な表情を浮かべただけである。


 「今のお前は周りが見えてない。今回の事件で一番大切な部分が理解できてない」

 「どういう、意味ですか?」

 「それを教えてやるほど俺は優しくねぇよ」


 というのは若干嘘だが。


 「それとさ、お前は一つ勘違いしてるみたいだな」


 何も理解できていない九が首を傾げる。

 無理もない。彼女は真っ直ぐすぎて何にも気付くことができない。それは彼女と関わって間もない俺でも知ることができたほどの、九沙奈の決定的な弱点だ。

 だからこそ、俺はこう言わざるを得ないのだろう。


 「俺がいつ、この選挙に勝つつもりでいるなんて言った?」


 簡単な話、俺はこの騒動に巻き込まれただけの存在だ。

 偶然頼み事をされて、偶然それを断れなくて、なし崩し的に手伝うことになって。

 そこに俺の意思など微塵も存在していなかった。ならば、これ以上積極的に手伝ってやる義理もないだろう。

 すると九は一瞬言葉を失って、次に顔を伏せて肩を震わせた。

 ヒステリーでも起こされるだろうか、と俺は身構えたが、九はそのまま静かに教室の出口に向けて歩き出す。

 そして俺の横をすれ違う時、静かな声で「最低です」と言い残して、補助委員室を後にした。

 一昨日の俺の態度もあってのことだろう。九が怒るのも無理はない。

 九が出て行ってから十秒くらい経って、俺は即頭部をぼりぼりと掻いて、


 「何を今更、当たり前のことでキレてんじゃねぇよ」


 最低な自分にイラ立ちながら、そんなことを一人ぽつんと呟いた。

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