どうしようもなく世話焼きで、 4-23
「ああ、そうだ」
それを踏まえたうえで、俺はそう返事をする。
すると九はと大きく椅子を鳴らして立ち上がり、思い切り俺を睨みつけた。
「意味がわかりません。あなたは、この選挙に勝つつもりがないんですか?」
意味がわからない、か。まぁそうなるのも当然かもしれない。
九は己の信念を絶対正義と定め、それに従って行動している。
それはある種の信仰であり、それ故に盲目になりがちだ。
「お前さ、ちょっと頭を冷やしたらどうだ」
少し尖った言葉だったが、極めて優しく、波風を立てないように気を遣ったつもりだ。
その甲斐あってか、九は怪訝な表情を浮かべただけである。
「今のお前は周りが見えてない。今回の事件で一番大切な部分が理解できてない」
「どういう、意味ですか?」
「それを教えてやるほど俺は優しくねぇよ」
というのは若干嘘だが。
「それとさ、お前は一つ勘違いしてるみたいだな」
何も理解できていない九が首を傾げる。
無理もない。彼女は真っ直ぐすぎて何にも気付くことができない。それは彼女と関わって間もない俺でも知ることができたほどの、九沙奈の決定的な弱点だ。
だからこそ、俺はこう言わざるを得ないのだろう。
「俺がいつ、この選挙に勝つつもりでいるなんて言った?」
簡単な話、俺はこの騒動に巻き込まれただけの存在だ。
偶然頼み事をされて、偶然それを断れなくて、なし崩し的に手伝うことになって。
そこに俺の意思など微塵も存在していなかった。ならば、これ以上積極的に手伝ってやる義理もないだろう。
すると九は一瞬言葉を失って、次に顔を伏せて肩を震わせた。
ヒステリーでも起こされるだろうか、と俺は身構えたが、九はそのまま静かに教室の出口に向けて歩き出す。
そして俺の横をすれ違う時、静かな声で「最低です」と言い残して、補助委員室を後にした。
一昨日の俺の態度もあってのことだろう。九が怒るのも無理はない。
九が出て行ってから十秒くらい経って、俺は即頭部をぼりぼりと掻いて、
「何を今更、当たり前のことでキレてんじゃねぇよ」
最低な自分にイラ立ちながら、そんなことを一人ぽつんと呟いた。




