いろいろと諦めているけれど、 3-13
軽音部。
それをテーマにした部活もののアニメが大流行してから、かなり活気づいた部活だ。
少しおちゃらけたイメージのある部だが、実績はかなり優秀であり、地元の小さなコンクールだけでなく、関西で行われた大会でも入賞を果たしたほど。
音楽のことは全く知らない俺だが、少なくともアニメであったようなだらだらとした活動をしているわけではないのだろう。きっと毎日のように練習しているに違いない。
しかし悲惨。実際に部室を訪れてみると、完全に放課後ティータイムでした。生徒会でもやってたし、流行ってるのかしらん。
とりあえずスルーして部室内を見回すと、部員と思わしき生徒が五人ほどだらだらとしていた。
データには部員数九人と記載されているが、見た感じ結構ノリが軽そうな部活のようなので、ある程度の欠席は許可しているのかもしれない。
なにはともあれ、部長はいたので問題はない。さっそく審査に入ることにする。
Q.部会長選挙に参加する気はありませんか?
「無理無理、ウチらそんな大した部じゃないし、選挙なんてする気になれないから」
Q.部活動で何か困っていることはありませんか?
「んー、部活動っていうか、まぁあることにはあるけど、大したことじゃないから別にいいかなー」
Q.あるのなら、それを解決しようとは考えないのですか?
「解決できるならしたいけど、できないから仕方ないって感じ。大したことじゃないからいいんだけどね」
Q.それは部会長になったら解決できる問題ですか?
「まぁ、できるだろうね」
Q.それなら、推薦制度を使って部会長になる気はありませんか?
「ないない、そもそも荷が重すぎ。ウチは今のままでも満足してるし、ほんとに大したことじゃないから気にしないで」
なんだか話が有耶無耶のまま終了し、俺達は部室を後にする。
いろいろと引っかかる部分はあったが、推薦制度の話を持ち出しても意志は変わらなかったので、結局出馬の意志なしという扱いになるのだろう。
気になりはするが、未だ腑に落ちないといった表情をしている九を押して、次へ行くことにした。
新聞部。
学内きっての変人が集まる部活。
活動内容は学内向けの新聞の発行だが、時と場合によっては外部に向けて売り出すこともあるらしい。そんなことしていいのか?
学生価格で一部百円とかなり割安な上、内容がなかなか凝っていておもしろいらしい。
名のある大会などでの入賞はなく、正式な実績があるわけではないが、いろいろなところに手を出しているからか、地域からの評価が高い。それ故に、今回は選考対象として認められた。
ただ、新聞部は不安要素しかない。
部室を訪れてみると、対応に出たのは高野だった。俺と九が一緒にいるところを見て愉快げな表情を浮かべるが、九が用件の旨を伝えると、何事もなく中に通される。
独特な香りのする新聞部部室は、プリンターやらPCやら大型の機械が多少あるせいか、少し狭い。ただ、部員数は現在六名であり、人間がスペースを圧迫することはない。俺達二人を迎えても余裕はある程度の広さだった。
ちなみに前に俺が診たプリンターは無事直ったらしく、今もウィンガシャウィンガシャと今も元気に紙を吐き出している。
バックアップである俺は役割がないため、高野達新聞部メンバーの戯言を聞き流す作業に入る。その間に、九による新聞部部長の審査が始まっていた。
Q.部会長選挙に参加する気はありませんか?
「新聞のネタになるから、観察するという意味では参加することになるだろうね」
Q.それは出馬しないということでよろしいでしょうか?
「我々はあくまで観察者だ。多少事態をかき乱すことはあれど、基本的に自分達が率先して何か事を起こそうという気はない」
Q.部費など何か困っていることはありませんか?
「見ての通り、部室が狭い。だが、我々は少数精鋭だ。むしろこれくらいの方がちょうどいい」
Q.部会長という立場に魅力を感じませんか?
「感じるさ、あれは人を大きく動かす役職だ。我々のように『人々の動き』を常に欲している者達にとっては、必要な存在というわけだね」
Q.自分がその立場になろうとは思いませんか?
「それでは我々は観察者ではなくなる。自演で作り上げたネタなど、ジャーナリズムでは最も忌むべきことだね」
ナルシストっぽい口調だった新聞部部長の相手をしたせいか、九はちょっと疲れた様子で新聞部を後にした。
気持ちはわからなくもない。俺も最初はげんなりとしたものだ。いや、今でもしてる。ちなみに高野は新聞部でもトップクラスで面倒くさいヤツなので、いつも相手をさせられている身としては、ね。
ひとまず、新聞部部長は自分から事を起こすタイプではない。
イベント事については、あくまで観察に徹するのが新聞部だ。それも当然のことだと言えよう。
ひとまず、これで候補だった部活には全て聞き込みを行った。一度状況を整理して、落ち着ける場所で作戦会議を行うことにする。




