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魔法使いにできないコト  作者: 水無雲夜斗
第二章 ひどく面倒くさがりで、
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ひどく面倒くさがりで、 2-3

 一年の教室から生徒会室までは、結構な距離がある。

 まず二階に上がり、連絡通路から特別棟へ。右に曲がってずっと進むと、奥から二番目にある部屋が生徒会室だ。

 広さは結構なものといえるだろう。おそらく、俺達が使っている教室二個分くらいの大きさがある。

 特別棟は教室棟と違って人気が少ない。なので、どことなく厳かな雰囲気が漂っている。特に、生徒会室周辺はその気が強いように感じた。

 ごくりと唾を飲み、覚悟を決めて生徒会室の扉をノックする。


 『どうぞ』


 中から聞こえた声は女性のものだった。俺の記憶が正しければ、今の生徒会長は確か男だったので、他の役員の声なのだろう。


 「失礼します」


 ガラリと扉を開けて生徒会室に入ると、まず紅茶の香りが鼻孔をついた。

 ぐるりと回りを見渡すと、先ほどの厳かな雰囲気はどこへやら。書類やら道具やらが棚の上に散乱した、なんとも雑然とした風景が広がっている。

 一応、床や中央にあるテーブルの上はそれほど散らかってはいないが、棚や壁に袋やらダンボールやらが寄せられている場所もあるし、机の上にはポテチやらのお菓子が広がっていた。

 まるで生徒会もののラノベやらアニメやらでよくある生徒会室みたいである。放課後ティータイムとはこれのこと、いやあれは部活ものか。


 「そんなところでぼーっとつったってないで、もっと中に入ったらどうだ?」


 机の一画、窓側にある椅子に腰掛けている、黒いクリップの髪飾りをつけた女生徒が、粗雑な声を俺にかける。

 その姿を見て、俺はぎょっとした。


 「いたのかよ・・・・・・」

 「これでも生徒会役員だ。いて何が悪い?」


 またため息を吐き、俺はしぶしぶ生徒会室の奥へと歩を進める。

 どうやら生徒会室には現在、俺を含めて五人の生徒がいて、四人が生徒会役員なのだろう。皆勝手知ったるという雰囲気である。

 しかし、一人だけそうでもないヤツがいる。机に座る三人の生徒会役員人から外れて壁側に控えている、目立つ銀髪の少女、九沙奈。普段煌びやかな雰囲気を放っている彼女ではあるが、生徒会室の中ではそれほど目立つ存在ではないように思えた。


 「まー座って座って」


 とメガネをかけたおさげの女生徒に椅子を勧められ、俺は恐れ多くもその椅子に座らせてもらうことにした。

 生徒会室にある机は、長テーブルを四つくっつけただけの簡素なもので、綺麗な正方形を描くように設置されている。俺が座っているのは入り口側、廊下寄り。机をまたいで真正面にホワイトボードが見えるため、多分ここは下座なのだろう。

 四人の生徒会役員はそれぞれ壁際に九、窓側に一人、廊下側に二人と座っていて、真正面には誰もいない。だが、それでも真正面には空席があったので、そこが生徒会長が座る席なのだろう。

 窓側にも空席が一つあることから、生徒会役員は五人いる。つまり、現在では役員が二人欠席している状態になる。

 さて椅子に座ったはいいものの、何故か室内に沈黙が訪れた。

 何事かと俺は役員の顔を見回すが、誰も何も言わない。だからといって俺が何かを喋れるような雰囲気でもない。

 しばらく沈黙に身を委ねていると、廊下側にいる役員―――さっき俺に椅子を勧めてくれたおさげメガネさんが一つ咳払いをする。


 「折無武月くん、確か新部署の『補助委員』候補なんだよね」


 言うと、彼女は九に視線を投げる。よって、これは彼女に向けた言葉なんだろう。


 「はい、私が推薦しました」

 「んー、でもぱっと見そこまで仕事ができそうなイメージはないなぁ」


 なんとも失礼な物言いである。まぁ反論はできそうにないが。

 しかし生徒会役員というだけあってか、このおさげメガネさんも中々に独特な雰囲気を持つ人である。なんというか、ふわふわぽわぽわしているのに、全くスキがないというか、芯はしっかりしてそうな感じだ。


 「うーん、でも沙奈ちゃんがそこまで固執するくらいだから、案外お仕事できるのかも?」

 「実際、彼は生徒や先生方の手助けをすることが多く、周囲からの評価は良い方だと聞いています」


 残念、良評価をもらえているのは先生方からだけで、周りのヤツらからは都合のいいパシリ程度にしか思われていないのが現状である。

 しかしさっきから俺を品定めするような話ばかりで、本題に入れていないような気がする。


 「というか、何で俺ってここに呼び出されたんですか?」


 しびれを切らせてそう聞いてみると、ふわぽわメガネ先輩が一瞬きょとんとしてから、次に「そうだったそうだった」と一つ手を叩く。


 「今日折無くんを呼び出したのは他でもないんだー。生徒会に入ってくれないかって私達の方からお願いしたくて」


 またか。昨日の今日でこの節操のなさ。よほど生徒会には人手が足りないと見える。

 多分昨日断られた九が、一人では不利と判断して生徒会の先輩方に相談したのだろう。最初は一人でダメだったから次は複数人でってセールスマンか何かかな?

 とはいえ、押し売りセールに屈する俺ではない。幾多の訪問販売を居留守で撃退してきた俺を舐めないでいただきたいものだ。


 「その話なら昨日断ったはずですが」

 「まぁまぁそう言わずに入ってくれないかなぁ」


 冗談めかした口調で言うふわぽわメガネ先輩だが、ダメなものはダメである。

 どうせここにこのままいたら延々とこのやりとりを繰り返すことになる。ならばとさっさと荷物をまとめて帰るのが得策だ。


 「そういう言い方しても無駄だって、アン」


 席を立とうとした寸前、窓側に座っていた黒クリップの女生徒が、ふわぽわメガネ先輩に向けて言葉を放つ。

 それで、今すぐにでもこの場を去ろうとしていた俺の行動が止まった。

 続けて、彼女は俺の方を見る。


 「武月、アンタがどうしても嫌だって言うのなら私達も強制はしない。部活動とかが忙しくて生徒会はできないとか、そういう理由があるなら無理に勧誘しないって鉄則が生徒会にもあるからね。でも、アンタどうせ暇でしょ?」

 「・・・・・・」


 目を逸らし、俺は何も言わない。


 「これでも生徒会は困ってるんだ。アンタの実力は私が保証するところではあるし、それに私もアンタを補助委員に入れることは賛成派だから」


 しーんと生徒会室が静まり返る。

 それもこれも、まるで窓側の女生徒が俺に対して知ったような口を聞くからだろう。他の役員達の困惑ぶりを見る限り、多分、コイツは他の役員に俺達の関係を話していない。


 「えっと、結月ちゃんのお知り合い?」


 ふわぽわメガネ先輩が投げかけた問いは俺に向けられたものだったが、その言葉に対して発言をしたのは窓側の女生徒だった。

 それに対して、窓側の女生徒はいたずらが成功した子供のようににやりと口の端を吊り上げる。


 「アン、私の名前言ってみ?」

 「え、結月ちゃん?」

 「ちがうちがう、フルネーム」

 「折無結月・・・・・・あっ」


 それで、生徒会室にいた誰もが気付く。

 気まずい雰囲気の中、全員の視線が俺に集中する。

 そんな中、一人だけが楽しそうな顔をして得意気に言った。


 「そう、こいつ私の弟」

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