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捨てられた少年の事情

 私は少年を自宅へと連れてきました。


「本当に魔物が出ないのか……」


「ね? 野生動物は出ますけど魔物はまだ見た事がありませんから」


「それにこんな立派な家があるなんて……」


「これはある方からのプレゼントです、まずは紅茶でもどうぞ」


 私は少年を座らせ紅茶を差し出した。


「ほぅ……、久しぶりに温かい物を飲んだ……」


 そう言って少年はちょっと泣きそうになっている。


 ……どれだけつらい日々を送ってきたのだろうか。


「改めてフローラと言います。つい最近こちらで暮らしています」


「僕はエリオ、とある家の次男、だった……」


「それで貴方はどうして捨てられたのですか? ここは追放の森と呼ばれてる所ですから訳ありでしょう?」


「それは……、僕が役立たずだから」


 ポツリポツリとエリオが言ったのは胸糞悪い話だった。


 エリオの実家は先祖代々魔道士の一族、両親兄弟と共に優秀な魔道士、または素質がある者として厳しい教育を受けていた。


 エリオも勿論厳しい訓練を受けながらも頑張っていたが、ある時大問題が起こった。


「僕には魔力が圧倒的に足りなかったんです、普通は成長すれば増えるんですが僕はある時から増えなくなってしまって……」


「それは病気、という事ですか?」


「理由はわかりません、それがわかった時点で僕は家の者の扱いを受けなくなりました……」


「切り捨てた、という事ですか……」


「はい、時には命の危機を感じるような事もありました……、そして今日正式に勘当を言い渡されたんです」


 話している時にエリオの頬には涙が伝っている。


「それは……、大変でしたね。味方はいなかったんですか?」


「一応婚約者がいましたが……、弟と婚約し直すそうです」


「ふむ……、じゃあ彼女は知らないんですね?」


「多分、今頃は知っているはずだと思います。彼女はこの国でも優秀な魔道士一族の跡継ぎなので繋がりを持ちたい、と思っている貴族は他にもいるでしょうし」


「なるほど……、彼女は貴方が病気だということは知っているんですか?」


「知ってます、『絶対に治す方法があるから頑張ろう!』て言ってくれました」


「だったら大丈夫でしょう」


「え?」


「貴方の病気を受け入れてくれてるのですから、きっとエリオを受け入れてくれているのですよ。貴方にはそれだけの魅力がある、という事です」


「そうでしょうか……?」


「えぇ、それに貴方の元家族は外見しか評価できない視野の狭い人達です、そんな人達から離れられたのは良い事だと思います」


「なんかそう言ってくれると嬉しいです……」


 エリオはかすかに笑ってくれた。

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