緒戦
登場人物
河島真司/ルヴァンガ この物語の狂言回し、主人公。陰キャ。【聖魔の紋章】というRPGにハマる。人間VS魔族の世界に転生し救世主と見做され、魔族との戦いに挑む
ミラ 赤いショートヘアーの西洋風の美少女。勝気な性格
お師さん 名前からするとミラの師匠か?仙人のような風貌
ヴァイス ヒゲ面の男。強面に限らず気が弱い&皮肉屋
「お、思ったより被害が・・」
ミラが呻く。
村の入り口にある河原──無数の冒険者たちの亡骸が転がっていた。
「魔族のリベンジだな」
ヴァイスの声はか細かった。
すでに死臭があたりに立ち込めている。
「グゥほっほ・・」
思わずえづいた。
「この者たちは川を渡ってこっちに逃げてきたようだ」
お師さんが呟いた。
耳をそばだてる。
騒ぎ声が川向こうから確かに聞こえてきた。
「とりあえずこの川を渡りましょう」
ミラが威勢のよい声をあげた。
だれも異論はない。
みんな黙々と川を渡り始めた。
「お、思ったよりふ、深いですね」
冷たい流れに脚をとられそうになる。
魔法を使ってひとっ飛びしたくなってきた。
「ダメよ」
ミラが振り返った。
「こんな行軍ごときでいちいち魔法使ってたら・・」
ボクの気もちを見透かすようなことを言う。
なんで他人の心がわかるんだこの人・・ちょっと怖い。
「そ、その通り。い、いざ戦闘のとき魔法エネルギぃー・・使い果たしてましたは・・シャ、シャレにならん」
ヴァイスは息切れしていた。
魔法エネルギーも大事だろうけど体力も大切だろうに、ちょっと納得いかない説明だ。
「おお・・」
お師さんが上を見あげた。
〈ギャー、ギャー〉
鳥の大群が耳障りな声で鳴きながらこっちに飛んでくるのが見えた。もの凄い数の鳥たち。
「いったいどうしたんだコイツら・・」
ヴァイスも不安げに空を見上げる。
〈ギャー、ギャー〉
カラス?そっくりの鳥の群れは尽きることがない。
空を覆いつくしてしまうような膨大な鳥たち。心なしか昼間なのにほんのり暗く感じる。
「野生の生き物たちは気に敏いからのう」
お師さんの顔は真剣そのものだ。
「むむ」
お師さんの眼光が鋭くなった。
「来るぞっ!」
彼は一種のテレパスだ。
相手の殺気を多少は読める。が、お師さんが言うにはそんなの魔法のうち入らないそうだ。
「みな、散開せいっ!」
「了解っ!」
ミラが弾けるように右側に走る。
「しんどいなぁ」
ヴァイスは左側に。
お師さんとボクはそのまま中央を突き進んだ。
「ひっぃ~」
四、五人の冒険者たちがホウホウの体で逃げてきた。
身体のあちこちに傷をこさえ、出血もおびただしい。
「なんて雑魚いヤツらだ」
ヴァイスが呆れていた。
「ムダ口叩くな、ヴァイス!」
お師さんが怒鳴りつける。
「おでましよっ!」
ミラの金切り声。
冒険者たちを追って、まず三体のアグライドが現れた。
水ぶくれした茄子のような下級魔族だが、そのナリから想像できないほど速く動く。
ゲームの中ではもっとトロかったんだけど・・。
さらに5体、6体、いや10体?
とにかく次から次へとこっちに向かって突進してきた。
とりあえず前進した。
負傷してそこらに転がってる冒険者たちが邪魔だった。
この距離でヘタに魔法を使うと冒険者たちまで傷つけてしまう。
「おい、隊列を乱すなっ!」
ヴァイスが取り乱していた。
「静かにせい、ヴァイス!」
お師さんがヴァイスを制止する。
「で、でもだな。この陣形はよ、よろしくない。奇策が過ぎる」
珍しくヴァイスが口答えしている。
「救世主に任せておけ」
お師さんの声は落ち着いていた。
陣形を乱し突出してきたボクにアグライドたちはすぐ気づいた。
取り囲まれた。
「な、なめんなって!」
巨大な手刀をイメージし、そのカタチを何度も心の中で反芻する。掌に熱を帯びてきた。
「喰らえっ!」
空手チョップの要領で両手を横に払った。
次の瞬間、両横のアグライドがのけ反って倒れた。
「やったぁ!」
ミラの歓声。
「オレらも続くぞっ!」
ヴァイスが燥いでいる。
「このまま、追い立てろ。一気に勝負を決めるんじゃ」
相変わらずのお師さんのしわがれ声、ずいぶんと耳に心地よい。
その声に押されるように、一心不乱にモンスターの背中を追った。
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