9.春
軽く小雨が降る春の空の下、空気も目覚めたばかりの澄み渡る早朝、必死に叫ぶ男の子の声がする。
「殿下ー!おやめください!!殿下ー!」
まだ幼さの残るエドワード・ギドラーだった。
そして、エドが心配そうに見つめるのは
「後ちょっとだからー!大きな声を出さないでエド!誰かに見つかったら大目玉よ!んーー」
まだ幼さも残り少しだけお転婆なミランダ・アイネ・オブ・イングリスであった。
ミラにとっては少し背の高い、木によじ登りミラは巣から落ちてかなしげに鳴いていた雛鳥を巣に戻していた。
「んーー、やった!届いたぁ!きゃっ!!」
目的をなし気が緩んだ瞬間、足を滑らせ落下する。
痛みに備えぎゅうっと目をつぶるが、思ったほど痛くないことに気づく。
「でぇんか…おけがは…」
エドには、この頃は少しだけ自分より背の高いミラを抱きとめるほどの力はなかった。
しかし、ミラが落ちる前に何とか地面とミラの間に滑り込み衝撃を和らげた。
「エド?」
ミラは青い顔をするエドを心配そうに見つめる。
「でん…お…が…、ゴフっ」
エドはおびただしい量の血を吐いた。
運悪く、肋骨が折れ肺に突き刺さっていた。
「」
ミラは絶句した。
こんな量の血なんて見たこともなかった。
「ゴフっ、でん、ゴフっ、ゴフっ、がは」
「ばかぁ!わだしは、だい…じょ…ひっく。」
ミラは涙でくちゃくちゃな顔をしながら叫んだ
「えど!いやだ!しなないで!ねぇ、あなたまでおいていかないで!いきて!これはしめいよ!あなたのしめい!いきて!」
エドはうつろになる意識の中、思った。
(この顔はもう見たくないなぁ、この約束は守らなければいけないみたいだ)
そして意識を手放した。




