リトル・ストップ
最初、イリアはこれがイービス先輩の罠だと疑っていたが、俺が必死に説明すことで、イービス先輩の敗北、という話を信用した。
ついでを言えば、俺の無礼と除名の件は土下座に加えて靴裏を舐めることで勘弁してもらった。
「ねぇ、そこのパンチパーマがエリスの腹いせの被害にあったのはいいとして、こいつの犯行の証拠は?」
「それは俺の部屋に保存してある」
「まぁ、それなら大丈夫か。あんたの部屋セキュリティー固いし」
イリアは納得したように頷いた。
いやー、やっぱ久しぶりのこの関係はやっぱり良いねー。何ていうのかな?こう……とても気持ちいいんだよ。別に俺はMじゃないけど。
「そいつは後であたしに見せてもらうとして、千乱」
「ん?」
「イービスのこと懲罰部屋に連れてくからあいつの魔法行使権限封じて」
ああ、はいはい。
魔法行使権限を封じる方法はない。権限自体が神様から与えられたものなので、人間ごときではどうしようもないのだ。
ただし、俺は別だ。
行使権限を凍結させることで、魔法の発動を阻止できる。
ただし、封じられるのは十分程度、というルール付きだが。理由は神様が俺を妨害してくるからだ。
手っ取り早くイービス先輩の魔法行使権限を凍結させ、イリアの部下二名に引き渡した。あとは彼らがイービス先輩を処理してくれるはずだ。
「で、さっきのあんたの話にあった、この渭水雫李っていうのは使えるの?」
「まぁ、かなり。序列もそこそこ高いし、俺が執行委員として働くに当たって、ノーマークで付ける人材だからね」
「ふーん。あんたがそこまで他人を評価するなんて珍しい」
イリアは本当に驚いているようだった。そこまで俺、人のことを軽視しているかな?
改めて自分の行動を振り返る。
結果として、案外そうですね。
それと、俺が雫李を囲っておきたい理由はもう一つある。
イービス先輩は彼女の階位を第六層魔導師、と言った。多分そいつは違う。あの女は第六層でなく、第七層。つまりエリスやイービス先輩と同格だ。
それに、自分は後方支援に特化している、とか言っていたけどそれも嘘だろう。多分、彼女が特化しているのは俺と同じ変質系統の魔法。その中でも、夜に力を発揮する類の魔法だ。
そう思った理由は俺と同じ匂いがしたから。
彼女は俺と同じ秘密主義的な匂いがした。そういった人間が得意としているのは、陰湿な魔法──凍結魔法とか──と相場が決まっている。
勝手な妄想かもしれないが、十中八九当たっていると思う。
「じゃ、俺はこれで」
「えー、もう少しゆっくりしてけばいいじゃーん。ほらー、せっかく久しぶりに会話できたんだし。隣の部屋でまぐわいしてもいいかもよ?」
「からかってんの?」
俺が冷たい声で言うと、イリアは笑いながら、
「当たり前じゃーん。あたしがあんたみたいな秘密主義野郎と寝るわけ無いじゃん。酒が入れば別かもしれないけどね」
いや、酒が入ってもしないから。お前みたいな貧相な体の女に興味はねぇ。
こんなこと言ったら確実に首の骨を折られるだろうけど。
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