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双華のディヴィーナ  作者: 賀田 希道
九騎士決闘編――Nine round of Knights
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ペイン・ロード、あるいはバラ色・ロード

 翌日、俺が学園に赴いてすぐにイリアが俺を自分の執務室に呼ばれた。無論、これは事前に打ち合わせしていたことだ。俺自身が執務室に行くのはさすがに疑われる。だから呼ばれたので行きました、という事実が必要なのだ。


 寮から学園に至るまでの道のりで、数人の学生に監視されているのがわかった。いっそ、そいつらから抱き込もうかと考えたが、連中に対するメリットもなかったのでやめにした。


 「はいはーい、よく来たねー。それじゃあ、執行委員長命令で今日はすべての教科を休め」

 イリアの椅子の前に立つなり、かなりの無茶振りをされた。事前ん段取りと少し違ったので、ちょっと驚いたがイリアなりの考えがあるだろう、ということで納得し、俺はそれ対し反論した。


 「それって……俺に序列8位の座を降りろって言ってんの?さすがに丸一日の欠席は響くでしょ?しかも昨日もよくわかんない理由で俺の時間潰しやがって……」

 「はぁ?あんたはあたしの部下でしょ?部下が上司の命令を聞くのは当然のことじゃん!」


 イリアは俺に反論されたことがそんなに嫌だったのか、唾を飛ばす勢いでまくし立てた。


 「大体あんたみたいな下っ端一人一人にあたしの崇高な考えが伝わるとか思ってんの?伝わんないからなんも教えないんじゃん!」

 「それって少し言い方が酷くありゃしませんかー?俺はあんたのためにこれまで色んな無理難題を聞いてあげたんだぞ?」


 「それがぁ?あんたが下位序列者だったころから面倒見てあげたあたしに随分な物言いじゃない?ありえないないんだけど」

 ありえない、のはこっちのセリフだよ。


 「つーか、その一日サボるのに意味なんてあんの?その崇高な考えとやらを聞かせて欲しいものですなー」

 「あんた喧嘩売ってんの?そろそろマジで切れるんだけど?」

 「今更?今更ですかー?こちとら始めっからそのつもりなんだよ!」


 俺とイリアはけっこうガチ目に睨み合った。それもそうだ、一切の台本なしのアドリブでのガチ喧嘩だ。当然ながら演出とはいえ、俺もイリアも本気でけなしている。


 ていうか互いにこれまでの不平不満をぶつけている、といった感じだ。どっちでもいいことだけど。


 「そんなにあたしの部下を辞めたいなら辞めればいいじゃん!」

 イリアは思いっきり叫ぶと、机の中から退部届ならぬ退会届を取り出した。文字通り委員会を退会したい、という旨を知らせるものだ。


 「ああ、辞めてやるよ!どのみち好きでいた委員会でもないしな!」

 俺は怒涛の勢いで、退会届を書くと、その場でイリアの机にペシャリと打ちつけた。これで綺麗サッパリ俺はイリアとは縁切れしたわけだ。


 執行委員会にもイービス先輩の手の人間はいるだろうし、これで証明にもなるだろう。ナイス、イリア。


 「あんがと!これであんたの面もう見なくて済むわ」

 「俺もだよ!」

 荒っぽい言い方をして、俺は執務室の扉を乱暴に、それこそドアノブが壊れるギリギリまでの力で閉めた。



 そしてその足で俺は副会長であるイービス先輩の執務室に向かう。三階の中央付近にあるその部屋は、ひっそりとしてとても副会長の執務室とは思えなかった。


 ノックを数度すると、中から綺麗な声で、どうぞ、という声がした。イービス先輩のものではない。女性のものだった。


 ドアを開けると、まずリクライニングチェアに腰掛けたイービス先輩が視界に入った。随分と偉そうな座り方で、王様ですか、と突っ込みたくなった。


 次に、副会長の席と向かい合うようにソファーが一台置かれていた。その席に座るのは中国系の男。恐らくは王政杯だろう。顔立ちはイービス先輩に引けを取らないほどに整っているが、左目についた一文字の傷がそれを台無しにしている。少し赤みがかった髪などは、若干ヤンキーっぽかった。


 最後に、イービス先輩の隣にいたのは女子学生。リボンの色からして高等部だろう。さっきの声の人だ。これは昨日イリアからの情報にあった、イービス先輩の手駒として動いている最後の三人だろう。

 ミディアムカットされた栗色の髪、鼻が高く、耳は小さい。顔の線はとても細く、浮き出た箇所などがなかった。多くの人間にあるような凹凸のある顔作りではなく、まるで白い砂地のようだった。


 魔導師における美人という枠組みなら、これはその中でも上位に入る部類だろう。多分、エリスなんかより全然美人だ。

 とはいえ、これだけの美人を俺が知らない訳がない。誰?


 「やぁ、茨木君。ここに来てくれる、ということは私の軍門に降る、ということかな?」

 昨日と同じく、落ち着いた声。他者を見下すような声だ。多分そんなことは本人は全く考えていないだろけど。


 「そうですね。ただし、こちらも条件があります」

 「条件?」

 イービス先輩は怪訝そうに目を細めた。恐らくは値踏みでもしているのだろう。俺がどんな条件を出すのか、についての値踏みを。


 「貴方のクーデターみたいなものが成功したら、俺を執行委員長にして下さい」

 

 まずはこれが通るかを確かめよう。だめならそれでもいい。それならイービス先輩が最初に持ちかけた席にでも就くとしよう。


 「執行委員長の席ね。それが君の望みかい?よくわからないな……」

 イービス先輩は大げさに頭を振った。本当に理解できないの?


 「確かにことが成せば現在の執行委員長を降ろすことは可能だ。しかし、それが君になんのメリットがあるんだい?」

 なるほどもっともな疑問だ。さぁて、事前に考えていた言い訳を言いますか。


 「理由は2つありますが、自分の将来的なものを考えると、副会長の席よりも執行委員長の席の方が評価されます。何よりも今の執行委員会はイリアの恐怖体制。ちょっと窮屈なんですよね」

 「なるほど、でもう一つは?」


 「決まっているじゃないですか……。さっきまで上司だった人間を地べたに落とすことほど悦に浸れるものはないじゃないですか?」

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