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双華のディヴィーナ  作者: 賀田 希道
九騎士決闘編――Nine round of Knights
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ア・ニュー・イントゥリギュエ

 遠海学園序列8位としての生活が始まって、早二週間が過ぎた。最初の二週間は、俺に対して決闘を申し込んでくる阿呆も多かったけど、挑戦者がことごとく返り討ちに合ってることがわかると、ちょっかいをかけてくる連中も随分と減った。


 それでも自分は強い、と勘違いしている阿呆は多くいるもので、数人単位で挑戦してくる連中はいる。そういった連中の相手をするというのはなかなかに骨が折れるものだった。


 昨日も、俺を指名して喧嘩を売ってきた馬鹿がいたっけなー……。



 「──このように、魔導師の祖であるダンテ・アリギエーリは魔法の行使権限を得て、地上に戻り、死の間際に当時彼に心酔していた現在の『リーグ・オブ・ファンタズム』の基礎を造った人物、アシュト・ヴィヒターに地獄への入獄権限を授けたのです……」


 黒板の前で行われているのは、魔導師が中1の頃に教わる、魔導史だ。それらに聞き入るように耳を傾けているのは、去年の九月に入学したばかりの、中1連中だ。

 

 遠海学園は、九月に始業式を行い、六月で夏休みに入り卒業式、進級式を行う。夏休みの期間はざっと二ヶ月半。そして今は五月の初め頃だから、あと一ヶ月と少しで夏休みという計算だ。


 俺、茨木千乱が何故中1の授業を行っている教室にいるのか、それは一重に俺の上司の気まぐれである。俺の上司、イリア・ルージュは学園の秩序を守る執行委員会の委員長だ。

 権力だって半端ないし、その気になれば生徒一人を退学させることだって可能だ。


 そのイリアが今日の朝、食堂でメシを食っていた俺に、中1の授業の監督を言いつけてきた。とっさになんで、と聞いたが、はぐらかすばかりで答えようとはしなかった。

 無視しても良かったが、あとで怒られるのも面倒なので、一応監督、というか監視を行っている。


 最初、俺が入ってきたことで中1連中はおろか、教師までも驚いていたが、俺が襟元に付けている徽章を見るなり納得したように授業を再開した。

 この学園において、学園序列十三位以上に与えられている権利が幾つかある。そのうちの一つが、必要出席日数が、他の学生の二分の一、というものだ。


 つまり、別に他のクラスに出向していても黙認される。それは学園からの信頼の証であり、序列が下がればそれなりの罰が用意されている。

 

 「──ここまでで、わからないところは?」

 魔導史の授業を受け持っている老教師が、一旦言葉を切った。現在まで老教師がこの中1連中に教えたのは、ダンテ・アリギエーリの出現による魔導師の復活と、それ以後の『リーグ・オブ・ファンタズム』の成り立ちなどだ。


 簡略化して説明してしまえば、ダンテ・アリギエーリの死後、地獄においての試練で第八層魔導師の階位を得たアシュト・ヴィヒターはその方法を色々な人間に広めた。

 結果としてそれより二十年後、アシュト・ヴィヒターを中心とした魔導師の集団が魔導師用の互助組織を作り出した。無論これは、自然発生した魔導師を助けるための組織だ。


 それが発達、拡大したものが後の『リーグ・オブ・ファンタズム』だ。今では全世界のあちこちに組織の支部を置き、ほぼすべての魔導師を育成、管理している。

 無論、その管理から外れているフリーの魔導師も何人かいる。その中には、あの委信民も存在している。まぁ、あいつはフリーっていうか、ある種テロリストみたいな節があるけどね。


 つか、イリアはなんで俺にこの授業の監視を命令したんだよ。見ている限りは普通の授業だ。老教師や、中1連中の周囲の瘴素にはなんの揺らぎもないし、勝手に使ってる『心写し』にも何ら変化はない。

 みんな穏やかなものだ。


 そして、何ら変化も置きないまま、その授業は終了した。



 「なんのための無断欠席だったのさ?」

 放課後、イリアの執務室で率直な不満をぶつけた。

 

 しかし、イリアは何の反応も示さず、黙って紅茶を口に運んでいた。態度も態度だが、意味不な命令をされて、それに従った部下の気持ちにもなって欲しい。


 「あのさ、あんたが知らなくてもいい事態が動いてんの。そいつがあの教室とカンケーあるから、あんたに居てもらったの!」

 「俺が知らなくてもいい事態、ね」


 俺を遠ざける目的で放ったであろう言葉は、逆に俺の興味を引く結果になった。いや、そうなるように誘導したわけか。

 多分、イリアが抱えている事態というのは、イリアより上。つまりは泉さんの管轄だ。


 ここから導き出せるなんでイリアが俺に秘め事を暴露するようなことを言った理由は、二つ。

 一つは後で泉さんに責められても、つい口が滑ったとか言えばいいい、と考えているからだ。もう一つは、俺が事態とやらに関与したほうが、絶対に面白くなるから、というイリアの好奇心故だろう。


 「その事態とやらについて聞いても?」

 「ごめんねー。それを知りたかったら泉にでも聞いてー」

 真剣な調子の俺に、軽い調子で断るイリアはいい神経してるなー。


 そもそも泉さんに聞いたところで、俺に応えてくれるわけがない。あのブラック学園統括者さんはその辺の防御が固い。

 あの人って、結婚とかできるのかなー。


 「ま、概要くらいは教えてやってもいいかな?」

 「マジ?」

 「マジマジ」

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