葛藤の平原
こんばんは、遊月です!
とても久しぶりの更新となりましたが、何事もなかったかのように続きからスタートですよっ!
しずくとパトの旅にも、とうとう新しい局面が……!?
本編スタートですっ♪
「しずく、おれの後ろ、下がる!」
「わ、わかったっ!」
パトの緊張した声に釣られて、わたしは反射的に彼の後ろに隠れる。そのときに見た、少し逆立ったように浮かび上がる髪の毛の様子から、パトが【災厄】に対してどういう気持ちでいるのか、はっきりわかる。
彼にとっては自分の知っている仲間を次々に襲って、そのまま病にしたり命を奪ったりしている相手なんだ。彼の背中には、怒りと恐怖が入り交じっている。
そして、そういう因縁があったわけではないわたしにも、ひとつ感じることがある。
すごく、気持ちが悪い……。
病を振り撒いてしまうこの【災厄】は、まるでそれ自体が生き物になった病気みたいなもの。わたしも風邪とかだけで大きな病気にはなったことがないけど、子どもの頃に彩が気管支炎になったときにすごく苦しそうにしていたのを、どうしてか【災厄】を見ていると思い出す。
表面が蠢くように動いているのは、もしかしたらその苦しみを表現したような感じなのかも知れない。そおのグロテスクさに、深い事情とかを持っていないわたしでも、なんだか見ているだけで苦しくなってくるような気がした。
「しずく、【災厄】、どこ赤い?」
「え、えっと……ぁ、」
「しずく?」
思わず声が漏れてしまう。
視えた【災厄】の赤い点――その命の源とも言える核のような場所――は、【災厄】の胸元に小さく、ひとつだけあった。身体の内側――それこそ、触れて壊すためにはそこ以外の場所にも当たる覚悟をしなくてはいけないというくらい。
「駄目だよ、パト。なんとかして逃げなきゃ」
「え、なんで、逃げる?」
パトには見えていない。だから、なんとかなるのではないかと思っているみたいだ。でも、実際はそういうわけにはいかない。
「あの【災厄】の石はお腹の辺りについてるの、だから、それを壊すにはもしかしたらあの身体に触らなくちゃいけなくなるかも……」
「う、」
パトも、さすがに躊躇したみたいだった。だって、【災厄】には触った時点で手遅れ、少し触っただけで重い病気にかかってしまう。そうやって動けなくなったところを、そのまま命を吸いとられてしまう――それが、【災厄】の被害。
黒い霧をまとわりつかせながら、唸り声をあげる【災厄】を前に、どうすればいいかと迷っているわたしたち。下手に近付いてももちろん危ないけど、それでも、とうとう転んでしまった人のことも無視できない。
きっと、パトが無視をしない。
彼は、助けられないことに対する恐怖が強いのだと思う。それは、たぶんわたしがブリュッケブルクで倒れたときに見せた姿からも窺えた。幼い頃に受けた、本人すら気付けない“傷”が原因なのだと思うと、胸が痛む。
わたしは、パトに危険なことはしてほしくない。
『パト、行こう! ここでパトがいなくなったら、わたしは旅を続けられなくなるから!』
たとえば、そんな横暴じみた言葉だったとしても、パトはわたしの言葉には従ってくれる。【災厄】の命の源を視ることができる【天使】というのは、それくらいしてまでも――目の前で助けを求めている人を見捨ててでも――守らなくてはならないものだということは、なんとなく今までの旅でわかってきている。
だから、きっとパトも自分を曲げてくれる。自分を曲げて、出会ったときの誓い通りにわたしを守るために明らかに無謀な行為はしないでいてくれる。
でも、それでいいの?
たぶん、助けを求める声を振り払ったことは、パトの中で大きな痛みになって残ってしまう。きっと、この先何があっても拭えないほどに。そんな姿を見てしまうことも、絶対に嫌だった。
わたしは、どうしたらいい……!?
迷っているときに、ふと遠く――といってもせいぜい数十メートルくらいの距離――から声が聞こえることに気付いた。
近付いてくる馬の嘶きは、何頭分も続いていて。
そのうちに、空気を壊すのではないというほど大きな掛け声がする。
「総員、構えよ! ……てぇーっ!」
ひゅっ!
一斉に、火のついた矢が馬上から放たれる。狙いは正確に【災厄】の方に向かっていって、その全部がその猪みたいな身体に当たった!
“核”の部分には当たらなかったけど、それでも何本もの矢が自分に向かってきたことに驚いたような様子で、【災厄】は逃げていった。そ、そっか……、戦わなくても追い払えたら、それでいいんだ……。
そんな風に思えたのも、安心したから。
一気に力が抜けて、膝からその場に崩れ落ちてしまう。
「し、しずく!? 怪我、したかっ!?」
「ううん、違うよパト……。なんだか、気が抜けちゃって……」
慌ててわたしの背中とか腕とかを触って傷を確かめてくるパトに返事をしていると、目の前に馬に乗った人たちのひとりが走ってきた。たぶん馬の負担を軽減するのを目的にしているのだろう軽そうな鎧をまとった彼は、わたしたちを見て言った。
「ようやくお目通りが叶いました、天使様。我々でお連れするので、お付きの方共々王城へとお越しくださいませ」
前書きに引き続き、遊月ですだよ!
更新しようと書き始めてみると、なんだかんだで色々と設定やら何やらがすんなり頭に甦ってくるのは、ほんとになんというか……「待たせてごめんよ!」と物語自体にも言いたくなる気分ですね。
読者の皆様も、お待たせしております!
ということで、また次回!
ではではっ!!




