表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゴッドレス・ワールズ・ファンタジア  作者: 眞三
第5章 バルバロンの闇と英雄の卵たち
629/630

119.弟子VSダンナ

いらっしゃいませ!


では、ごゆっくりどうぞ

「で、カエデ……積もり積もった話がありそうだが?」茶を一啜りした後、ロザリアは微笑を浮かべながら彼女の顔を覗き込む。カエデは冷静さを維持しようと我慢したが、表情を震わせ、ついに柔らかな笑顔を見せた。


「はい! 是非……あ、ケンジさん達はちょっと……」カエデはやり辛そうにケンジ達に離席する様に頭を下げる。2人は小さく頷きながら席を立ち、店を出ようとする。が、そのまま居座ろうとするビリーの襟首を掴み、引き摺っていく。


「え? なんで? 俺はいいだろ?!」ビリーは今の話を聞いていたのか、いなかったのか、意外そうな表情で己の顔を指さす。ケンジは耳を貸さずに店の外まで連れ出し、彼に向き直る。



「で、お前は何者だ? アスカをどうやって誑かして弟子になった?」



 ケンジは目を潜ませ、彼の目の奥を覗き込む。


「誑かしたって人聞きの悪い! 俺は向こうから話しかけられて……で……成り行きで」


「成り行きぃ? ……そうか、あいつらしいと言えば……」ケンジが考え込む様に唸るが、ヨーコが彼を引っ叩く。


「なに納得してんのよ。ま、あたしはどうでもいいけど……何を気に入って弟子入りを認めたのかしらね?」ヨーコが首を傾げると、ビリーがお返しと言わんばかりに2人を交互に睨む。


「ダンナは風を帯びた大剣使いだな? で、あんたは仕込みロッド振り回すってトコか?」と、彼は得意げに口にしながら地面に手を置く。すると彼の怪我がみるみる内に治っていく。


「いい目利きだ。それに、ただの喧嘩バカでもなさそうだな。残念だが今は風の魔剣を持っていないが……合たっているよ」


 ビリーは自分の怪我が完治すると、得意げにその場で跳ね、腰を落として構えて見せる。両腕をㇵの字に下げた独特な構えだった。


「食後の運動だ。2人揃ってかかって来な!」


「面白いな。付き合ってやるよ。俺もフミヅキ流免許皆伝だ、良い修行になるぞ」ケンジは指骨を鳴らす。


「あたしはパス」ヨーコは両手を振りながら店の壁にもたれ掛り、扉の隙間から会話する2人を見る。「あの子、あんな顔できるんだ……」


「じゃあ遠慮なくいくぜぇ!!」するとビリーは両手を地面に突き刺し、勢いよく引き抜く。すると彼の両手には土で作られた棍棒が握られていた。


「やっぱお前、大地使いか」ケンジはフッと笑う。同時に周囲に野次馬がわらわらと集まり始め、どちらが勝つか賭け事が始まる。この港で喧嘩は日常茶飯事であった。


「研がねぇから安心しな」


「遠慮するな。その方が振りやすいだろ」


「いいや、これも修行だ!」と、ビリーは土で錬成した棍棒を振り乱し、一気にケンジの間合いへ入る。ケンジはそれに合わせる様に一気にビリーの回転圏内に入り込み、肩で体当たりをして吹き飛ばす。ビリーは受け身を取って着地する。


「合わせ方が師匠と同じだな。流石はダンナ!」


「こいつ、生意気に試しやがって」ケンジは背の大剣に手を回し、いつでも振り下ろせる体勢になる。それを見てビリーはにっと笑い、両手の棍棒を握る手に力を込める。すると棍棒の土がパラパラと落ち、剣型に変わる。


「刃引きはしてある。遠慮なく来な!」


「生意気な」口では言いながらもケンジは一瞬で間合いに入り込み、大剣を振り下ろす。が、ビリーは土製の剣を十字に構えてそれを真正面から受け止める。


「な!! 良く錬成された土剣だな」感心する様に口笛を吹く。


「周りに人がいなければもっと面白く無茶できるんだがな……こいつは食後の運動で、挨拶みたいなもんだからな!」ビリーは距離を取る様に後方へ跳んだが、それを合図に彼は即座に間合いを詰めて剣の乱舞を見舞った。その動きは道場剣術ではなく明らかに実戦向きの獣的な勢いの攻撃であった。ケンジは大剣を盾にして全て防ぎ切りながらも前進し、威圧する。ビリーはその勢いに押されて再び後方へ飛び退いた。


「すっげ、そんな大きい剣でも脚運び次第で器用に防げるんだな!」ビリーは得意げに土剣の柄同士を付け、両刃剣の様に振り回し始める。


「土剣だが、そんなガムシャラに振って刃こぼれしないとは……どんな技術だ?」


「技術? そんなのは考えた事ないな。俺はただ純粋に戦いが好きなだけだ!!」ビリーは片手で両刃剣を高速回転させながら上空へ飛び上がり、ケンジへと襲い掛かる。対して彼は冷静に大剣を軽々と回転させ、相手の回転刃に対抗する様に激突させる。すると周囲には凄まじい風が巻き起こり、火花が散る。


「すげぇ!! そんな重そうな大剣を回転させて対抗すると驚いた!!」


「驚きついでにこんなのはどうだ?」ケンジが不敵に笑う回転の角度を変え、ビリーの体勢を崩す。怯み、両刃剣の回転が止まると彼は敢えて武器を狙うように大剣を振り下ろし、土剣を叩き折って見せる。


 するとその破片が野次馬目掛けて飛んで行く。すると目の色を変えたビリーが身体を張って止めた。破片は背中に深々と突き刺さり、血が滲む。


「おいお前ら!! 邪魔で集中できないだろうが!! 散れ!!」ビリーは膨れ面を作りながら背に刺さった土剣を元の土塊に戻し、地面に手を置く。すると背の傷が塞がり、あっという間に完治する。「お~し、続きするかぁ」彼は何事も無かったように再び土剣を作り出し、構えた。


 ケンジはため息を吐きながら大剣を背に戻し、掌を彼へ向ける。


「いや、もういいだろう」


「なんだよそれ! 俺はまだ満足していないんだよ!!」


「……お前は何故、身体を張ってまで野次馬を守りに行った? 刃を飛ばした俺が悪かったんだが……」と、ケンジはバツが悪そうな表情のまま問う。


「へ? 当然だろうが。あれでカンケ―ない奴らが怪我したら、例え俺が勝ってもなんか……負けた気分になるだろ?」ビリーは当然の様に口にし、構えを解かなかった。


「何故、お前を弟子に迎えたのかわかった様な気がする。怪我が治るのも大地魔法か? 送だったらお前、相当な使い手だな?」ケンジはこの戦いで彼の事を見定めていた。


「は? ただ出来るだけだが?」ビリーは首を傾げ、やる気を無くしたのか土剣を落として手を払った。


「……変な野郎だな、お前」


「腹減ったな、何か食うか」ビリーは当然の様に店へ戻ろうとしたが、ケンジが襟首を掴んで引き留めた。「なんでだよ!?」




 その後、話を終えたカエデとロザリアが店を出てくる。すっかりカエデの固かった表情は柔らかくなり、すっかり仕事を忘れていた。ヨーコが咳ばらいをすると彼女は表情を戻し、ロザリアへ向き直る。


「どうか海賊退治にお力添えを……この戦いは我々だけで片づけたいんです」この言葉を聞いた他の皆はビリー以外目を丸くさせた。


「我々って、5隻の艦隊をこの5人で相手にするのか? 無茶だろ? 地元の軍にも要請して船を出さなきゃだろ」ケンジが腕を組みながら当然の事を口にする。対してカエデは頷きながらも微笑を浮かべる。


「戦いは迅速に。旗艦へ乗り込み、一気に海賊船長を討ち取れば残りは烏合の衆。要請した軍にこの姿を見せれば、魔王の剣としての初陣に相応しいとは思いませんか?」



「甘く考えすぎだ」



 先ほどの優しい表情はどこへやらロザリアは釘を刺す様に厳しい表情を向ける。


「いえ、今の私の実力なら海賊如きに遅れを取る事は……」


「それが甘いというんだ。そもそもお前らはその海賊の情報をどれだけ掴んでいるんだ?」ロザリアが問うと、カエデはむすっとした表情を作る。


「大丈夫ですよ、情報は今夜、魔王の矢によって届けられます。そこから攻略を考えればいいです。それでも、船長は私が討ち取ります!」カエデは張り切り、ロザリアに向かって指を向ける。


 それを見てとりあえずは頷き、溜息を吐くロザリア達。ケンジは彼女の隣に近づき、横腹を小突く。


「なぁ、店の中でどんな会話をしたんだ?」


「ん? 私の討魔団にいた時のあれやこれや……カエデの魔王軍でのあれこれも。カエデも苦労しているんだな。焦る気持ちはわかるが、それが命取りになる」ロザリアは腕を組み、苦そうにため息を吐いた。

如何でしたか?


次回もお楽しみに

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ