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戦乱のブレイブレイド  作者: 白羽彼方
新クラス編 一章 二日目『外の世界』
20/22

追うものと追われるもの

こんな朝早くに慌ただしく動く音が聞こえる。まだ人混みがないので音もク

夜がふける前、前庭はあることに気がついていた。彼らとて人間外に秘密基地など作るはずがないのである。仮にそうだとしても今のままでは外では何も作れるはずがない。そのように考え生徒たちより先に現在の東京、別名東京アンダーグラウンドに入り込んでいた。前庭は何度もこの街に訪れたこともあり顔パス。面倒な審査など受けることはなかった。とはいえこの広さ。無闇矢鱈に探しても見つかりそうもない。

「とりあえず彼女の力を借りますか」

前庭 光、彼女が教師になる前良く利用していた人物の元に向かう。場所は現東京の端っこの方。人通りの少ない路地の方に店舗を構えている一言でいえば怪しいお店。しかしある筋では一級の情報屋として有名である。

「おー空いてる。トーリ元気にしてるかい」

「ふぁ、久しぶりに客かと思ったらあんたかい。俊足の戦鬼」

前庭が店に入ると出迎えたのは一人の子供のような姿をした少女だった。名前は千寿兎兎李。名前がややこしい感じなのでトーリと愛称で呼ばれている。身長136、ぶかぶかなオバンな子供には似合わない服装に加え唾の大きい魔女の使う帽子を被っている。それとこの少女、実は年齢が五十を超えているれっきとしたババアだ。

「その名はとっくに捨てたわよ。それでまだ情報屋は継続中?」

「継続中というかそっちが本業だろう。それで今はどんな情報をお探しで?」

前庭はこれまでの経緯を話すとふむふむとトーリは頷く。トーリは筆と紙を手に取りさらさらとなにか書いていく。

「私の知っているのはこんなところだねぇ。他は自力で当たりな」

前庭は紙の束を受け取り千円渡す。このお店は同じ情報なら情報量に関わらず一律千円と大変リーズナブルでかなりの情報が手に入る。紙に写してもくれるので言葉よりも伝わりやすいという点もある。

「毎度、今度はプライベートで来なさいな。歓迎するから」

「暇になったら考える。今はやることがありすぎて大変なんだ」

「……たまには力を抜いたらどうだい。いつでも全開じゃ早死にするよ」

「ご忠告痛みいるわ」

前庭は店から出る。時間は明朝。朝の五時を回っていた。この時間ではホテルは無理。泊まれる場所といったら漫画喫茶などだろう。前庭は最悪野宿でも構わないがガードや警察に見つかると厄介だと歩き回ることにした。泊まれる場所があるならよし。人通りのある場所ては開くことはまずいだろうとの判断だった。


「どうしようか……うん?」


リアだ。少し経つと前庭の前に白衣の男と薄着の少女が話しながら走っている姿が見えた。前庭は少しだけ耳を傾ける。

「おい、リィンもっと早く走れ。追いつかれるぞ」

「あなたに合わせてるのよ。自己加速くらいは私は出来るもの」

「ズルイな。とりあえず私の方がお荷物ということか」

この言葉を最後に二人の姿は消え代わりに前庭の教師になる以前に見慣れたコート制服を着ている複数人の男が通った。ジュネシオンの連中。まさしく前庭の探し物だった。

「……男の方は何処かで見たことある気がする。少女の方は完全に始めてだ。でもあいつらが追っているということは……まさに情報源か!!」

前庭はすぐさま異能を発動。瞬く間にジュネシオンの男たちの後ろをとる。その一瞬の出来事に男たちは足を止めてしまった。

「戦場で立ち止まるなんて余裕ね」

数にして男七人。同じ服装をしているので全員同じ組織に違いない。フードを被っているので顔を確認できない。

「いったいどこから現れた」

「遅い」

男たちは前庭を撃退しようとフォーメーションを取ろうとする。しかしそれを待つ前庭ではない。戦場などで本来待つことは死を意味する。ライダーシリーズもそうだが変身シーンしている間に攻撃されていたら最悪だ。よって先手必勝で潰すに限る。前庭は三秒で五人をグーで沈める。

「ちぃ、仕留め損なったか」

「化け物だな。だが見切れないスピードというわけではない」

「へぇー、目がいいんだね」

前庭の異魔装具の力。速度上昇の力は動く際一瞬動きを止める必要がある。止まる時も同様で一瞬だけ動きを止める必要がある。それを見抜かれたのだ。特に大柄の方は完全に見極められていた。

「鍛えているからな。それと不意打ちとはいえ名のある戦士殿と見受けする」

男の一人がコートを脱ぎ捨てる。どこに隠れていたのだろうかゴリラを彷彿とさせる筋肉。胸の辺りはもう石のように後期つかしていそうだった。服装はティシャツと迷彩柄のズボン。無骨な荒ぶり尖った髪。昔日本にいた自衛隊のような服装だとも思っておけばいい。

「一昔前は確かに有名だったかもね」

「やはりか! ならば名乗らなければなるまい。俺は権堂、権堂 大樹。戦場に生き戦場で死ぬことを夢見ている。元陸戦部隊の部隊長だ」

「律儀なやつ。ならこちらも答えさせてもらうわ。元ハンターの前庭 光。一応『俊足の戦鬼』、と呼ばれていたけど今はしがない教師」

「ほう、あの噂の俊足とやれるとは光栄の極み。お前は奴らを追え」

「言われずともそうするさ」

フードを被ったもう一人の男が二人を追う。前庭は後を追いたかったが目の前の権堂という人物があまりに隙がない。追えば背後から狙われる可能性もある。だがそれよりも律儀に自己紹介した相手に背を向けたくはないと前庭は考えた。

「戦士の心構え。感謝する」

「それはどうも。あんたの意思を汲んだだけだけれどもね」

「それでもありがたい。まぁお互い急いでいる身だ。さっさと始めよう」

「そうね、もうそろそろ人が来てしまう時間帯。本気だして相手してあげる」

二人は同時に構える。男の方は空手家なのか手を手刀の状態にして隙をつこうという構え。前庭の方は右ひじを曲げ右手を腰の位置。左手は全貌に軽く伸ばすと右手と左手はパーで構えた。

「合気道か? てっきりただの喧嘩殺法使いかと思っていたぞ」

「言っとくけど達人クラスに出し惜しみはしない方でね」

「結構、さすがだ。ではこちらも遠慮なくいこう」

いきなり男から闘気が溢れ出す。闘叫。ウォークライとも呼ばれる戦闘技術。猟兵がこのんで使うが一部の国家部隊でも採用されている。ただし才能がないと使えず諦めるものも多数存在していた。しかし前庭も同じように闘気を解放する。空間が揺れるかのように周りが振動。一般の人間なら気絶してもおかしくない空気が漂っていた。両者とも攻撃機会を伺っている。

「な、なんだぁ」

「「!」」

たまたま通りすがったお婆さんの驚きの声で沈黙が消え前庭と権堂は激突する。辺り一面に衝突の余波が起こる。お婆さんはそばにあった電柱にしがみつき場をしのいでいる。その間にも激突は続くがどちらもギリギリで躱し攻撃を行う。数分した後に前庭が後方に飛ぶ。追ってくる権堂。権堂は右手で前庭の頭を狙ってくる。前庭はその右手を受け流すようにして放り投げる。痺れる腕。力が大きすぎて負荷がかなりかかったのだ。力を受け流すとはいえ身体に影響を与えないわけがない。

「これでどう出る?」

「こう出る……のよ!!」

通常なら力そのまま壁にぶち当たるはずなのだが権堂は身体を捻り壁を背にして蹴り飛ばしスタッと着地。こきこき首を鳴らした。

「やるな、楽しめる相手で嬉しいぞ」

「くっ、馬鹿力相手はさすがにきつい」

戦闘にも相性というものがある。大まかに分けて三つ。力、技、速である。本来力にとって技は相性が悪いのはわかっているとは思う。しかしそれは圧倒的な筋力の、剛の力には無と化す場合があるのだ。

「速度は人並みだけどタフネスで技のキレがいい。私の苦手なタイプだわ」

「お前の方こそ力こそあまりないものの手数の多さは今までとの相手とは一線をかくす。これまでで最強と言っていい強さだ」

「お褒めいただきありがとう。まぁいいけど時間切れのようね」

今の一瞬で注目を集めてしまったらしく早朝だというのに人が集まってくる。なんだ、「朝っぱらから喧嘩か」とか「やっぱ東京の朝はは喧嘩が花形だよな」とか意味不明なことを呟いていた。

「せっかく興が乗ってきたっていうのにつまんねぇ結果だな。まぁいい、近いうちに戦場で会おうぜ。あばよ」

興が冷め切ったのかフードの付いたコートを拾い上げ軽快にビルを登って行く。まるで忍者のようだった。

「退散してくれてよかったわ……それにしても新世界委員会に似つかわしくない男ね」

権堂は調査するのが専門だった組織とは思えない武闘派だった。むしろ彼はハンターの方にいてもおかしくない人物である。それなのにどうして新世界委員会にいるのか。

「あの男は本気で何をするつもり」

前庭は一抹の不安を感じつつその場から離脱した。



これで一章は終わり。

第二章に移りますがまだまだ続きます。

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