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推しが引退して解散したサークルの元メンバーがダンジョンで憂さ晴らし配信する話  作者: 9bumi
4章 英雄の誕生

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第31話 共闘

 自分の手の甲に風穴を開けてのカウンター。全くの予想外だった。


「アイラ……っ!」


 紫冥将の斬撃によって起こった粉塵に向かって叫ぶ。

 答えは返ってこない。


「嘘だ……っ」


 その場に膝をつきそうになる。

 しかし、その前に紫冥将の様子がおかしいことに気づく。

 紫冥将は俺の方ではなく、アイラが元居た方角に向けて殺気を放っている。


 同じ方向へ視線を向け、粉塵が消えて視界が開ける。


「あれは、まさか……っ!?」


 開けた視界の先に、アイラをお姫様だっこした上さんが立っていた。

 アイラに主だった外傷はない、あの攻撃から上さんが守ってくれたのだ。


 俺は地面を蹴って瞬時に上さんの隣に並ぶ。


「上さん。来てくれてありがとうございます!」

「当然のことをしたまでだ。特に怪我はなさそうですが、大丈夫ですか?」

「は、はい。ありがとうございます!」


 アイラの無事を確認すると、上さんがそっとアイラを下ろす。

 助けてもらって何だが、お姫様だっことは……


「野田くん。どうかしたか?」

「い、いえ何でも」

「そうか。それで、これからどうする?」


 この状況で考えられる選択肢は二つ。

 一つは、このまま二人で戦うこと。

 もう一つは、一人が紫冥将と戦い残った一人がアイラを逃がすというもの。


「ちなみに君の仲間たちもここに向かっている」

「なるほど。なら共闘の一択ですね」


 仮に一人がアイラを逃がすために動いたとして、もう一人だけで紫冥将を抑えられるとは限らない。仮に抑えられなければ、状況は逆戻りだ。

 ALL元幹部の皆が来てくれるまで二人で粘ることができれば、抑える側に十分な人員を与えることができる。


 問題はどう粘るかだ。


「野田くん。何か作戦はあるかい?」

「いえ、特にはまだ」

「なら、一つ試したいことがある」

「試したいこと?」

「俺が紫冥将と打ち合っている隙に、関節部のうちどれか一つを切断して欲しい」


 上さんの言葉に、紫冥将の関節部を見る。

 関節部からは青白い微炎が噴き出ていて、実際にどうなっているか分からない。


「溶けたりしませんかね?」

「不安なら鎧の上から切断してもらって構わない。その剣ならできるだろ?」


 紫冥将の手の甲にできた風穴は聖剣(仮)の一撃によるものだ。

 やろうと思えばできるかもしれない。


「分かりました。ただ、やる以上は責任を持って抑えてくださいね?」

「善処するよ」


 はっきりいって、作戦の理由は分からない。

 ただ、上さんが言う以上は何かあるのだろう。

 

「それじゃ、行きましょうか」

「ああ」


 先陣を切る形で、俺は紫冥将に距離を詰めて攻撃を仕掛ける。

 まずは様子見。二対一の状況で、紫冥将がどのように立ち振る舞うのか確かめる。

 

 俺の攻撃を紫冥将が剣で受け止めると同時に、上さんが攻撃を仕掛ける。しかし――


「くそ……っ」

「そう簡単に行かせてくれないか……っ」


 俺の剣を無理やり紫冥将は押し返し、あっさりと上さんの一撃を受け止めてしまう。


「今のを普通にさばかれるなんて」

「全く困ったものだ」


 俺と同じように押し返された上さんと一緒に嘆息する。

 今のでダメなら、二人の攻撃間隔を短くするしかない。


 互いに一度頷き合ってから、すぐに攻撃を再開する。 

 そして、攻撃を繰り出し防がれるという形を何度も繰り返す。


「野田くん。分かるかい?」

「はい。はっきりと」


 二人の連携の練度が上がるにつれて、紫冥将の防御に余裕がなくなってきている。

 その証拠に、紫冥将の鎧にいくつかのかすり傷ができていた。


「このままなら」

「行ける……っ!」


 勢いづいた俺たちはさらに攻撃を加速させていき、ついに剣が紫冥将の鎧をはっきりと捉えた。

 紫冥将の左の二の腕あたりに刃が食い込み、そのまま凄まじい切れ味で切断した。

 切断された腕が宙を舞い、同時に紫冥将が大きく俺たちから距離を取る。


「上さん」

「切断した腕をよく見るんだ」

「腕を……っ!?」


 言われるがまま切り落とした腕を見ると、断面から青白い炎が噴き出し、その炎が本体の切断面へと延びていく。そして――


「嘘、だろ……っ」

 

 何事もなかったかのように、切断した腕がくっついた。

 鎧の傷はそのままだが、動き自体に問題はなさそうだ。

 この状況、どう考えても絶望でしかない。


「上さん。どうすれば……って、上さん?」


 絶望的な状況なのに、上さんは悲観的な顔をするどころか、小さく笑みを浮かべていた。


「野田くん。紫冥将の倒し方が分かったぞ」

「えっ……?」

「今の再生で確信した。紫冥将はゴーストだ」

「ゴースト……?」

「ゴーストは小規模ダンジョンで稀に出る魔物だ。野田くんが知らないのも無理はない。普通は人魂みたいな感じだがな」


 初めて聞く言葉に対して疑問符を浮かべる俺に、上さんは続ける。


「ゴーストだが、紫冥将と同じように攻撃しても傷が再生する」

「なら、どうやって」

「ゴーストは魔核と呼ばれる鉱石を持っている。それを破壊すれば倒せる」

「なるほど、なら紫冥将も同じように」

「そのはずだ。問題はその核がある場所だが」


 上さんの話が本当なら、魔核は恐らく鎧で隠されている部分にあると見て間違いない。


「中々、これは骨が折れそうですね」

「ああ。二人なら、だがな」


 そう言って上さんが後ろを振り向くと、そこには――


「よお、待たせたな雅人」

「無事で何よりね」

「雅人くん、ナイスファイト!」


 待ちわびた仲間たちがいた。


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