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推しが引退して解散したサークルの元メンバーがダンジョンで憂さ晴らし配信するようです  作者: 9bumi
4章 英雄の誕生

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第27話 ダンジョンデート

 昇格してから、半月が経った。


 想像以上にSランク探索者の仕事はキツい。


 早々に新宿ダンジョンで上さんに追いついたと思ったら、下位ランクの探索者の指導や、探索の手が回っていない中規模ダンジョンの調査など、最前線の探索以外にも仕事が山のようにあった。


 おかげで、まともに休めた日はない。


 しかし、今日。ようやく俺は休みを取れた。

 今日だけは、最上位探索者としての仕事はない!

 だというのに……


「何で俺、ダンジョンに向かってんの?」


 気づいたら、俺は協会が手配しれくれた高級セダンでダンジョンに向かっていた。それもつい最近、最前線まで到達した新宿ダンジョンにだ。


 いっておくが、俺はバーサーカーでもなければ、ワーカホリックでもない。

 こうなっているのには、ちゃんとした理由がある。


「やっぱり、嫌でしたか?」


 後部座席で俺の隣に座る里香が、不安そうに尋ねてくる。


 滅多にない休みということで、今日は里香と会う約束をしていた。

 色々あって距離を置く話になっていたが、このままだと次いつ会えるかも怪しいということで、里香に押し切られた形だ。


 しかし、せっかく会うなら美味しいランチでも一緒にと思ったのに、里香が指定したのはダンジョンだった。

 理由は分からないが、こうなった以上、せっかくのダンジョンデートを盛大に楽しもうと思う。そうでないとやっていられない。


 新宿ダンジョンにつくと、いつも通り茶髪ロングのウィックを被り、何食わぬ顔でダンジョンに入ろうとする。

 だが、その前にダンジョンの入り口から少し離れた場所に人だかりができていることに気づく。

 気になって見てみると、輪の中心にいたのはアイラと瀬ノ内アキラだった。


「何か、向こうの配信と被ったみたいだな」

「ですね。せっかく雅人さんとのデートなのに……」


 里香がボソッと漏らす。アイラに対してのコンプレックスは、どうやらまだ健在のようだ。


「別のダンジョンにするか?」

「いえ。ここがいいんです」

「そうか」


 どうやら、このダンジョンでなければいけない理由があるらしい。

 里香がそう言うなら問題ないと判断して、アイラたちを横目に二人でダンジョンへ入り90階層まで移動する。


 90階層は高階層ということで、ほんの一握りの探索者しか到達できていない。

 加えて、紫冥将の件があって以来、新宿ダンジョンは避けられる傾向にある。

 故に、階層内には俺たち以外、当然のごとく一人もいなかった。


 考えれてみれば、アイラたちはよくここで配信をしようと思ったものだ。

 恐らくだが、規模が大きくかつ攻略に挑む探索者の数も多いということで、攻略情報が豊富だからだろう。


「それで、今日は何をするんだ?」


 周りに誰もいないことを確認して、ウィックを外しながら里香に尋ねる。


「今日は、私の特訓の成果を見てもらおうと思います。それで、少しでも雅人さんたちに追いつければなと」

「つまり、今日は少しでも上の階層を目指すって感じか?」

「はい。ただ、危険だと判断しない限り、雅人さんは手出し無用でお願いします」


 里香のやりたいことは分かった。

 ただ、一つ気になることがある。


「どうして、俺たちに追いつきたいんだ?」


 二人きりでいられる大切な時間を費やしてまですることだろうか。


「決まってるじゃないですか。その方が、雅人さんと二人でいられる時間が多いからです」

「そ、そうか……」

「はい。それに、私が昇格したら二人でバディを組んで、また一緒に探索したいですし」


 堂々とした態度の里香に対して、俺の方は顔がしっかり熱くなる。というか、だ。


「……なあ」

「どうしました?」

「里香って、そんなキャラだったっけ?」


 前に一夜を共にした時、似たような言動は確かにしていた。

 ただ、それはあくまで吊り橋効果的なものだと思っていたんだが。


「私、けっこう一途なんですよ?」

「――」


 これ、どう反応すればいいんだ?

 

 反応に困っていると、里香が笑顔で俺の手を取る。


「雅人さん、そろそろ行きましょう!」

「――っ、ああ、そうだな」


 里香に連れられるまま、俺たちは攻略を開始した。


         ※※※


 俺が昇格して仕事に追われている間、里香はかなりの努力をしていたようだ。


「どうですか、雅人さん!」

「素直に凄いな」


 攻略開始2時間にして、3階層を独力で踏破してしまった。


「雅人さん、もっと褒めてください」


 頭を撫でて欲しそうに上目遣いで俺の方を見る里香。

 とてもではないが、そんなことはできない。

 情けない話、恥じらいが勝ってしまう。

      

「調子に乗り過ぎだ」

「ええ~」


 恥ずかしいので断ると、可愛らしく頬を膨らませて拗ねてみせる。

 昔の話を聞く限り、アイラと仲が良かった頃は、こんな感じでやり取りをしていたのだろうか。

 うん。考えただけで、すごい尊いな。 


「どうしましたか?」

「いや、何でもない。昼まで進めるところまで進もうか」

「はい!」


 攻略を再開し、里香は着実に各階層を独力で攻略していく。

 正直、最初の方は不安があったが、今は安心して里香を見ていられる。

 

 少なくとも半月前までの里香では考えられない成長だ。

 どんな特訓をしたのか気になったので、暇な時間に里香の配信を確認してみる。


 な、何だこれは……?


 内容は池袋のような大規模ダンジョンの高階層を単独で攻略するという、かなり異常なものだ。

 だが、それ以上に気になるのは『野田さんに追いつくための修行』という名のタイトル。

 概要はさらに問題で、大好きな俺に追いつくために強くなることを目的とした配信とあった。


 最近忙しすぎて全くネットの世界とは無縁の生活を送っていたせいで気づけなかったが、どうやら里香は俺のことが好きだと宣言したらしい。

 対するファンはというと、当然離れた者もいるが、多くは俺を好きになるのも無理はない的な感じの反応だった。


「里香。少しいいか?」

「何ですか?」

「これ、どういうことだ?」

「ああそれですか。雅人さん知らなかったんですね。色々詮索されるのがウザいので、普通にオープンにしただけです。ファンは減っちゃいましたけど、変な疑いとかかけられなくなったので良かったです」

「……」


 それから何度か問答を続けたが、里香の言い分は終始変わらなかった。


 あと、思ったけどこれ、地味に外堀埋められてない?


 里香の強かさに、少しだけ恐怖を覚える俺だった。




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