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次の日__
カインと商業ギルド長に動くなと言われ、ふて寝したリナは……
「おっはよー!!」
とても元気になっていた。
「完全ふっかーつっ!」
やけにスッキリとした笑顔で言うリナに、護衛の騎士も孤児院のみんなも引き気味である。
「リナちゃんって、普段から寝不足なのね」
「そうなんですよ騎士様、みんなが寝た後にコッソリ起きたりしてるんですから」
「あら、確信犯じゃないの」
騎士たちにもリズベットにも色々言われているが、リナは聞こえないふりをした。
「それで、今日はどうするの?」
「今日は孤児院でのんびりしていようかな。さすがに、昨日の今日で何かわかったなんてことはないだろうし……」
などと言葉にしたのがまずかったのかもしれない。
「リナお姉ちゃん。カイン先生が来てるよ」
……のんびりする時間はないようだ。
**
「朝からごめんねリナ」
「いいよいいよ、どうせ暇してたんだし。何かわかったの?」
「うん。魔石とスライム、簡単に分けられるかもしれない」
それを聞き、リナの目が輝く。
「ほんと!?どうやって!?」
「茹でる」
「……へ?」
「茹でるんだよ、魔石を」
……ちょっと何言ってるかわからない。
「……カイン、ちょーっとしゃがんでくれる?」
「?」
よくわからずにしゃがんだカイン。その額にリナは自分の額を合わせた。
突然そんなことをされるものだから、カインはボンっと茹で上がる。
「うーん、熱があるね」
「違う!これは……あの、その……とにかく!熱はないからっ!!」
しどろもどろで信じてもらえるまで頑張るカインを、護衛たちはニマニマとしながら眺めていた。
リナの誤解が解けるまで、結構時間がかかった。
「なんだ、教授が教えてくれたことならそう言ってよー」
「俺の言葉だけだとそんなに信用ない……?」
ようやく理解をしてもらい、カインは疲れて項垂れる。
教授の名前を出した途端、リナは手のひらを返した。いくら専門家の方が信用できるとしても、もう少し友人の言葉も信じてほしいものである。
「いきなり石を茹でるって言われたら、リナちゃんも疑いますよ」
「そうですよ。ソーディス侯爵家の方と言えど、突拍子もなさすぎです」
「そう言うお2人はとても楽しそうでしたねっ!!」
リナの後ろからやんややんやと言う護衛騎士たちをカインはキッと睨む。2人はそろって目を逸らした。
「……まあいいや。それで、この方法で魔石とスライムを分けられるかを実験するから、リナにも来てほしいんだよ」
「いいけど、カイン今日学園はいいの?」
「他の先生に代わってもらってる」
「なら大丈夫だね」
「うちで1番厳しい先生に頼んでおいた」
「わぁひどい」
……その頃、学園では生徒の悲鳴が聞こえていたとかいなかったとか。
抜き打ちテストがあったそうです。
それはさておき、リナはカインと共に馬車に乗る。
行き先は水杖の工場。リナがカインたちと視察をした場所である。
工場長のジョッシュにはすでに話を通してあるそうで、「心ゆくまで実験してください」と快く迎え入れられた。件のマーシー商会から買い入れた魔石も全て提供してくれるそうだ。
工場側としても、偽物の魔石を炙り出してくれるなら万々歳だろう。
魔石の入ったコンテナを動かしてもらっていると、オルトリア男爵家の馬車もやってきた。
こうやって言うと随分と仰々しいが、なんてことはない、うさんくさ眼鏡……もといリナの友人、トーリの家の馬車である。
「すまんな。ちょいと遅れたわ」
「トーリ、君が時間通りに来ないのは珍しいね」
「ちょっとな……ま、約束通りの助っ人は連れてきたで」
そう言われて馬車から顔を出したのは、リナのよく知る人物だった。
「ショウ!アリア!」
2人の名前を呼び、リナは駆け寄る。
「よう、リナ。炎魔法なら俺がいないと始まらねぇよな」
「でも怪我したばっかりじゃ……」
「ですので治癒魔法使いの私も同伴しているのですよ」
「もう傷跡すらねぇぞ」
「だって!私だけお留守番は寂しいじゃないですかっ!」
カインは察した。
なるほど、アリアと揉めたから遅れたのか。
「別に連れて来てよかったんだよ。治癒魔法使いはいざという時役立つし」
「だとしても、馬車の半分くらいある救急箱はいらんやろ」
「……そうだね」
ショウの妻は、とても心配性だった。
「__よし。役者も揃ったことだし、そろそろ始めようか。“水生成”」
カインはコンテナに水を入れ始める。湧水のように静かにこんこんと溜まっていく水に、工場の職人たちから歓声が上がった。
……職人さん、思ったより楽しんでない?
「ふふ、なんだか学生の頃に戻ったみたいですね」
「あとリーレイアとクラウスが揃えば完璧だったね」
「王太子と婚約者がポンポンおるのも困るけどな」
「それを言ったらポンポン会えるほこの侯爵令息はどうするよ?」
「聞こえてるぞ……」
そう呑気に会話をしていると、あっという間にコンテナが水で満たされる。
「ピキ」という音も聞こえたので、この中にスライムが紛れていることも確認できた。
爆発しないのはおそらく水の中だからだろう。水中で炎魔法を使うにはより多くの魔力が必要なので、小さなスライムでは魔力不足なのだと思われる。
ここまではリナたちの想像通りである。
魔法の水に沈めることは魔石の保管方法として一般的なものだ。もしこの段階で爆発するようなら、すでにどの工場も火の中にないとおかしい。
……スライムの魔力が少なくてよかったと、心から思う。
「それじゃあ頼むよ、ショウ」
「まかしとけ。“盾炎”」
カインとバトンタッチしたショウが指をパチンと鳴らすと、布のように薄い炎が広がる。その炎がコンテナに被さると、くるくるとコンテナを風呂敷包みにした。
その繊細な魔力操作には工場の職人だけでなく、リナたちからも声が上がる。
「相変わらず器用だね」
「エンターテイメントってね。ほら、もうじき沸騰するぜ」
「あっという間にすぐに沸くんやな」
「どこかで聞いたことある言い方やめようね」
馬鹿なことを言っていたら、コンテナの底から泡が上がる。
ぐつぐつと煮えるコンテナの中を、リナたちはドキドキしながら覗き込む。
「「「__おおっ!?」」」
つづく!!




